山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

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生死の決定権は、小泉首相でなくテロリストが握っている

2004年04月09日 | 日本の外交
イラクで邦人3人が拘束された事件で、小泉純一郎首相が自衛隊を撤退させない考えを表明した。拘束が報じられてから、政府の責任、首相の責任を問う声が出ている。武装グループは3日間を期限としているとのことで、民主党はじめ野党の対応も注目されるところだ。

★「人命」でつまずいた橋本政権

かねてから「テロには屈さない」と強調していることから、首相の判断は決まりきったものと思われがちだが、おそらく「撤退」の選択肢も真剣に考え、悩み抜いたのではないか。いや、今も悩み続けていることだろう。

かつて、早大生冒険部員がペルーで正規軍に拘束、殺害された事件があった。時の橋本龍太郎首相は、事件への冷たい対応を国民から批判され、この年の参院選で敗退。政権の座を失った。イラクでの事件は、橋本政権末期と同じく、小泉政権の命運を別ける分岐点となるだろう。

テロに対する毅然たる態度は、これまで小泉政権への国民の支持につながってきた。しかし、今回はどうだろうか。結果次第では、30代の女性や10代の少年の命を、首相が「見殺しにした」との批判は、どうにも止めようがないと思われる。「首相は息子が拘束されても同じ判断をしたのか」といった、感情的な暴論が一部から出ることも容易に想像が付く。

★テロリストとの交渉はあり得ない

今回、武装グループが「誘拐」という手段を取ったことは、実に卑劣なことだ。人命に過剰反応する日本人の特性に注目したものと思われるが、日本人外交官2人が殺害されても、自衛隊のイラク派遣を断念しなかったことから、すぐには殺さず、揺さぶりの手段にしたとも考えられる。

アルジャジーラに届いた声明は「撤退するか、3人を殺害するか」と二者択一を迫っている。注意しなくてはならないのは、これが一見、交渉のように見えることだ。中南米での日系企業幹部誘拐などと異なり、今回の身柄拘束は金銭や政治アピールが目的ではない。テロリストとの交渉はあり得ないことを覚悟すべきだ。

彼らはテロリストであり、拘束直後に問答無用で殺害することも厭わない連中だ。今回はすぐに殺すよりも、日本政府との「擬似交渉」で自衛隊撤退という二次的利益を引き出そうとしているだけなのだ。

★我々に「覚悟」はあるか

無論、日本政府として交渉に応じる姿勢を示して時間を稼ぎ、強行手段による人質救出を目指す手もあるだろう。しかし、既に外交官2人の無残な殉死で経験したように、テロリストは敵の人命など全く意に介せず、目的達成のためには無慈悲に人を殺すものだ。

一部マスコミで、人質の生死を決する最終責任が、あたかも日本政府や小泉首相にあるかのように報じているのは、「誘拐」を装ってたテロリストの策略におちたものとしか言えず、残念だ。テロリストは殺人集団であり、人間を拘束した時点で、その生死の決定権を握っているのは、彼ら自身なのである。

不幸にも最悪の結果になってしまった場合を考え、われわれ国民一人ひとりが覚悟を決める必要がある。安易に首相や政府を責め立てる感情論に流されるのか、卑劣なテロに対する怒りを共有し、政府を支えるか。日本国民の政治的習熟が問われるだろう。

テロリストの非情な犯行に揺さぶられ、居丈高に政府や首相の責任を追及する野党の姿だけは、見たくないものだ。(了)

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