多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

文科省:JSLカリキュラム

2006年07月21日 | Weblog
JSLとは、Japanese as a second language の略で、「第二言語としての日本語」と訳される。

文部科学省では、2001年度から、外国人児童生徒の日本語指導について、その初期指導から教科学習につながる段階を支援するため、学校教育におけるJSLカリキュラムの開発を始め、多文化共生関係者の間でこの言葉が一気に広がった。その趣旨は以下のとおりである。

「国際化の進展に伴い、日本語指導を必要とする外国人児童生徒を受け入れている公立学校が増加しており、このような外国人児童生徒が学校生活に速やかに適応するためには、学校における効果的かつ効率的な日本語指導が必要である。しかしながら、日本語の初期指導から教科指導へつながる段階の日本語カリキュラムが必ずしも十分に確立しておらず、各教員の努力に委ねられているのが現状である。このような現状を踏まえ、各学校での日本語指導に対する取組みを支援するため、学校での日本語教育における統一的なカリキュラムを開発し、外国人児童生徒の速やかな日本語習得と教科学習の深化に寄与する。」

JSLカリキュラムについては、小学校段階について、2001年4月に学識経験者、日本語指導担当教員、日本語指導協力者等で構成される「学校教育におけるJSLカリキュラム開発に係る協力者会議」を設置し、2002年8月に公表した活動をベースにした「トピック型」カリキュラムに加え、各教科の学習活動に参加するための力(学ぶ力)の育成などを目的とする「教科志向型」カリキュラムについて検討を行い、2003年7月に最終報告が提出されている。2003年度からは、中学校段階についても検討をおこなっているが、完成が大きく遅れているようだ。

このJSLカリキュラムを実際に利用している小学校は少ないようである。マニアルに従って教えていけば誰でも使えるカリキュラムというよりは、一人ひとりの子どものニーズに対応した教員の創意工夫が求められ、担当教員の力量が求められること、そして周囲のサポートシステムの構築も必要であることから、実際にはなかなか普及していかないのであろう。

筆者は日本語教育の専門家ではないが、まずJSLという英語名称を使っていることが気になる。英語名を使うことで、内容をよく理解していなくても、何となくわかったような気になっている場合もあるだろう。例えば、「教科学習に必要な日本語」など、日本語で表現したほうがよいのではないだろうか。また、「固定した順序性をもったカリキュラム」ではなく、「多様な子どもたちの実態に応じ、教師自らが創意工夫を生かしてカリキュラムを作成・実施することを支援するツール」であるならば、カリキュラムと呼ぶのではなく、むしろツールと呼んだほうがよいだろう。カリキュラムと呼ぶことで、関係者の間に誤解や混乱が生じているのではないだろうか。

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