やすらぎ通信

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「鶏・1万羽の断食」

1998年05月25日 | やすらぎ通信
「鶏・1万羽の断食」

 養鶏業者の間では有名な話ですが、鶏にも時々断食をさせる所があります。年をとり卵を産む率が少なくなり、廃鷄になる前の鶏を集めて5~7日くらい断食をさせるのだそうです。そうすると羽が生え変わり、肌の色が良くなり、卵を産む率がかなりアップするすると言います。おまけに飼料の節約にもなりいいことずくめということです。普通、年をとった鶏の卵は、表面にプツプツがあり、壊れやすいので卵価も安い。ところが断食後の卵は表面がつるつるで、しかも固く若鶏の卵と同じになります。

 たしかにたとえは悪いのですが、女性の方で断食中に急に生理が始まる方が結構います。普段よりも早まってくる方と、長い間生理がなくなっていた人が、何年がぶりできたという人も多くいます。また、断食すると妊娠しやすくなるようで、なかなか子供が出来なくて悩んでいた人が、子供が出来たといって喜んでいる方も何人かいます。

 断食させると弱っていた鶏などは死ぬのではと考える方も多いと思います。ところがある養鶏業者では、産卵率の下がった老鶏を一万羽、7日間断食させて死ぬのは200羽くらいだそうです。それも、弱ったものを見出して、ケージから出して歩かせれば元気になり、また、もとのケージにもどしてやれば死ぬ鶏はほとんどいないということです。ただ、それは手間がかかるからやらないだけで、そのために200羽ほど死ぬ鶏が出るということです。

 ただ養鶏業者にはいいことずくめですが、いつ餌にありつけるかわからない鶏にしてみれば災難のような気がします。しかし、養鶏業者の方が言うには、ほとんど動けないようなケージに入れて、栄養をたっぷりとり、肥るにつれてみんな元気がなくなる。目は潤んで、動作も鈍くなる。ところが、一日餌を与えないと、急に目の色が変わってきて、日がたつにつれて、生き生きと、きらきら光るようになる。動作もぴちぴち、身体も引き締まってくるのだそうです。そんな姿を見ているときっと鶏にもいい薬になっているのだと思うようになった、ということです。

 こんな話を聞いていると養鶏場で飼われている鶏と、都会に暮らす人間の姿がダブってしまうのは私だけでしょうか。マンションというケージから満員電車というケージに乗って、会社というケージの中で一日を過ごし、ほとんど自分の自由に動く時間を与えられず、机に向かっている。食事は高カロリーで運動量をはるかに上回り、余分な脂肪がどんどん蓄積される。身体の調子が悪いとすぐに薬を飲み、なぜそんな症状が出ているのか考えることなくすぐまた仕事や遊びを始め、脂肪だけではなく化学物質もため込んでいくのです。

 これは人間と鶏だけの話ではなく、現代文明というシステムの中で暮らす全ての生き物に共通した問題なのかもしれません。高度成長とともに色々なものを手に入れて、物質的には豊になり、先進国の仲間入りをしたものの、物を手に入れるために本当に大切な何かを失ってしまったような気がします。

 いま世の中では毎日毎日、景気が悪い、物が売れない、不況だと騒いでいますが、もうバブル経済の頃で物質的な豊かさを求める時代は終わったのではないでしょうか。これからは我々が生き生きと人間らしく活きていくために、本当に必要なものだけを所有し、大切に使っていくことが大切ではないでしょうか。

 ダイエットが必要なのはどうも身体だけではないようです。生活全体から余分なものをそぎ落として、余った時間やお金を自分を生き生きさせるものに投資していく必要があるのではないでしょうか。