ポケットの中で映画を温めて

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『恐怖と欲望』を観て

2017年02月03日 | 1950年代映画(外国)
レンタルビデオ店の棚を眺めていたら、珍しい作品があった。
それは『恐怖と欲望』(スタンリー・キューブリック監督、1953年)という題名。

どこかの国の戦争。
乗っていた飛行機が爆撃を受けて墜落し、そこは敵地の森の中だった。
4人の兵士は、上官のコービー中尉とマック軍曹、それに、若い新米のシドニーとフレッチャーの二等兵。
彼らは脱出するために筏を作って、森に沿う河を下ることを計画する。

筏作りをしていた時、偵察に出ていたマック軍曹が、敵軍のアジトを対岸に発見する。
双眼鏡で確認すると、そこには敵側の将校もいた。
飛来してきた敵の飛行機を避けて歩む先に、木造の小屋が現れる。
中を窺うと、敵の兵士2人がシチューを食べていて、壁には銃も立て掛けられていた・・・

翌日、河で魚捕りをしていた女に姿を見られた兵士たちは、彼女を捕えベルトで木に縛りつける。
見張りを命じられたシドニーは、彼女に気に入られたいため、何かとあの手この手で話しかける。
が、恐怖のためか、女は何の反応も示さない。

シドニーは、逃げ出す女を射殺し、意味不明なことを口走って駆け出し、行方がわからなくなる。
戦場で、気の触れてしまうシドニー。

マック軍曹は、筏で自分がオトリとなって、コービー中尉とフレッチャーが飛行機を奪う計画を提案する。
「死ぬまでに何かを成し遂げたい、そのためには死んでもいい」。
戦場で、どうにかして空虚感を充実させたいと願望するマック。

内容は、墜落させられた軍用機に乗っていた生き残り4人の、敵地からの脱出劇である。
至ってシンプルな筋であるが、人間性を失っていく兵士たちの姿を描く戦争ドラマとして、野心的な作品となっている。
そして、人々を狂気と恐怖に駆り立てる戦争の影響を、心理面の崩壊からえぐり出そうと、やや未熟ながらも、真剣に正面からとらえている。

一般的に、『2001年宇宙の旅』(1968年)などで有名なこのキューブリック監督のデビュー作、と言われるのは『非情の罠』(1955年)。
今回のこの作品は、キューブリックがその出来に満足できず、自らの手によって封印をした幻のデビュー作だったという。

ただ、この作品の残念なところは、ここが戦場だという緊迫感がどうも感じられず、成程、完璧主義者としてのキューブリックが、
これを封印したがった理由が納得できてしまうところである。

といいながら、やはりキューブリックらしさも垣間見えていたりする。
まず、シャープで洗練された白黒映像に目をみはる。
シビアでストイックな画像と、演出者のその視線。
心理描写を映像として畳み込もうとする演出は、未来の大監督を予測させる。

これで、キューブリックの劇場上映作品13本中、12本は観たことになる。
(後の1本『突撃』(1957年)は観ているのかどうか、あやふや)。
この作品の出来は、正直にいえば、まあ大したことはない、と言えるだろう。
だが、キューブリックのすべてを知りたい者からすれば、喉から手が出る作品だと言い切れる。

そして、ついでながら書いておきたいのは、シドニー兵士を演じていたのが、ポール・マザースキー。
この人が後に、『ハリーとトント』(1974年)や『結婚しない女』(1978年)を監督した人と想像すれば、興味が尽きない。
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