カトリック山鹿教会

一緒に歩いてくださる方の出会い。
教会のTel.Fax 0968-44-7436;
0968-25-2381

いつも美しいふるさとを思い出して~!!

2011年06月15日 | Weblog
東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福を祈り、被災地の一日も早い復興を願って!!!


ふるさと               Il mio paese natale

うさぎ追いし かの山 Sogno sempre quando
こぶな釣りし かの川 sulla collina inseguivo le lepri
夢は いまも めぐりて e nel ruscello pescavo i pesciolini.
忘れがたき ふるさと Non posso scordare il mio paese natale.

いかにいます 父母 Come staranno i miei genitori?
つつがなきや 友垣 Staranno bene i miei amici?
雨に 風に つけても Sia che piova o tiri vento
思い出ずる ふるさと non posso scordare il mio paese natale.

志を 果たして Dopo che avrò realizzato i miei sogni,
いつの日にか 帰らん un giorno ritornerò
山は青き ふるさと alle colline verdi e all’acqua pura
水は清き ふるさと del mio paese natale.
(川本 清美 訳)


山鹿教会 - 心の物語

2010年07月26日 | Weblog
私のお父さん

明るいオレンジ色の一番上等な服を着て、赤と金色のリボンで髪を結わえると、少女の通学の準備はできた。その日は「父の日」で、子供たちは全員父親と一緒に学校へ行くことになっていた。母親が同行する子供は彼女だけかもしれなかった。同級生たちが変だと思うかもしれないから、行かないほうがよいのではないかと母親はほのめかしたが、少女は、自分のパパが他のお父さんたちのようではなくても、皆にパパのことを話したいと思っていた。
学校は、ちょっとどぎまぎしながら挨拶しあう父親たちと、パパに手をつながれてそわそわしている子供たちでいっぱいだった。先生が子供たちをひとりずつ呼ぶと、順番に自分のパパを皆に紹介した。最後に先生がオレンジ色の服を着た少女を呼んだ。皆は少女に注目し、一緒にいるはずの男の人を探した。
「あの子のパパはどこ?」少年が訊いた。
「一緒にいないみたいだな。」他の少年が大声で言った。
「あの子の父親も仕事が忙しくて来られなかったのだろう。」奥のほうで呟く声がした。
少女はほほえむと皆に挨拶した。先生が早く済ませるようにと指示する間、彼女は落着いた眼差しで人々を見ていた。そして、行儀よく手を揃え、しっかりした声で話し始めた。
「私のお父さんはここにはいません。ずっと遠くに住んでいるから。でも、私と一緒にここにいたいと強く願っていることを私は知っています。だから、私のお父さんのことを、そして、お父さんが私をとっても可愛がってくれたことを皆さんに知ってほしいのです。お父さんは私にお話をしてくれるのが好きでした。自転車の乗り方を教えてくれました。誕生日には赤いバラをプレゼントしてくれました。凧の揚げ方を教えてくれました。大盛りのアイスを一緒に食べました。いまお父さんと私は遠く離れて住んでいて、皆さんにはお父さんの姿が見えないかもしれないけど、私はひとりぼっちではありません。お父さんはいつも私と一緒にいるからです。それはお父さんが約束してくれたことです。いつも私の心の中にいるからねって。」
少女は話しながら片手を上げると胸に手を当てた。彼女の母親は大勢の父親たちに混じって、目に涙を浮かべながら誇らしげに少女を見ていた。少女は手を下ろすと優しさにあふれた言葉で話し終えた。
「私はお父さんが大好きです。私の一番大切な人だから、ここにいてくれたらどんなにいいかなあと思います。でも、天国は遠いから、、、だけど、ときどきこうやって目を閉じると、お父さんが遠くに行ってしまったのじゃなくて、ほんとにすぐ近くにいるような気がするのです。」
少女は目を閉じた。母親は、父親たちも子供たちも全員が目を閉じているのを見て驚いた。
皆は何を見ていたのだろうか? たぶん少女のすぐ近くにいる彼女のパパの姿を!
「パパ、パパが私と一緒にいるのがわかるよ。」
静けさを破って少女が言った。その後に起こったことは、その場にいた全員を興奮の渦に巻き込んだ。皆が目を閉じていたのだから、どうしてそうなったのか誰も説明することはできないのだが、少女のかたわらの机の上に、みごとなかぐわしい赤いバラが一輪置かれていたのだ。
少女は、父親の愛の祝福と、天国がそれほど遠いところではないと信じる恵みを受け取ったのだった。
川本 清美訳

