多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

規制改革・民間開放推進3か年計画

2006年04月24日 | Weblog
規制改革・民間開放推進3か年計画(2004~2006年度)の再改定が、3月31日に閣議決定された。3つの横断的重点検討分野の1つに、「外国人移入・在留」(67~73頁)が挙げられ、以下の3テーマについて、2006年度中に結論を出すこととしている。

(1)在留外国人の入国後におけるチェック体制の強化
(2)外国人研修・技能実習制度に係る法令の整備
(3)永住許可及び在留特別許可に係る運用の明確化・透明化

これらは、2005年12月に発表された規制改革・民間開放推進会議の第二次答申に示された内容(「規制改革・民間開放推進会議」)とほぼ同様であるが、4月7日以来の経済財政諮問会議の動きといい、そしてまもなく公表予定の法務省プロジェクトチームの提言といい、いよいよ今年は戦後日本の外国人政策を抜本的に見直すプロセスが始まる年となるかもしれない。

グローバル戦略(3)

2006年04月17日 | Weblog
政府のグローバル戦略を策定する経済財政諮問会議が2月15日に開いた会議で、国際結婚の増大が語られていることを以前、紹介した(「グローバル戦略(2)」)。それから、2日後に滋賀県長浜市の幼児殺害事件が起きている。

長浜市の事件後、初めてグローバル戦略の審議を行った4月7日の経済財政諮問会議では、前回とは打って変わって、外国人の生活環境の整備がまったなしの状態にあることが議論されている(第8回会議議事要旨)。おそらく、日本政府の意思決定の中枢において、外国人の生活環境について議論されたのは、初めてのことであろう。

具体的には、竹中総務大臣が、総務省の「多文化共生の推進に関する研究会」報告書を紹介し、外国人への対応を自治体任せではなく、国としても検討する場が必要であると口火を切っている。安倍官房長官も、竹中発言を受けて、省庁横断的に外国人への就業支援、就学支援などに取り組む必要があることを強調している。小泉首相も、日本が望む、望まないにかかわらず、外国人の定住化が進んでいるいる以上、そうした人たちへの対応を考えるべきであると述べている。

4月7日のこの会議は、日本の外国人政策にとって、ターニングポイントとなるかもしれない。

いちょう団地

2006年04月16日 | Weblog
4月16日(日)にいちょう団地連合自治会の総会に参加した。いちょう団地連合自治会では、昨年度、防災訓練、子どもフェスティバル、敬老会、団地まつりなどの行事を行ったが、どれもいちょう小学校の協力を得ている。どの行事も外国につながる住民の存在抜きには考えられず、広報の多言語化などさまざまな工夫を行っている。しかも、それを学校、そして地域のボランティア団体と組んで、「地域づくりの三角形」を実践していることがユニークである。このトライアングルをバックアップしているのが、横浜市泉区役所である。昨年度始まった「泉区多文化共生まちづくり推進事業」の助成を受けている。その一番の成果が、2005年3月の「多文化共生まつり」と「いちょう多文化共生フォーラム」を経て、11月に行われた「多文化共生交流会」であった。

今年は、子どもフェスティバルが8月5日、団地まつりが10月7・8日、多文化共生交流会が11月19日に予定されている。

総会が終った後に、いちょう小学校へ行き、獅子舞の練習を見学した(写真)。『多文化共生の学校づくり―横浜市立いちょう小学校の挑戦』の表紙の写真に写っている中国獅子舞泉の会の練習である。誰もいない校舎の中で太鼓やドラの音が大きく鳴り響いていた。中華街から指導の先生を招いて、小中学生あわせて10人ほどが、4月下旬の団地の中のミニ商店街でのパフォーマンスの準備をしていた。この獅子舞の会は、学校と地域の連携の大きな成果である。詳しくは、会の代表の木村さん(台湾出身)が同書に書いた原稿を読んでほしい。

