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【ダイヤモンドオンライン】地銀の女性行員相互受け入れ構想に思うこと

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 地銀の女性行員相互受け入れ構想に思うこと 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 今回は、「夫の勤務地に転職、女性行員に導入検討 全国64行」という朝日新聞(10月24日朝刊)のニュースについて書きました。
 具体的には、地銀に勤めていて夫がいる女性行員の夫が転勤した場合に、女性行員が転居する先にある地銀で継続的に働くことが出来る仕組みを、全国の地方銀行64行が検討するという内容です。

 ニュースによると、実現に際して課題は多く、人事評価の引き継ぎや行員の個人情報の管理、賃金などを銀行間でどう引き継ぐか、といった問題があるそうです。
 しかし、人事評価や賃金の引き継ぎが問題になるというのは、些か異様に感じられます。
 普通の採用であれば、採用したら、会社の必要性と本人の適性を考えて仕事を与え、その仕事に払える報酬を払えばよいのであり、賃金を引き継ぐ可能性まで検討するとは、サッカーのレンタル移籍のような仕組みでも考えているのでしょうか。

 銀行の場合、収益への貢献も含めた「評価」は人事の持ち点に積み立てられ、その後の出世・収入・出向先のグレードと条件・退職金・年金などに、「長期間」且つ「広範囲な」影響を与える仕組みになっています。
 こうした、「長期延べ払い」の人事・報酬システムは銀行員を組織に繋ぎ止め、服従させる上で強力に機能しています。いわば「社畜を繋ぐ鎖」です。また、この鎖は、転職を不利にすることで、有能な行員の報酬を低めに抑える点でも機能し、銀行にとっては、社員のメンバーシップの安定、組織への忠誠の強化、そして人件費の抑制に機能してきました。

 しかし、銀行にとって、この「社畜の鎖」(彼らの人事・報酬システム)は徐々に弊害の方が大きくなっているのではないでしょうか。
 経営の人的柔軟性を考えた場合、「その時の貢献には、その時に報いる」システムの方が、「長期に評価して、報酬は超長期の延べ払いにする」システムよりも、経営的な必要性に対応しやすいはずです。

 さらに言えば、「転籍」を後押しすべきは、女性行員もさることながら、その経営者も含めた銀行自身ではないでしょうか。
 全国地方銀行協会の加盟行数は現在64行もあります。その半分でも多すぎるでしょう。ビジネス基盤と経営体力を考えると、地銀の経営者は、現在よりも強烈な切迫感を持って、自行を含む経営統合の組み合わせを考え、実行に移すべきでしょう。

 そのためにも、地銀の頭取さんが考えるべき事は、現在の銀行の人事システムを温存したまま、地銀間で行員のやり取りが出来るようにすることではなく、まずは、人が出入りしてもフェアに個人を処遇することができ、適材を適時に登用出来る柔軟性を持ったシステムに自行の人事システムを作り変えることではないでしょうか。採用・解雇・給与・ボーナス・人事評価・出向・退職金・年金など全てにわたるシステムの作り替えが急務だと言えます。

 政府が長期見通しで想定するように今後長期金利が上がるなら、日本の地銀の財務・経営の状況はとても盤石とは言い難く、地銀経営者に残された時間は長くはありません。
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コメント
 
 
 
Unknown (AA)
2014-11-03 14:12:50
山崎元のマルチスコープ」の「 地銀の女性行員相互受け入れ構想に思うこと 」に関しては、まあ、7割方その通りかなという感じです。
ただし、多分、銀行が対象としている女性社員とは一般職のことなので、本質的に山崎さんの論点と噛み合っていないのではないのかという・・・。
一般職の女性は基本的に代替可能で、総合職として採用される女性とは別なのではないでしょうか?
総合職採用の女性は、結構、大事に育てられているのを見ますが・・・
 
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