034:掃（佐田やよい）

戸惑いも苛立ちもみな掃き捨てて私の中は空っぽになる

033:奇跡（佐田やよい）

祈っても昨日に戻ることはない辞書の奇跡の頁を破る

032:町（佐田やよい）

永遠にまわりつづけるこの町の回覧板に祈りをはさむ

031:電（佐田やよい）

伝えあう夢をなくした僕たちの送電線を引きちぎる風

030:遅（佐田やよい）

おわらない線路の上を走るのだ遅れることをゆるされながら

029:公式（佐田やよい）

公式にあてはめましょう三月の答をもたない私たちを

028:説（佐田やよい）

右耳は動物説明機から吹く二月の風を確かめている

027:水（佐田やよい）

水筒に氷ばかりが残されて夏の終わりをひとりで歩く

026:震（佐田やよい）

終電の無人車輌は震えつつ淡い光を運び続ける

025:ミステリー（佐田やよい）

ミステリートレイン揺らぎ告白は座席周りに散らばっている