山鹿教会のお勧め!!美味しいレシピー

2010年07月06日 | Weblog
Frittata al prosciutto crudo e rucola

DIFFICOLTÀ:minima  INGREDIENTI PER 4 PERSONE
PREPARAZIONE:15 minuti •  8 uova
COTTURA:15 minuti •  8 fette di prosciutto crudo
• 50 g di rucola
• 150 g di panna fresca
IL VINO GIUSTO • 60 g di grana
Servite un Valcalepio Bianco o un succo di agrumi. • 40 g di burro fuso
• sale
• pepe
    
PREPARAZIONE
Tagliate le fette di prosciutto a dadini. Mondate la rucola, eliminando eventuali foglie danneggiate, lavatela, asciugatela bene e spezzettatela.
Sbattete le uova insieme con la panna in una terrina, unite anche 50 g di grana grattugiato, incorporate il prosciutto e la rucola e mescolate bene il tutto; regolate di sale e pepe.
Ungete uniformemente una pirofila con il burro, versate il composto di uova e lasciate riposare per qualche minuto prima di passarlo in forno caldo a 180℃. Cuocete per 15-20 minuti o fino a quando, infilando uno stecchino nella preparazione, questo ne uscirà asciutto.
Togliete dal forno, lasciate raffreddare, quindi tagliate la frittata a pezzetti e servitela cospargendo con il restante grana in scaglie.


生ハムとルーコラのオムレツ
難易度:最低                       4人分材料
準備:15分                         卵 8個
焼き時間:15分                       生ハム 8切れ
                               ルーコラ 50g
この料理に合うワイン                     生クリーム 150g
白のヴァルカレピオか柑橘類果汁をお薦めします。        パルメザンチーズ 60g
                               溶かしバター 40g
                               塩 コショウ                        
作り方
生ハムを小さな賽の目に切る。ルーコラは、葉をはずして傷んだところは取り除き、洗って、水気をしっかり取り、細かく切る。
ボウルに卵と生クリームを入れ、泡立てるように混ぜる。すりおろしたパルメザンチーズ50gを加え、生ハムとルーコラも加えて、全部をよく混ぜる。塩とコショウで味を調える。
パイ皿にバターを均一に塗り、卵を混ぜ合わせたものを注ぎ入れてから数分休ませる。180度に温めておいたオーブンで、15~20分、竹串を刺しても付いてこなくなるまで焼く。
オーブンから出して、冷えてから小片に切り分ける。残りのパルメザンチースをふりかけて召し上がれ。
川本の翻訳

山鹿教会 ー 心の物語

2010年04月06日 | Weblog
地下鉄のヴァイオリニスト

ひとりの男性がワシントンD.C. の地下鉄の駅に座ってヴァイオリンを弾き始めた。1月の寒い朝のことだった。45分ほどの間にバッハを6曲演奏した。ラッシュアワー時だったので、この間に駅を通った人は優に1000人を数える。その多くが仕事へ向うところだった。

3分が過ぎて、中年の男性が演奏している音楽家がいるのに気づいた。彼は歩調をゆるめ、数秒立ち止まったが、多忙なスケジュールに遅れまいと急いで去った。その数分後ヴァイオリニストは最初のチップを受けとった。女性が小箱にお金を投げ入れたのだが、彼女は立ち止まることなく歩き去った。また数分後、男性がひとり壁にもたれて演奏に聞き入ったが、時計を見ると再び歩き始めた。

