「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

 京都・奈良を中心に古刹・名刹や「花の詩」等の紹介。花や風景写真、オリジナルの詩、カラオケ歌唱など掲載しています。

 「大神神社」(おおみわじんじゃ)

2010年06月25日 17時33分25秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 日本最古の神社という「大神神社」を訪ねた。
 そうめんの産地三輪に日本一の大鳥居(高さ22㍍)で知られる大神(おおみわ)神社がある。最古の神社として知られ、また万葉集で知られる山辺の道の始点となっている。創始は、崇神天皇7年(紀元前91)に天皇が物部連の祖伊香色雄(いかがしこを)に命じ、三輪氏の祖である大田田根子を祭祀主として大物主神を祀ったのが始まりとされている。
 大鳥居は昭和59年に昭和天皇の親拝を記念して建てたもので、元々はこのすぐ横にあった小さな一の鳥居しかなかった。

 日本神話に次のようなくだりがある。
 『大国主神(大己貴神)は少彦名神とともに国造りをしていたが、国造りなかばにして少彦名神は常世に帰ってしまった。大国主神が「この後どうやって一人で国造りをすれば良いのだ」と言うと、海原を照らして神が出現した。その神は大国主の幸魂奇魂(和魂)であり、大和国の東の山の上に祀れば国作りに協力すると言った。その神は御諸山(三輪山)に鎮座している大物主神である。』
 大物主神は蛇神であり水神または雷神としての性格を持ち稲作豊穣、疫病除け、酒造り(醸造)などの神として篤い信仰を集めている。また国の守護神(軍神)、氏族神(太田田根子の祖神)である一方で祟りなす強力な神(霊異なる神)ともされ、今日まで三輪山全体を神体山として奉斎している。それ故に、本殿を持たず上代の信仰の形をそのままに今に伝えているという。

 拝殿は、寛文4年(1664)徳川四代将軍家綱の造営になり、西向きに建っている。桁行九間(21㍍)、梁間4間(8㍍)、正面は三間一面の大向拝がつき、江戸時代を代表する堂々とした建物で、大正10年に重要文化財に指定されている。

 三輪の地は古く大和の文化発祥の地で、政治・経済・文化の中心地でもあった。三輪山麓を東西に流れる初瀬川の水路の終点に、日本最古の市場といわれる「海柘榴市」(つばいち)が80の巷として開け、また、南北に走る日本最古の産業道路である山辺の道と共に三輪の地は交通の要所ともなっていた。
 そして、奈良盆地の東方の山裾を縫うように南北に、三輪から奈良へ通じる古道。大和平野には、南北にまっすぐ走る官道として、上ツ道(かみつみち)、中ツ道(なかつみち)、下ツ道(しもつみち)の3つの道が7世紀の初め頃には造られていた。山の辺の道は、これらの道より古く、上ツ道のさらに東にあって、起伏に富み、曲折しながら村と村を結び、人々の生活の道でもあった。古代の面影をよく残し、万葉びとの息づかいを伝えているのが、当社の周辺から檜原神社を通り、石上神宮までの15㌔の道で、この間には、古社寺や古墳、万葉歌碑をはじめ多彩な伝承の舞台が展開し、古代神話の世界へと誘ってくれる。

 境内には由緒ある神木があるが、そのいくつか紹介しておこう。

■衣掛杉(ころもがけのすぎ)
 謡曲「三輪」にでてくる玄賓僧都(げんぴんそうず)が女人に与えた衣が、掛かっていた杉と伝えられている。女人とは三輪大神で、『古今和歌集』には「我庵(わがいほ)は 三輪の山本 恋しくば とぶらいきませ 杉立てる門」という歌があり、三輪明神の神詠とされてる。現在、覆屋が作られて、周囲10㍍におよぶ巨大な古株が残されている。

