濱本康敬の独り言

広島市に住むサラリーマンの独り言です。独り言は、あくまで独り言です。(コメントは事前承認制)

シューベルト こころの奥へ vol.7 アンドラーシュ・シフ へ行ってきました

2017年03月19日 | Weblog


シューベルト こころの奥へ vol.7 アンドラーシュ・シフ へ行ってきました。いや、素晴らしい。奇跡を目の当たりにした気分です。

シフのCDはよく聴いています。バッハのフランス組曲など、車の中でよく流しています。その、癖のない(?)、真面目で基本に忠実な丁寧な演奏に好感を持っていました。その彼が日本に来るというので、ちょっと奮発して妻と一緒に大阪まで聴きに行きました。チケット代はもちろん、交通費と宿泊費の出費はもちろん痛いのですが、このコンサートの内容からとても安い買い物?だっとと思います。私にとっては、人生でまた一つ、音楽の基準となるコンサートに出会った満足感でいっぱいです。

ともかく、うまいの一言です。通常のコンサートでは、「もっとここをこうしてほしい」「ここは作曲者としてこうした意図があったのではないか」とか、不満が残るのが常ですが、今回は一切ありません。というか、私が期待する以上の演奏を、どこのパートとっても彼が提供し続けてくれるのです。これでもか、これでもかと投げかけられる音楽性の情報量の多さに、聞いているほうの頭が、その整理に追い付かないほどです。彼の長い演奏家としての経験と、学習のたまものなのでしょう、テクニックの引き出しの多さ、音楽的思慮の深さが聴衆を圧倒していました。

ピアノソナタ18番は初めて聞いた曲です。シューベルトらしいロマンチックな抒情性に満ちた曲でした。ただ、それだけではなく、3楽章はオーケストレーションともいえるほど、ち密に計算されつくされたものでした。彼が弾くとまるでオーケストラの交響曲を聞いているかのような錯覚に陥ります。主題が、低音・中音・高音と弾かれるにつれ、まるでオーケストラのパートに主題が移っていくかのように聞こえ、その音楽的重層性が圧倒的な力で迫ってきます。色彩感もあり、広響レベルのオケを聴いているより、よほど音が厚いのです。驚きでした。

ベーゼンドルファーのピアノは、ヤマハの最新のコンサートピアノのように、高音のアタックの鋭さはありません。どちらかというのボヤッとしたフォルテピアノの香りのするやわらかい音です。表現力や音色の再現性には不利なはず。それでも、十二分なタッチの変化による音色の違い、色彩感の再現は見事というしかありません。36色や48色の絵の具で描いた水彩画のような(時には油絵のような)曲がつむぎだされます。彼が出したCDは事前に聴いていましたが、フォルテピアノで弾いていることもあり、ここまで表現力の多様性は感じられませんでした。CDとは全く違う別物の演奏のように思えました。

それにしても、彼の驚異的な記憶力はもう天才としか言いようがありません。チケットを買った時には。20番と21番だけでしたが、演奏当日18番も追加すると発表され、さらに、アンコールは4曲にもなりました。3時間近くにもなる大コンサートです。しかも、オールシューベルトです。さすがに、アンコール曲の一部は、完成度(あるいは緊張感)がちょっとと思うところがありましたが、それ以外はすべて緊張感みなぎる緻密で情報量の多い完璧な演奏でした。どうしてここまで暗譜し、多様な表現方法を一か所たりとも手を抜かず(あるいは忘れずに)本番で弾ききれるのでしょうか。もうこれは、人間技ではありません。

すばらしい演奏でした。今でも当日の演奏を頭で整理できていません。シューベルトがそこまで考えて抜いて曲を書いていたのか、演奏者の意図があまりにも高いのか。演奏会当日に人知を超える奇跡が起きて、だれもが意図していなかった素晴らしい天上の音楽が舞い降りてきたということにしておきたい気分です。


日時 2017年3月17日(金) 出演者サー・アンドラーシュ・シフ(ピアノ) 場所 大阪 いずみホール
演奏曲目シューベルト:ピアノ・ソナタ 第18番 ト長調 D894《幻想》 【※】演奏家の強い希望により、公演冒頭に曲目が追加となりました。
           ピアノ・ソナタ 第20番 イ長調 D959
        ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960

以下、いずみホールのホームページから
サー・アンドラーシュ・シフ
現代最高の鍵盤奏者のひとりで、1953年ブダペスト生。リスト音楽院でカドシャ、クルターク、ラードシュらに学び、さらにロンドンでG.マルコムに師事。活動の大半はJ.S.バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、バルトークらの鍵盤作品によるリサイタルや全曲演奏会である。ヨーロッパ室内管やフィルハーモニア管の弾き振りも多く、1999年には自身の室内楽オーケストラ、カペラ・アンドレア・バルカを創設。
ボンのベートーヴェン・ハウスやウィーン・コンツェルトハウスの名誉会員、ゴールデン・モーツァルト・メダル、ロイヤル・フィルハーモニック協会のゴールド・メダルや様々な勲章など受賞も多く、2014年にはナイト爵位を授与された。録音も膨大で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集に続くECMレーベルからの最新盤は、2015年にリリースされたシューベルトの後期ピアノ作品集。自身が所蔵する1820年ウィーン製のフランツ・ブロードマンのフォルテピアノで弾かれている。
ジャンル:
芸術
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