後藤和弘のブログ

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中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

人間が好きだから旅をする(4)中国の多民族性を知る

2008年10月28日 | 旅行記

◎中国の回族と食習慣

日本ではグルメブームで食物の話題がよく出るが、他民族の食習慣と比較するのも面白い。北京の大学へ行ったのは1981年から数年。観光客の行かない学生食堂で学生と一緒によく食事をした。中国の大学は原則として全員寮生活で、朝昼晩の三食は大きな学生食堂で摂る。料理の品数は少ないが、北京料理だ。食器は自分が寮から持ってくる琺瑯引きの鉄製のドンブリである。食べ終わったらまた寮へ持ち帰り自分で洗う。

よく見ると、隣にもう一つ学生食堂がある。回族学生専用の食堂である。回族は豚肉を一切食べない。ラードで炒めた料理もいけない。回教の定めに従った方法で殺した羊を食べる。一方、豚肉抜きの北京料理は考えられないから、異なるメニューの学生食堂が二つ必要になる。

北京の街には回族食堂という看板を掲げた店が多い。白い布で髪の毛を隠した女や丸い帽子をかぶった男の回教徒が大勢歩いている。あるとき、中心街に近い大通りを埋め尽くして羊の群れが悠々と流れていた。独特の帽子をかぶった回族の羊飼いを、だれも非難がましく見ない。ある季節になると羊の市が立つという。羊の群れは北京の風物詩でもある。高層ビルが林立する現在では見られない中国の風景であった。

こんな風景に刺激されて、街の回族食堂に入ってみた。串に刺して焼いた羊肉は香料が効き、肉は柔らかで美味である。肉質がよいのか、北海道の羊の焼肉より数段うまい。彼らの食習慣は回教の戒律に従っているから、豚肉を使う料理は一切食べない。

宗教的戒律のない漢民族は、北京料理に飽きると回族食堂にはいる。漢族は羊に違和感を持たない。北京料理にも羊肉のシャブシャブがある。真ん中に炎抜きの煙突がついた火鍋を用いた卓上鍋料理である。

共産党独裁の中国でも回族はその伝統的食習慣を守りながら悠々と生きている。 回族だけでない。朝鮮自治区では朝鮮料理を食べている。

他民族の混っている中国では食習慣が民族のアイデンティティーになっている。

@政権へ楯つかない限り宗教は自由な中国

北京の北に承徳という町がある。清朝時代に王が避暑山荘として使った町だ。丘の上に壮大な規模の廟が立っている。同じ大きさの4区画に分かれ、それぞれが全く異なる建築様式である。仏教と、ラマ教(チベット仏教)、道教、そして回教の4つの宗教を歴代の清朝が保護、支援して、政治的反乱を抑えたのだ。

1981年当時に、中国では天主教(カトリック)の教会へも行った。共産政権は、ローマ法王が台湾のカトリック教会と縁を切るなら、中国大陸の天主教がローマ法王の傘下になることを承認すると主張している。ローマ法王は、それば出来ないので未だに中国のカトリックは独立した存在だ。

チベットを占領している中国は間違っている。しかし、ダライ・ラマの指導通りガンジーのような非暴力主義を通している限り中国政府は武力を使わないだろう。一部の者でも宗教を利用して中央政権へ楯つこうとすると武力弾圧をするのが中国5000年の伝統的統治法なのだ。もちろん例外的な王朝や政権があったことも事実だが。例えば、1966年から1976年の間の文化大革命では全ての宗教施設を破壊した。(終わり)(この稿の一部は外国体験のいろいろ(23)で掲載済み、2007年12月13日掲載)