山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

自然保護委員会レインジャー活動および勉強会のため三ツ峠へ 勉強会その1  平成29年6月17日

2017年06月19日 | 番外編
 この季節の恒例となっている山梨県山岳連盟レインジャー活動の一環として三ツ峠の清掃登山、および勉強会が開催された。今回の勉強会では発表の機会が与えられ、約30分間話すことになった。パワーポイントで作成したスライドを準備してトレーニングと称して自分のパソコンを三ツ峠まで担ぎ上げたが、登りながらこの荷物を持って来たことにちょっと後悔した。いつものことではあるが、1時間半の行程で既にヘロヘロである。

 食事を終えて夕方6時45分から勉強会となった。山梨県山岳連盟の参加者は9名であったが、その他にこの日東京から来られた勤労者山岳会の方たちが20名ほど宿泊されていて、それらの方たちもお誘いしての勉強会となる。内容は以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 2つのテーマで質疑応答を交えつつ、約70枚のスライドを上映した。まずはテーマ1の「山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状」について発表した要旨を書きたいと思う。勉強会の際は山名も述べたがブログ上での記事では植物保護のため伏せさせていただく。

 ①ラン科ウチョウラン



    御坂山塊のウチョウラン


    人の近付けない急峻な岩場の草地の中に生育している。

 山梨県山岳連盟では自生地を把握し、山岳レインジャー活動の調査に毎年出かけている。御坂山塊の岩場のごく一部に生育しているが、周辺を探索してみたところ人が近付けない岩場の数ヶ所で存在が確認された。鹿の食害には縁の無い場所なので、盗掘や岩の崩落が無ければこのまま生き続けてくれると思われる。個体数はほぼ横ばいか、若干増えているようにも見える。


 ②ラン科ホテイラン


    南アルプス某山のホテイラン


    他の場所のものに比べて背が高くやや大型


    個体数がきわめて少なく、いつ絶滅してもおかしくない状況にある。

 八ヶ岳の長野県側で見ることが出来るが、山梨県側では出会ったことが無い。山梨県では南アルプスのごく限られた場所でひっそりと生育しており、山岳レインジャー活動で毎年調査されているが、年々個体数が減少している。今回提示した画像は調査区域外にある山に咲く個体であるが、花数はせいぜい10株くらい、葉の数をカウントしても30個体ほどしか見つからない。個体数を維持して行くには50株くらい必要と言われており、この場所は将来的には絶滅してしまうのではないかと危惧している。個体数が減少している原因は鹿の食害により下草が無くなり、山肌が乾燥してしまったことが最大の原因と考えている。保護柵で囲うこともひとつの策かも知れないが、急峻な斜面で囲うのは難しい場所である。


 ③ラン科トラキチラン


    富士山山麓に咲くトラキチラン


    葉緑素を持たない腐生植物

 富士山山麓の某山にはかつて大きな群落があったらしいが、私がこの花を見に出かけた3年前にはもはやそのような群落は見かけられなくなってしまっていた。山梨県ではこの場所を含めて4ヶ所の自生地の報告を受けているが、いずれの場所も個体数が少なく年々数を減らしている。直接の食害や盗掘では無く、山肌の乾燥化による環境の変化が大きく関与していると思われる。


 ④ラン科フガクスズムシソウ


    富士山山麓のフガクスズムシソウ


    高い木の上に生育する着生植物


    白花の個体

 富士山の山麓を走る林道をドライブしてみると、大部分がツガの樹林帯の中を走っているのに気付くだろう。その林を良く見てみると、木々が整然と列を成して立っているのに気付くかも知れない。1合目・2合目あたりのツガの樹林帯は、実は大部分が植林帯なのである。その植林帯の中に残された雑木林の中にこの着生植物は生育している。木の上で生活するため、水分の確保には空気湿度が重要で、霧が発生し易く湿度の高い森を好み、苔が多く着生している大きな木に生育している。高い木の上に居るので動物の食害とはほぼ無関係であるが、手が届くような低いところでは盗掘によるものなのか、ほとんど見かけることが無い。


 ⑤リンドウ科ホソバツルリンドウ


    甲州アルプスで遭遇したホソバツルリンドウ


    ススキの葉に巻き付いていた


    目立たない花なので、人に気付かれずひっそりと咲いている 

 細いツルで巻き付いた先に華奢な花を咲かせるリンドウだが、その花は見れば見るほど味わい深い。甲州アルプスの山系で数ヶ所自生地があり、山中湖界隈の山でも数株存在が確認されたが私が見たのはこの1ヶ所のみである。生育するにはラン科植物と同様に根正菌が関与しており、移植も種を採取して別の場所に播いて増やすのも難しい植物である。草むらの中に地味にひっそりと咲いているのであまり人目に触れないが、間違って草刈りが行われてしまうといつ無くなってもおかしくない環境にある。


