多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

兵庫県教委:子ども多文化共生センター

2006年08月07日 | Weblog
子ども多文化共生センターは、兵庫県教育委員会が2003年10月に設置した、全国初の多文化共生教育の拠点である。筆者は以前から注目していたが、先月、ようやく訪問することができた。

兵庫県は、1994年に「地域国際化推進基本指針」を策定している。これは「外国籍県民との共生社会」をめざした指針で、「多文化共生」を謳ってはいないが、共生社会をめざしたものとしては最も初期のものといってよいだろう。1999年には、「地域国際化推進基本指針フォローアップ方策」を策定するとともに、外国人県民共生会議を設置している。

兵庫県教委は、1998年3月に「人権教育基本方針」、2000年8月には、「外国人児童生徒にかかわる教育指針」を策定した。「教育指針」の基本的な考え方として、外国人児童生徒が自己実現を図るための支援、差別や偏見をなくそうとする意欲や態度の形成、共生の心の育成、学校における研修体制の確立を掲げている。

外国人児童生徒にかかわる教育指針」を策定する過程で、日本語理解が不十分な外国人児童生徒に対する指導が喫緊の取り組むべき課題として明らかになった。そのため、1999年からは、外国人児童生徒や保護者と教員等のコミュニケーションの円滑化を図るために、「外国人児童生徒指導補助員派遣事業」を先行実施している。

国は、2000年12月に「人権教育及び啓発の推進に関する法律」を施行し、同法に基づき、2002年3月に「人権教育及び啓発に関する基本計画」を策定した。兵庫県も、2001年3月に「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」を策定している。

こうした動きを受けて、兵庫県教委では、2002年4月、「外国人児童生徒指導補助員派遣事業」を発展させて、子どもの心の安定やコミュニケーションの円滑化、学習の補助等を行う「子ども多文化共生サポーター派遣事業」が始まった。そして、2003年3月には「子ども多文化共生推進委員会」の提言「子ども多文化共生をめざして」が発表され、「子ども多文化共生センター」の設置が提案された。

センター設置以来、兵庫県教委では、外国人児童生徒の自己実現の支援を図るとともに、すべての児童生徒に「豊かに共生する心」をはぐくむ子ども多文化共生教育を行ってきている。外国人児童生徒の支援の取組としては、サポーター派遣(02年度~)、教育相談(03~)、ボランティア養成講座(04~)、日本語指導研究推進事業(04~)があり、「豊かに共生する心」をはぐくむ取組としては、子ども多文化交流フェスティバル(01~)、学校・地域・家庭が一体となった子ども多文化共生教育の在り方を研究する子ども多文化共生フロンティア事業(04~)がある。

さらに、今年度は、新たに県下全市町を対象に不就学外国人児童生徒調査・支援事業を行うという。2005年度から文部科学省が全国的な不就学の調査を行っているが、県内を対象とした調査は初の試みである。また、母語教育支援事業や子ども多文化共生連絡会議も新規に実施している。

なお、、2003年度には、具体的な施策を検討するために「子ども多文化共生推進協議会」が設置され、報告書「子ども多文化共生教育の充実をめざして」(2004年3月)が作成されている。

外国人児童生徒教育に関しては、まず首長部局が動き、遅れて教育委員会が動く自治体が圧倒的に多く、兵庫県のような例は珍しい。全国の教育委員会の中でも、兵庫県教委が最先端を行っていることは間違いないだろう。特に、外国人児童生徒への支援のみならず、すべての児童生徒を対象に多文化共生をめざした教育に力を入れていることは注目に価する。

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