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天然更新施業

2016年11月06日 | 森林・林業のお話

 天然更新は、伐採後、そのままにしておけば、自然に樹木などが生えて更新する・・・という都合の良いモノではありません。

 天然更新が成立する確率を上げるために必要な施業というものがあります。

 一般的な天然更新の施業について、順番に説明したいと思います。

 (注意!)ここで説明する施業は、基本的に天然林の伐採後に行う天然更新の施業となっています。スギやヒノキなどの人工林(一斉林、単一樹種で構成された森林)を伐採した後に行う天然更新の施業は、これらの応用がさらに必要になると思います。(注意!)

 

1.伐採箇所の調査

 伐採前(伐採3~4年間前)に、伐採箇所の全てまたは一部を調査します。

 伐採箇所の林分を構成している樹種やサイズ、前生稚樹(伐採前に生えている稚樹)の有無、サイズ、密度などを調べます。

 調査結果を基に、伐採後の天然更新でどのような山に仕立てるのか、その林分目標を設定します。

 また、伐採する立木や保残する立木を決める資料にもなります。

 同様に、人工林の場合も、伐採対象林分内やその周辺林分の母樹や前生稚樹の位置や樹種、サイズ、密度などを調べます。

 この林分が、「上方天然下種更新or側方天然下種更新」、「カンバ類型orブナ型orシラベ・コメツガ型」といったどの特徴に当てはまるのか、その組み合わせは?・・・という検討資料にもなります。

 

2.伐採木と保残木の選木

 確実な天然更新を行うため、必要でとても重要な作業です。

 基本的には、母樹や中小径木を保残木とし、それ以外は伐採木とします。

(←モミは用材。ヒメシャラは床柱に〈昔は・・・。〉)

 選木は熟練のいる重要な作業とされ、樹種/形質/成長具合/病害虫/位置関係などを判断材料に個々の立木ごとに判定していきます。

 伐採率も個々の林分状況におうじて決める必要があるので、何%と決めがたい部分があります。

 というのも、森林が再生できる伐採率にしないといけないので、低くければ前生稚樹が成長しなかったり、後生稚樹が発生しなかったりすることも考えられます。

 逆に、伐採率が高すぎると目的外の樹木や草本類が侵入してきます。

 どの程度、伐採するのかによって、「遷移をコントロールする」ことになるので、教科書やマニュアルのように伐採率を示すことができません。

 なので、調査結果をベースに現場に応じた伐採率をその都度決めることになります。

 人工林を皆伐する場合も、なるべく広葉樹は残した方がいいです。

 林縁部の広葉樹はもちろん、伐採地の所々に広葉樹を残すことで、それが母樹となり、鳥の止まり木にもなります。

 鳥が止まれば、種子を運んでくれるので、より稚樹が定着しやすくなります。

 特にヤマザクラなど果肉質の実ができる樹木を残すと、鳥が集まりやすくなります。

 ヤマザクラを材として搬出すべきか、天然更新のキーマンとして残すか、といった選択も考える必要があります。

 

3.伐採

 保残木を傷つけないよう伐採と搬出を行います。

 

4.残存木の確認

 保残木が当初の予定通り残っているか、伐採と搬出時の損傷の有無を調べます。

 

5.補助作業

 日本は四季があり、降雨量も安定しているので、植相・植生が豊富な国です。

 その反面、多種多様な植物が繁茂するため、天然更新の阻害要因にもなります。

 繁茂の状況次第で、下刈り、地掻きなどの地表処理を行い、稚樹の定着や成長を促進させる必要があります。

 この作業が何年続ける必要があるのかという点も、繁茂状況や稚樹の成長との関係を見ながらになります。

 あまり繁茂していないのに稚樹が少ない場合は、人工下種や植栽する必要があります。

 人工林の場合、枝葉を取り除いた木材を搬出する「全幹集材」と枝葉を付けたまま木材を搬出する「全木集材」という方法がありますが、全幹集材は枝葉を林地に残すため、更新阻害の要因となる可能性があります。

(←全幹集材)

 ちなみに林地保全の観点では、林地に枝葉が残らない全木集材よりも林地に枝葉が残る全幹集材の方が優れています。

 

6.成長と更新状況の調査

 稚樹が下層植生よりも高く成長し、稚樹の密度も高いと更新完了と言えます。

 更新不良の場合は下刈り、地掻きなどの地表処理、人工下種、植栽を行う必要があります。

 

7.林分改良

 伐採後に生えてきた樹木のうち、目的外の樹木の繁茂を抑制し、目的の樹木の成長促進を行います。

 この作業で目的樹種の多い森林に誘導していきます。

 ただし、木材生産や高蓄積林分を目的とした一斉林に近い林分を目指したい場合は、この作業は不要となります。

 

 以上、1~7が一般的とされる天然更新の作業です。

 とは言え、実際の現場では、ここまで丁寧に実践することはかなり難しいと思います。

 伐採者が森林を所有する林業会社なのか、森林組合なのか、素材生産業者なのか、によって、どこまで手をかけることができるのかという点で、金銭的なことも含め、これらの施業を実践するためにある程度の制限もかかってくると思います。

 施業のマニュアル化はとても重要ですが、それをそのまま現場で実践できるか否かという問題もあります。

 しかし、今後、人工林を伐採し、再造林のことを考えると、天然更新という選択肢も視野に入ってくると思います。

 その際には、伐採したまま放置することが天然更新ではないということ、天然更新を成立させるために必要な施業もあるということを知っておくことは大切だと思います。

 特に母樹や前生稚樹を残すことも重要です。

 また、将来的に天然更新を行いたい場合、少しでも天然更新の成功率を高めるため、埋土種子を確保することも重要です。

 埋土種子を確保するためには、鳥が集まる樹木を配置する必要があります。

 スギ・ヒノキ林は鳥が好む木の実を付けないので、採りを集めるためには、ヤマザクラのような果肉質の実を付ける樹木を配置することも、天然更新の成功率を上げる要因となります。

 天然更新は、遷移をコントロールする必要があります。

 そのためには、ある程度のコストが必要になります。

 天然更新は、コスト0とかローコストのように感じますが、確実に更新したい場合は、育林コストをかける必要があります。

 

 伐採後、そのまま自然に任せればいい・・・と言いきれるほど、天然更新は簡単ではないと思います。

 人工林皆伐後は、天然更新が成立することはとても難しいと思っています。

 正直なところ、天然更新ではなく、植栽すべきと思っています。

 まずは植栽を計画したうえで、天然更新が可能と思える部分を調査し、その可能性を見出したうえで、部分的に天然更新が可能なところは天然更新で、それ以外は植栽・・・という方法がいいのではないかと思っています。

 

※記事「天然更新に必要な施業」へ続きます。※

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