大きな関心を示したのは、3歳の男の子だった。母親は彼を引っぱったのだが、子供はヴァイオリニストを見るために立ち止まってしまった。ついに母親が彼を強く引っぱったので、子供は歩き始めたが、頭はヴァイオリニストに向けられたままだった。他の数人の子供達にも同様の反応が見られた。そのどの親たちも例外なく子供たちに動くように強いた。音楽家が演奏した45分の間、6人だけが足を止め、ちょっとだけ立ち止まった。20人ほどがお金を与えたが、そのままのペースで歩き続けたままだった。音楽家は32ドル集めた。演奏が終わって静けさが戻ったとき、それに気づくものは誰もいなかった。誰も拍手喝采せず、何の評価もなかった。

誰も気づかなかったが、このヴァイオリニストは、世界の偉大な音楽家のひとり、ジョシュア・ベルだった。彼は、これまでに作られた難しい技術を要する曲のひとつを演奏した。それも3500万ドルという値のヴァイオリンで。地下鉄で演奏する2日前ジョシュア・ベルはボストンの劇場を満席にしていた。その席は平均100ドルの値段だった。

これはほんとうの話である。地下鉄の駅での身分を隠したジョシュア・ベルの演奏は、人々の知覚、審美眼、優先性についての社会的実験の一環としてワシントン・ポスト紙により企画されたことだった。その設問は、「適切でない時間に公共の場において、美を認識するか?そこに留まり、美を正当に評価するか?予期せぬ脈絡のなかで才能を認めるか?」というものであった。この実験の反省としての、ひとつの疑問はこれである。「もしそこに留まって、世界に名だたる音楽家のひとりが名曲を演奏するのを聴く瞬間を持たないのであれば、他のどれだけのものを見逃しているだろうか?」

川本訳

山鹿教会のお勧め!!美味しいレシピーキャッキェレ ディ カルネバレー

2010年02月14日 | Weblog
Ingredienti:                     材料
400 gr. di farina “00″                 中力粉    400グラム
25 gr. di zucchero a velo              粉砂糖     25グラム 
50 gr. di burro                     バター      50グラム
2 uova intere                      全卵        2個
2 tuorli                          卵黄        2個
una buccia di limone grattugiato         レモンの皮すりおろし 1個分
1 pizzico di sale                     塩      ひとつまみ

Preparazione:
Formare una fontana con la farina setacciata, quindi aggiungere tutti gli altri ingredienti. Amalgamare bene il tutto fino ad ottenere un impasto liscio e consistente da lasciar riposare per circa 10 minuti.
Stendere l’impasto con un mattarello fino ad ottenere una sfoglia molto sottile. A questo punto, con la rotella rigata, procedere a ritagliare striscioline e rombi dalle forme più varie.
Friggere in olio bollente per pochi minuti, sgocciolarle su carta assorbente da cucina e cospargerle con lo zucchero a velo.

作り方
ふるった小麦粉にくぼみを作り、そこへ他の材料を全部加える。粉と他の材料を少しずつなじませながらよく混ぜあわせ、しっかりした生地になるまで捏ねてから、10分ほどねかせる。
麺棒で生地をできるだけ薄く広げ伸ばす。ギザギザ歯のローラー(なければナイフ)で菱形に切る。
中温の油でカラリと揚げ、油をきってから粉砂糖(上記分量に含まず)をふりかける。
川本 清美訳

