中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

つつしんで

2012-06-08 11:28:14 | 雑記
 塾講師をしていた頃の話です。その日の授業を終えて、教室の清掃などの後片づけをして、帰り支度をしていると、
「中島先生、送って行きますよ。」
と、契約社員の英語のI先生が声をかけてくれました。急げば終電に間に合う時間でしたが慌ただしいので、車で来ている先生にこう言ってもらえるのはありがたい。

 契約社員というのは我々のような社員講師とは違って、アルバイトのようなものです。「この人、昼間は何やってるんだろう?」と、しげしげ見てしまうような、素性のよくわからない人もいて、興味深い人種です。I先生は少しも「くずれた」ところが無く、知的で姿勢が良い。「何かの研究をしてる人なのかな」と思っていました。

 車に乗り込むと「エンジンが温まるまで、ちょっと待って下さい」と、まず一服。当時は教員室は禁煙ではありませんでしたが、やはり社員ではないので遠慮していたのでしょうか。リラックスした雰囲気で深々と味わいつつ、I先生は話し始めました。

「最近、世の中、なんだかおかしくなってきてると思いませんか?」
「そうですね。オウムの事件もありましたしね。」
「日本中が暗いですよ。どうしてだと思います?」
むむ・・・教育論でも始まるのか?と思いつつ、
「さあ・・・やっぱり世紀末だからですかね。」

「お世継ぎがお生まれにならないからですよ。」
「・・・オヨツギ?」
「皇太子殿下に元気なお子様がお生まれになれば、国民も元気になります。お世継ぎが日本を明るく照らして下さるはずです!」

 ・・・これには驚きました。私は別に、皇室の方々に特別な感情を持ったことがありませんが、その後は家まで、教室の近くの定食屋の話とか、無難な話題を選んで帰りました。


 これは極端な例だとは思いますが、やっぱり皇族は大変ですね。子供ができる時期とか、そういうプライベートなことまでが、社会不安の一因のように語られてしまうことすらあるんです。大変な重圧でしょう。


 寛仁親王がお亡くなりになりましたね。去年、東京でのチャリティーコンサートに山響を招いて下さって、ホテルオークラで懇親会まで催して頂きました。

 帰りに並んで一人ずつお辞儀をして退出しましたが、さすが常に人から恭しく頭を下げられる人生を送ってきただけあって、独特の鷹揚な威厳がありました。


 つつしんで御冥福をお祈りいたします。
コメント
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