多文化共生のすすめ

Toward a Multicultural Japan

外務省:オープンな日本

2006年09月07日 | Weblog
外務省が、国際社会での日本の存在感や発言力を高めるための課題について議論する「世界の中の日本・30人委員会」を設置していたが、同委員会が9月7日に報告書「政策提言 リーダーシップをもつオープンな日本へ」をまとめた。

オープンな社会を築く上で、多文化共生の課題は避けて通れないはずだが、提言の中には、「外国人も過ごしやすく暮らしやすい日本の実現」が掲げられている。だが、中身を読んでみると、観光客と定住者の問題を同列に扱っており、定住者にかかわる提言内容は、日本語教育や学校教育の問題に触れてはいるものの、かなり表面的で、まるで旧自治省が「地域の国際化」を推進した20年前の時の議論のようで残念である。

提言の該当部分は以下のとおりである。

【 問題意識 】(イ)Lost in Translation
外国から多くの良いヒトを惹きつけるためには、日本が過ごしやすく暮らしやすい国であることが重要である。しかし、現在の日本は、こうした外国人を受け入れる態勢ができているといえるだろうか。例えば日本を訪れる外国人観光客や、日本で就労する外国人の割合が、海外と比べて非常に少ないのは受け入れ態勢が十分に整っていないためではないだろうか。

かつて、日本の「linguistic isolation」が指摘されていたが、グローバル化の進展した現在では、日本を訪れる多くの外国人こそ、「linguistic isolation」におかれ、そして、「lost in translation」となっている。ビジット・ジャパン・キャンペーンは一定の成功をあげているが、受入側の宿泊施設などはそのキャンペーン開始当初にその存在を知らないなど、キャンペーンによって増加を期待した外国人の受け入れ態勢に改善がなされているとは言い難い。携行荷物の多い外国人旅行者は成田エクスプレスのような荷物置き場のないJR新幹線を快適に利用できるのか、駅などのエレベータは後付で動線からは離れた不便なところにある。また、確かに、日々の生活に目を向ければ、コンビニエンスストアの発達などにより、大変便利になっているが、外国人はホテルを一歩出れば、英語などによる表示も不十分で戸惑うしかない。このため、外国人にとってはいまだに日本は物価が高いとのイメージが残っている。さらに、日本の主要ホテルの客室においてCNNやBBC等の英語放送が見られず、外国人客にとって英語での報道情報の入手に大きな不便を感じることが指摘されている。

一方、外国人をより多く受け入れていくことは、ドイツやフランスの例に見られるとおり、決して容易なことではなく、摩擦も生じうる。しかし、その可能性を最小限に抑え、きちんとコントロールすることは、日本人のみならず、日本に滞在する外国人の暮らしやすさのためにも必要である。そのための社会のあり方を見つめ直す必要がある。

【 対応策 】(ロ)外国人の目から見た日本の暮らしやすさの視点を導入する
交通表示や街区表示などに英語表記やピクトグラム(絵文字)を加え分かりやすくすること、低価格のコンビニや全国の多種多様な食材が手に入るデパ地下の活用法など生活情報の提供を行うこと、ホテル等における英語での報道情報の入手環境を改善させること、本当の日本としての魅力がある地方へのアクセスの問題を解決するなど、受け入れ態勢の整備として努力するべきことは多い。また、子供や若者を含め誰でも親しめる緑、公園、スポーツ施設が十分に存在するとは言えず、居住スペースも狭すぎる。これらは、日本人にとって自国がより住みよい国となるためにも改善すべき点だろう。

さらに外国人の定住のしやすさとなると、より多くの問題が表面化する。ともに来日する家族の生活面あるいは教育の問題などである。英語での生活情報の提供や、外国人受入れのための住民組織の普及・支援が必要であろう。後者については、既にホームステイの受け入れなどで積極的に国際化に取り組む地方自治体の例もあり、そうした事例を参考に、外国人の暮らしやすい「ご近所つきあい」を広めていくことが肝要である。

また、就業査証や在留資格の申請ないし更新時の困難(取得基準や必要書類の不明確さなど)を軽減するとともに、日本で暮らす外国人とその家族に対して、在日外国人団体との協力なども利用して、国内における日本語教育体制を整備したり、子弟が通えるインターナショナルスクールを増設したりする必要もあるほか、ハウスキーパーなどの入国要件の緩和をはかることも生活面で必要である。

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