山鹿教会のお勧め!!ー美味しいレシピー

2010年01月15日 | Weblog
Torta di mele verdi       青りんごのケーキ
Ingredienti:                     材料
5 mele verdi                      青りんご    5個                      
170 g burro                       バター    170g
2 uova                           卵        2個
240 g farina                       小麦粉    240g
150 g zuchero                      砂糖     150g
16 g lievito per dolci                 ふくらし粉   16g
Preparazione:
Pulite le mele e tagliateli a cubetti.
Montate le uova con il zuchero per 2 minuti poi agiungete la farina setacciata con il lievito e montate ancora per 2 minuti.
Alla fine agiungete il burro a cubetti morbido e mischiate per bene fin quando e tutto omogeneo e agiungete le mele mescolando tutto bene.
Mettete il tutto composto in una teglia imburata e infarinata.
Cuocete la torta in forno gia caldo a 180 per 30 min circa.
作り方
りんごを洗って、サイコロに切る。
卵を砂糖と共に2分間あわ立て、ふくらし粉と共にふるっておいた小麦粉を加え、さらに2分間あわ立てる。
最後にサイコロ大に柔らかくしたバターを加え、生地が均質になるまでよく混ぜ、りんごを加える。
バターを塗って、小麦粉をふりかけておいたパイ皿に生地を入れる。
180度に温めておいたオーブンで30分ほど焼く。

おいしい生活を!!

川本作

山鹿教会 - 心の物語 -

2009年10月18日 | Weblog
ツバメ

冬がやってきて、ツバメはアフリカへ渡ったが、羽根が黒い鳥たちと違って自分だけが白いため、だれも一緒にいてくれようとはしなかった。
可哀想なツバメはいつも一人ぼっちで、とても淋しかった。
ある日のこと、大草原を空高く飛んでいたツバメは、たき火の燃え跡を見つけ、とても素晴らしいことを考えついた。
その灰の中を転げまわり始め、見る見るうちにツバメの羽根は黒くなった。
鳥たちは、今やツバメが自分たちと同じような姿になったのを見て、友達として歓迎するようになった。
やがて夏がやってきて、今では黒い羽根となったツバメはイタリアへ帰ったのだが、今度は黒いためにそこではだれも相手にしてくれなかった。
ある日のこと、小川で水浴びをしているとまた体が白にもどっているのに気づいた。それから、再び友達を見つけることができた。
アフリカにもどっても、イタリアに帰ったときと同じようにこの問題はきまってツバメを悩ませた。
アフリカでは灰の中を転げまわり、イタリアでは水浴びしなくてはならないことにうんざりしたツバメは、羽根の背中に黒い色を移植し、腹側は白い羽根のままにしてくれる有名な外科医のところへ行くことを決意した。
それからというもの、アフリカでもイタリアでも鳥たちはみなツバメを歓迎した。ツバメの体は今ではいつも白と黒とのふたつの色であったから。

宮本訳

山鹿教会 -心の物語ー

2009年07月13日 | Weblog
小さな花

そこは、ろくに草も生えない荒地。灰色の、冷たい岩場。そんな過酷なところに、ある日小さなバラ色の花が生まれた。その花はとても美しく、見る者を魅了せずにはおかないほどだったが、残念なことに、その花のすばらしさを見ることのできる者は誰もいなかった。そこには黒い影たちが住んでいるだけだった。
空は雲におおわれ、青い空を見ることはできなかった。影たちはお互いにささやき合った。
我らの、この暗い地に、どうしてこんなに色鮮やかな花が咲けたのだろう?
ひとりぼっちの小さな花は淋しかった。友だちが欲しくて、周りの影たちのように黒くなりたいと思うほどだった。
空の雲たちは、いつも花を見守っていたが、心配のあまり毎日涙をこぼし、その涙は止まない雨となって、その地に降り注いだ。ある日、雲のひとりが小さな花を助けたいと行動を起こし、旅に出た。旅の途中、出合った人たちに話し続けた。
暗い荒地で小さな美しい花を見つけました。その花を見ると、喜びで満たされ、賛美の歌を歌わずにはいられません。その花を見る人の心は希望にあふれ、夢は限りなく広がって、永遠の幸せへと続きます。しかし、誰もその花を見てあげないなら、小さな花は、ひとりぼっちのまま死んでしまうでしょう。
小さい雲の話をまともに聞こうとする者はいなかった。
 そんな暗いところに花など咲くはずがないではないか!
小さい雲はめげることなく懸命に話し続けたので、その声は太陽や月、星たちのところまで届いた。太陽は、その小さな花のことをもっとよく知りたいと思い、小さい雲を召し出した。雲は申し上げた。
 信じ難いことだとお思いかもしれませんが、本当のことなのです。いつも雲が垂れ込めていて、暗くやせた私共の地に、小さな美しい花が咲きました。でも、その花はひとりぼっちで、淋しくて、死んでしまいそうなのです。
太陽は言った。
 お前の言葉を信じよう。一緒にその花のところへ行こう。
太陽は風を呼び出すと、その力を借りて天空へと上り、小さい雲の案内でその地へ出発した。荒地を覆い隠していた雲たちは、太陽を見て、広々と道を開けた。太陽の光は荒地に照りわたり、灰色の岩場で小さな花は光り輝いた。その小さな花が太陽の光に会うのは初めてのことだった。また、太陽は、それまでこれほどに美しい花を見たことはなかった。月も星たちもはるばるとこの地へやって来た。 
その日から、この地に生まれた小さな花は、もうひとりぼっちではなくなった。たくさんの花々が周りに咲き、一緒に風に揺れている。日中は太陽がやさしく微笑みかけ、夜には月や星たちが小さな花のためにすばらしい夢を贈ったのだった。
(吉川 日本語文再構成)

