旅ごころ

「旅」をキーワードとして、イエローな脳細胞を駆使して生活を愉しむ。

小説「騎士団長殺し」からの幻想🌳

2017-05-05 06:44:46 | 東京
今から2ヶ月と10日ばかり前、村上春樹さんの「騎士団長殺し」が出版され、発売と同時に熱烈なファンである私は読み始めた。「ノルウェーの森」からが私の村上春樹読書体験の始まり。それから今まで読者としてその物語にいつも惹かれている。作品は幻想的内容が随所にあり、「こんなのどこが面白いの?まどろっこしい。」と感じる方もおられるだろう。でも私たちの身近な世界に少しばかり不思議な仕掛けがあった方が、ワクワクするのではないだろうか。
3泊4日で東京に行きました。数日がかりで必要な用事を済ませたので丸1日時間が空きました。どこに行こうかと思った時に、都会の喧騒から離れた静かな別世界新宿御苑を思いつきました。
苑内は平日のせいか、幼稚園児と中国人観光客が目立つ程度で混んでなくのんびり散策ができた。ただ入苑後、3月のまだ冷たい風を避けようと新宿門から直ぐ案内表示に従って「大温室」を目指した。温室に入って体も温まり、同時に幸運にも開花している珍しい花と巡り合う。「ヒスイカズラ(翡翠葛);英名Jade Vine」は見頃を迎えていた。この花にはイミシンな「私を忘れないで」という花言葉がある。やがて40年以上前の青春の1ページを次第に思い起こすことに。
温室を出て散策路を歩いていると中の池の傍の一本の寒桜がほぼ満開を迎えていた。遠景はニューヨークの摩天楼を思わせるNTT代々木ビルの眺め。その景色から新海誠監督の傑作映画「言の葉の庭」のシーンが脳裏に蘇った。わたしも過去苑内で女性と会っていた。当時北陸旅行中に知り合った東京の大学生である。
知人へのプレゼントを買いに新宿高島屋百貨店に行くため散策路を千駄ヶ谷門まで歩く。千駄ヶ谷と言えば村上作品を多く生み出すきっかけとなったジャズ喫茶ピーターキャットが昔あった場所だ。村上さんはそこで結婚し新生活をスタートさせた。しかし私はやがて彼女とは別々の道を歩んで行く。
東京から帰りの新幹線の車中で小説を全て読み終えた。モーツァルトのオペラの旋律とともに、主人公の画家は現実世界と異界(フツーは理解できない、この世にない世界)を旅した。村上作品を読みある想念を持った。自分の周囲にはフツーな世界と別世界があり、人はこの両世界を旅することが出来る。
最近妻に「電灯消し忘れてる!」とよく注意される。日々のつまらない感動の少ない生活に戻ったせいで、決して認知症の兆候ではないのだが。