韓国:外国人の日

2006年04月10日 | Weblog
韓国の日刊紙「東亜日報」や英字日刊紙 "Korea Herald" のHPによれば、3月29日に韓国法務部(日本の法務省に相当)主催で、「多様性と調和―外国人の日の可能性」をテーマにした「移民政策フォーラム」が開かれた。法務部入国管理局長のほか、オーストラリアやバングラデシュの在韓大使が参加したという。

法務部では、「外国人の日(仮称)」を国家記念日に制定する作業に着手したところで、行政自治部など関係省庁との協議を経て、5、6月中にこれを制定して公表するようである。

在韓外国人は2005年末で約72万人で、ソウルのような大都市では、住民の5%が外国人だという。昨年結婚した農漁村の男性8027人のうち36%が外国人花嫁を迎えている。2010年頃には在韓外国人は100万人を突破することが見込まれ、記念日を制定して国内の外国人に対する関心を高めることが狙いだという。

法務部では、先例となる海外の事例に注目しているという。国連は、2003年から5月21日を「文化的多様性の日(World Day for Cultural Diversity for Dialogue and Development)」として制定している。カナダは「多文化主義の日(Canadian Multiculturalism Day、6月27日、2003年から)」、英国は「文化的多様性の日(Cultural Diversity Day、5月第4土曜日)」を、記念日に制定している。一方、オーストラリアは「調和の日(National Harmony Day、3月21日、1999年から)」を定めている。

韓国の外国人政策は、1990年代まで日本の外国人政策と非常に似ていたが、ここ2、3年の間に、外国人雇用許可制を始めたり、永住外国人に選挙権を認めたり、急速に変化している。日本の法務省が「外国人の日」を制定することなど、現時点ではとてもありえないことである。韓国の政策が必ずしも日本にとって望ましいとは限らないが、法務省ももう少し、日本の外国人政策の改革にイニシアティブをとってほしいものである。



磐田市多文化交流センター

2006年04月03日 | Weblog
静岡県磐田市で、3月27日(月)に磐田市多文化交流センター完成記念式典が開かれた。

磐田市の外国人登録者は約9000人(うち7000人がブラジル人)で、人口(17万5千人)の5%を超える。磐田市は、2004年4月に多文化交流子育て支援センターを、市内中心部と市内一の外国人集住地域である東新町県営住宅の集会所の2箇所に設置していたが、今回、東新町住宅のすぐ脇に、2階建てのセンターを新築し、拠点を一本化した。

新年度は、月曜から金曜までの午前に親子遊び、午後に小学生の学習サポート(水曜は中学生)を行い、日曜の午前にポルトガル語講座、午後に日本語講座を開設する。さらに相談・情報提供(日曜午後にポルトガル語通訳)も行う予定である。

印象的だったのは、記念式典に大勢の子どもたちが参加し、大変にぎやかだったことである。スタッフの話では、何よりも子どもたちが自分たちの居場所ができることを心待ちにしていたという。また、私は、昨年3月にもセンターのスタッフとお会いしているが、皆、大変な情熱の持ち主で、市民のソフトと行政のハードがうまくかみあって、今回のセンターが誕生したといえよう。

磐田市は、全国に先駆けて、2005年4月に共生社会推進課に「多文化共生係」を設置している。また、2005年8月には多文化共生社会推進協議会が発足し、自治会、国際交流協会、商工会議所、企業、教育機関、外国人住民がメンバーとなり、地域、労働、教育の3部会に分かれ、協議を行ってきた。センター完成記念式典が行われた日の午前には、「磐田市における多文化共生社会実現に向けての提言」を市長に提出している。また、新年度から、市内の無認可保育園に対し、健康診断費や耐震工事費などを補助する制度を始める予定で、対象にはブラジル人など外国人向けの保育園も含まれるという。

磐田市は、外国人集住都市会議の設立当初からのメンバーである。多文化共生の取り組みは2003年度に始まったばかりで、お隣の浜松市に隠れて目立たないが、今、大変勢いのある都市である(多文化共生の取り組みが始まった経緯は、『自治体国際化フォーラム』2005年6月号掲載の「多文化共生への第一歩」参照)。