山鹿教会 -心の物語ー

2009年06月26日 | Weblog
正体を隠したメシア                           

デ メロ神父 原作    牧山 日本語文再構成

ヒマラヤ山脈の荒寥とした山中の岩屋で、ひとりの優れた導師が、その日も静かに目を閉じて、瞑想にふけっていた。ふと目を開いたとき、思いもよらない訪問客が彼の前に座っていた。有名な修道院の院長だった。
導師は尋ねた。「このような所へ何を求めに来られたのか?」
修道院長は、いま彼が大変気掛かりで不安に思っていることを話し始めた。かつて彼の修道院は全西方世界で広く名前が知れ渡っていた。修道院のどの独房も若い志願者であふれ、礼拝堂にはいつも修道士達の歌声が響いていた。だが、残念なことに修道院にとって非常に苛酷な時代が訪れ、いまでは訪ねてくる人もなく、若い志願者も門を叩かなくなっていた。修道院の礼拝堂からは人影が消え、今や修道士の小さな集団が残っているだけだった。彼ら修道士達は今までと同じように黙々と自分の仕事を続けていたが、気分が晴れることはなかった。
いま修道院長が知りたいのは、まさにこのことだった。「どうして私の修道院はこのような状態になってしまったのか?」  
「それは、」と導師は静かに言った。「無知の罪ゆえに。」
「いったい何のことですか?」と修道院長は不安そうに尋ねた。
「あなたの修道院にいる修道士のひとりは、正体を隠したメシアである。あなた方全員がこの事実を知らない。」導師は穏やかな声で、確信をもってはっきりと答えた。そう言った後、再び目を閉じて、瞑想に入った。
修道院へ帰り着くまでの道中、修道院長の心は畏れおののき強く震えていた。
何ということだ! メシアが! 救い主御自身がこの地上に戻っておられるとは! しかも私の修道院におられるとは! いったいどうして今日まで気付くことが出来なかったのか! いったい誰なのだろうか? 食事係の兄弟か? 香部屋係の兄弟か? 会計係の兄弟か? もしかしたら、司祭職の兄弟か? いやいや、司祭ではない。彼には欠点が多すぎる、残念なことに。
しかし、あの岩屋の導師は、メシアは身分を隠しておられるとはっきり言われたではないか。数々の欠点は、正体を隠すための方策かもしれない。つまるところ修道院のどの修道士にもそれぞれ欠点がある。その彼らのなかのひとりがメシアとは!
修道院に戻ると修道院長は皆を集め、この旅で明らかになったことを包み隠さず彼らに告げた。 修道士達は驚き、まじまじとお互いを見つめ合った。
メシアがここに? 信じられない! この人だろうか? あっちのあの人だろうか? それとも別の? はっきりしていることはひとつ。 もしメシアが自分たちのなかで正体を隠しておられるのなら、自分たちには容易く見分けることなど出来るはずがないということ。
それから、修道士たちはお互いに、どの修道士に対しても、丁寧に礼儀正しく尊敬の念をもって接するようになった。兄弟と揉め事を起こしたときには、「もしかすると、この人がメシアかも!」 また、言い争いになった時には、「この人こそメシアかも!」という思いがすぐに心に浮かんだから。
このような日々の結果、修道院の雰囲気は次第に感動的で喜びに満ちたものに変わっていった。 すると、この修道会への入門許可を求め、多くの志願者が門を叩くようになり、修道院の礼拝堂には再び愛徳の精神に満たされた修道士たちの喜びの歌声が響きわたるようになった。

