中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

福寿「超特撰大吟醸」

2018-01-04 22:58:55 | お酒の話(県外)
 新春1本目は、縁起をかついで「超特撰大吟醸」。今年こそはゴージャスな一年になりますように。

…というのは後付けで、去年のお歳暮に頂いたものです。


 珍しく、灘の酒…。灘はもちろん、日本の由緒正しき名醸地ではありますが、水が硬い。正直なところ、ちょっと苦手です。鬼平が広めの盃でキュッとあおるのに適したようなサムライ系の酒が多くて、私のような現代の軟弱者では、口の中で渋く感じてしまうものが多いのです。

 しかし、金賞受賞の超特撰!新年にふさわしいことこの上ない。ありがたく頂くとしましょう。


 ということで意を決し、街を探索する鬼平になった気分でキュッと。

 …美味い!何でしょうかこのスッキリ感は。…思わず動揺する鬼平。


 ここで、積年の謎が解けました。

 鑑評会に出品する気合の入った「大吟醸」は、どこの蔵も、なぜこんなにまで旨味の少ないぼんやりした酒が多いのか不思議に思っていたのです。純米で充分旨いのに、どうしてわざわざアルコールを添加して、変にフワッとさせるのかと。

 これは恐らく、伝統的な灘の酒造りに倣ったものなのではないでしょうか?(今日、私個人が思いついたことなので根拠はありませんので念のため)。

 しかし、このやり方は、灘の硬水には最高に合うのです。ツンとした味が、絶妙にまろやかになる。これを、東北の酒のような軟水でやってしまうと、柔らかいばかりの上品なだけで実体のない酒になってしまうのです。「普通にしてれば旨いのに、なぜシナをつくって賞を獲りにいくのか?」と残念な気持ちで「出品酒」を飲むこと多数でしたが、これは水の違いによるものでしょう。

 灘の酒でこれをやると、角がとれて味の透明度が増し、ゾッとするほど綺麗な姿が浮かび上がるということがわかりました。歌舞伎の「女形」を見るようです。素材の良さで勝負する東北などとは違い、計算された業によって自然の美を超えてゆくという、日本の伝統芸の粋を見たような気がします。


 新年らしい、「みやび」を堪能しました。
コメント
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