 ⑥ユリ科カイコバイモ


    静岡県との県境に咲くカイコバイモ


    南部町の某山に咲くカイコバイモ


    写真の中に7個体写っている。おそらくはこの花の最大の自生地であろう。

 静岡県との県境の山に咲く個体は静岡県で天然記念物に指定されており、パトロールも頻回に行われていて手厚く保護されている。山梨県では無防備な状態であるが、自生地自体が山梨県には少ない。偶然山梨県の某山岳会が南部町にある山岳地帯のバリアンスルートを歩いている際にこの花を探してきた。調査に行ってみると、開花しているもので50個体以上、若葉も含めると300個体を越えるであろう大きな自生地が確認された。人の行かない山の奥なので、斜面の崩落さえ無ければこのまま咲き続けてくれると思われる。


 ⑦ユリ科スルガジョウロウホトトギス、別名カイジョウロウホトトギス


    山梨県県南部の谷の奥深くで生き残っていてくれた黄色いホトトギス


    本名はスルガジョウロウホトトギスであるが、山梨県に咲くということでカイジョウロウホトトギスの別名を持つ


    人の近付かない奥深い谷に咲く美しい花

 ジョウロウホトトギスは日本ではサガミ、キイ、トサ、スルガの4種類が知られており、スルガジョウロウホトトギスが最も個体数が少ないと言われている。いずれも天然記念物に指定されている貴重な花である。スルガジョウロウホトトギスは富士川から西の領域には生育していないと言われていたのだが、昭和50年代に山梨県の県南部の富士川より西の山域でこの花が発見され、神奈川県の新聞に掲載された。そのことがきっかけとなり、山梨県にあったこの花は徹底的に盗掘され、もはや絶滅したのではないかと思われていた。静岡県のスルガジョウロウホトトギスは天然記念物に指定されているので移動も売買も禁止されているが、山梨県では指定が無いためにカイジョウロウホトトギスと名前を変えて売買されているのが非常に腹立たしかった。そしてこの花の調査に乗り出したのが平成27年である。ヤマヒルが多く生育する山域の谷を何本も登り詰め、ようやくこの花に出会うことが出来た。まず人が入ることが無い奥深い谷の中で、しかも手の届かない高い場所に居るこの花、さらにその谷はヤマヒルに守られた要塞になっている。個体数も維持して行くには十分な数があり、このままそっとしておいてやれば咲き続けてくれるのではないかと考えている。


 ⑧スイカズラ科ホザキツキヌキソウ


    南アルプス某山で奇跡的に生き残ってくれたホザキツキヌキソウ


    5月に黄緑色の花を咲かせた


    8月、白い実が成った


    ホザキツキヌキソウの実


    9月、種が付いたが、その中身は・・・

 日本では南アルプスの某山にだけ生育する貴重な植物である。元々個体数が非常に少なかったうえに盗掘の被害が相次ぎ、さらに鹿の食害にも遭ってほとんど見かけることが無くなってしまった植物である。この大きな株は奇跡的に生き残ってくれた貴重なものである。昨年はこの植物を探すために4月から7月までの休日のほとんどを費やしたが、とうとう発見することは出来なかった。奇跡的に残ったこの株は根元がひとつになっているように見え、おそらくは株分けによって増えてきたものであろう。同じ遺伝子を持った株が受粉したとしても、自家受粉したことになるために種を実らせる確率はきわめて低く、たとえ実ったとしても発芽する可能性もきわめて低い。昨年必死に別株を探したのは、他家受粉させて種を採取して株数を増やしてやりたいという目論見があったのだが、失敗してしまった。9月に実った種を採取してみると、案の定異様に軽い。部分的に破損していた種を割ってみると、思った通り中身が入っていなかった。株分けで増えたこの花、いつしか遺伝子が劣化して絶えてしまうのではないかとたいへん危惧している。ちなみにこの株は山梨県山岳連盟からの強い働きかけもあって昨年の秋には保護柵で囲われ、人も動物も近付けないように手厚く保護されている。


    平成28年秋に保護柵で囲われて手厚く保護されているホザキツキヌキソウ


 その他にも数種類の花のスライドと現状をお話しさせていただいた。これが前半の発表だったのだが、熱心な討論があったりしてこれだけで持ち時間の30分となってしまった。もうひとつのテーマ「稀少植物保護への取り組み」のほうが私としては重要な話だったのだが・・・早口で発表することとなる。(その2に続く)
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