山鹿教会 - 心の物語 ー

2009年05月23日 | Weblog
少年とアイス

アイスを今よりもっと安い値段で食べることのできたころのお話です。10歳の少年がひとりでバールにやって来て、小さなテーブルに座りました。ウェートレスが彼のところに水の入ったコップを運んできました。
「チョコレートパフェはいくらするの?」と少年はたずねました。
「50セントよ。」とウェートレスは答えました。
少年はポケットのお金を取り出して数え始めました。
「えーっと、アイスだけだったらいくらなの?」
ちょうどそのとき他にも待っているお客たちがいたので、ウェートレスは少しいらいらしてきました。
「35セント!」ウェートレスはつっけんどんに答えました。
すると男の子はもう一度お金を数えなおして言いました。
「じゃあ、アイスだけのをちょうだい!」
ウェートレスは彼のところにアイスと勘定書を運んできました。少年はアイスを食べ終わるとレジで勘定を支払い、店を出て行きました。ウェートレスはテーブルを片付けにもどって来て、お皿のすみに自分へのチップが15セント置かれているのを見ると涙が出そうになりました。
少年はウェートレスへのチップを取っておくために、自分が食べたかったチョコレートパフェを注文しなかったのでした。
(宮本 訳)

山鹿教会 - 心の物語 ー 

2009年05月11日 | Weblog
若い女性とビスケット

若い女性がひとり、大空港の待合室で自分が乗る便を待っていた。待ち時間がかなりあったので、時間つぶしに本を読むことにした。本を買うついでにビスケットも一包み買った。
静かな場所で読みたかったので、人の少ない貴賓室の席に座った。彼女が腰をおちつけた席の横の椅子にビスケットが載っており、そのむこうの席で男性が新聞を読んでいた。
彼女がビスケットを食べると、彼も1枚つまんで口にした。彼女は、ずいぶん失礼な人だと内心怒りを覚えたが、黙って本を読み続けた。何か痛烈なひとことを浴びせたいと思ったが、その勇気がなかったのだ。
彼女がビスケットを1枚取るごとに、彼も1枚食べ、それは最後の1枚になるまで続いた。彼女はいじわるく考えていた。 “このあと彼がどうするか、なんと言うか見ものだわ。” 
最後のビスケットを手にとった彼が、黙ってふたつに割ったとき、彼女はとうとう我慢ができなくなった。大きくため息をつくと、立ち上がり、読みかけの本と自分の持ち物をまとめて、その場所を離れた。
気分がすこし落着いてくるにつれ、もう他の人とのことで嫌な思いをしたくなかったので、通路沿いにある椅子に座ることにした。そこで、開いたまま持っていた本を閉じ、バッグにしまおうとしたそのとき、そのバッグの中にまだ開けていないビスケットの包みがあるのに気がついた。それは、ついさきほど男性といっしょに、競うように1枚づつ取って食べた、あのビスケットと同じものだった。そのビスケットの持ち主である彼は、怒らず、心を乱したそぶりも見せず、当然のように彼女と分け合ったのだった。
自分自身の勘違いに気づかないまま、自分はなんと恥ずかしいことをしたのだろう。“私は傷ついた”と一方的に思い込んで、怒りをあらわにした自分。それなのに彼はなんと立派だったことだろう。 彼女は、いまになって気がついたのだった。 
(吉川  文再構成)