ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ジュリエッタ』を観て

2016年11月18日 | 2010年代映画(外国)
スペインの監督、ペドロ・アルモドバルの作品が上映中なので、久し振りに名駅へ行った。
観たのは『ジュリエッタ』(2016年)。

スペインのマドリード。
ひとりで暮らしているジュリエッタには、自分を心から愛してくれている恋人ロレンソにも打ち明けていない苦悩があった。
ある日、ジュリエッタは偶然再会した知人から「あなたの娘を見かけたわ」と告げられ、めまいを覚えるほどのショックを受ける。
ジュリエッタの一人娘アンティアは12年前、理由も言わず、突然姿を消してしまったのだ。
それ以来、一度も娘に会っていないジュリエッタは、忘れかけていた娘への想いをよみがえらせ、
心の奥底に封印していた過去と向き合い、今どこにいるのかもわからない娘に宛てた手紙を書き始める・・・
(Movie Walkerより)

このようなあらすじを読むと、今までにない、何か凄くドラマチックな内容かなと思ってしまう。
しかし、“心の奥底に封印していた過去”と言われても、まあ、よくある一般的な事情。
別に、娘に宛てた手紙なんて方法を取らなくってもいいんじゃないかと思ってしまう。

その手紙の内容は、亡くなった夫との出会いから始まって、当のアンティアが生まれたこと。
ジュリエッタが夫と知り合った時には、夫には元々病弱な妻がいて、それ以外にも陶芸家の女友達がいたりする。
となれば誰でもおおよそ、その関係図がわかってしまう。
だから、ジュリエッタが結婚したその後に、トラブルの元がない方がおかしい。

と、書き綴っても、登場人物のみんながどこかで信頼関係で成り立っている。
そこが、この映画の不思議な魅力にもなっている。

アルモドバルの過去の作品、例えば、有名どころの『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年)、『トーク・トゥ・ハー』(2002年)、
『ボルベール〈帰郷〉』(2006年)や、もっと古い『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1988年)などの作品から比べると、これは重さが足りないかもしれない。
でも、心理描写が少なくっても、さすがというか、語りのツボはしっかりと抑えられているから、十分に満足できる内容となっている。
特に、“ジュリエッタ”を演じている現在の人、過去の若い頃の人、が共にとっても魅力的で、そのこともプラスして作品自体を際立たせて見せる。
そんなことも加味して、これはやっぱりいいと感じるのは、やはり私が“アルモドバル”のファンだからだろうか。
コメント
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