頻繁に山を歩くようになって三年になる。どこに何があるかもだいたい分かっていたつもりであった。ところがこの春、見知らぬモノを見た。ハウチワカエデの葉の下にある紅い実のようなものである。これは何だろうと、意味も分からず写真に撮った。帰宅して調べてみると、これがハウチワカエデの花であった。秋にすばらしい色に染まって鮮やかな紅葉を見せてくれるカエデが、春もまた赤い色を見せているとは、知らなかった。昨年も同じ時期にこの樹を見ていながら、気付かなかったのは、花が緑の葉の下にひっそりと隠れていたから。この樹の奥ゆかしさが、なにかうれしい。
資料によると、この花はなかなかに複雑怪奇である。なにしろ両性花であると同時に雄花を持っているという。一つの花におしべとめしべを備える雌雄同株、つまり両性花でありながら、雄花をもつというのだから、植物界の不思議さにはとてもついていけない。学術的なことは別に置いておいて、ただその花を観賞するだけにしたい。
ハウチワカエデの名前は、漢字で書くと「羽団扇楓」。天狗様が手にしている鳥の羽根を束ねた団扇によく似た形をしているところから、その名前がついた。この葉で煽ぐと野の匂いがするようで、良い名前の和名だと思う。別名もある。メイゲツカエデという。その名の通り、名月の時期に紅葉となって、風情をさらに高めるところからがついた。季節の変わり目を月や花を愛でて過ごした先人たちの優雅な生活ぶりがうかがえる。ただ金があるだけが豊かなのではなく、心の豊かさを謳歌した先人たちにあやかりたいものだ。
紅い花といえば、バラとかダリアとかの絢爛たる花々を思い浮かべる。だが、彼らの「赤」は目立ちすぎる。というより主張しすぎる。その点、ハウチワカエデの花はいかにもつつましやかで良い。深い情緒を感じる。この花を見ていると、ある歌を思い出した。「紅い花」という唄だ。歌手を引退したちあきなおみが最後にリリースした唄だと記憶している。(作詞松原史朗、作曲杉本真人)。杉本真人自身も唄っていると聞いた。たしか歌詞の最後が「今日も消える夢ひとつ」だった。何とも切なく哀しい唄である。そんな唄になにかぴったりはまるハウチワカエデの紅い花であった。
山で見かけた紅い花は、いろいろな思いを運んでくる。
本州では4月から5月にかけてがハウチワカエデの花の時期だが、道東では今が旬。緑の葉の中の木漏れ陽に揺れる、紅い色が印象的であった。
フクザツな生殖能を持ってることは、そういう目で見れば、ナントナク分かります。
ところで、山に入ってダニにやられません?当方、一昨年、昨年に続いて今年もやられました。風呂やシャワーはちゃんと浴びるのですが・・。ダニに好かれやすい体質のようです。
ダニは注意してます。何度か這い上られましたが、今のところ、なんとか被害から逃れています。一度、病院まで行きましたから、もうコリゴリです。