■巳の神杉(みのかみすぎ)
 江戸時代には、「雨降杉」とあり、里人たちが雨乞いをしていたようだが、いつの時代からか、杉の根本に、巳(み/蛇)が棲んでいるところから、「巳の神杉」と言われるようになった。蛇は、古来より三輪の神の化身と伝わっており、『日本書紀』の崇神天皇10年に、「小蛇(こおろち)」と記され、また雄略天皇7年には、三輪山に登って捉えて来たのが「大蛇(おろち)」であったと伝えている。三輪の神の原初の形とされる蛇は、水神であり、雷神ともなり、農業神、五穀豊穣の神となり、やがては国の成立とともに、国家神的な神に至ったと考えられている。

■しるしの杉
 三輪の大神のあらわれた杉、神の坐す杉とされていた。しるしとは、示現のことで、当初、神杉として信仰されていたすべての杉のことを指していた。この杉も覆屋が作られ、根本だけが残っている。

■おだまき杉(緒環杉)
 『古事記』にある祭神と活玉依媛(いくたまよりひめ)との神婚に由来しており、大田田根子命(おおたたねこのみこと)の誕生を物語る杉という。 江戸時代には文献にも記載されている名木であったというが、すでに枯れていて、
根本だけが大切に残っている。

 所在地:奈良県桜井市三輪。
 交通:JR桜井線三輪駅下車徒歩5分。近鉄桜井駅よりバス「三輪明神」下車。

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「矢田寺」(やたでら)

2010年06月11日 00時00分57秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 飛鳥時代から続く由緒ある寺院で、日本のお地蔵さま発祥の地「矢田のお地蔵さん」で親しまれている矢田寺(矢田山金剛山寺)は、城下町・郡山より西へ三・五キロ、矢田丘陵の中心矢田山の中腹にあり、日本最古の延命地蔵菩薩を安置している。「矢田寺」という名で親しまれているのは、万葉の昔より「矢田の里」と呼ばれていたことからで、今では「紫陽花寺」(庭園)としても親しまれている。

 寺伝によれば天武天皇の勅願により天武天皇8年(679)に智通が開基し、七堂伽藍四十八坊を造営、十一面観音菩薩と吉祥天を安置したという。その後の戦乱などにより多くを焼失し、現在は北僧坊、大門坊、念仏院、南僧坊の四つの僧坊を総称して矢田寺と呼んでいる。弘仁年間に、満米上人により「延命地蔵菩薩」(重要文化財)が安置されて以来、地蔵信仰の中心地として栄えてきた。
一口に「お地蔵さん」といっても、矢田寺の「お地蔵さん」は珍しい特徴を備えている。

 一般的なお地蔵さんは、右手に杖、左手に如意宝珠を持っているのだが、矢田寺のお地蔵さんは、そのほとんどが右手の親指と人差し指を結んだ独特のスタイルで、「矢田型地蔵」と呼ばれている。 説明によれば、その姿が、あたかも阿弥陀如来の来迎印のようであることから、このスタイルのお地蔵さんは地蔵・阿弥陀両方の功徳を備えているのだという。この他、何も持たない型や、勝軍地蔵と称する、鎧甲に身をかため、馬に乗って幡をひるがえす、勇ましい像もあった。

 境内付近一帯は、県立矢田自然公園に指定されており、矢田丘陵ハイキングコースとして、幼児からお年寄りにまで人気があり、また斑鳩の法隆寺より、北は追分の本陣を経て霊山寺に至る古道は、山辺の道、葛城道とともに、大和のもっとも美しい道のひとつと言われている。
 境内は、早春の梅花に始まり、春の桜と躑躅(つつじ)、初夏の紫陽花にホトトギス、夏のキョウチクトウ、秋の萩に紅葉、晩秋初冬の山茶花まで、四季折々の情景を見せてくれる。

 特に昭和四十年頃から植え始めたという紫陽花が有名で、山紫陽花や西洋紫陽花など約六〇種一万株が六月上旬から七月上旬にかけてお地蔵さんの間から身を寄せ合うように咲き誇る景観に酔いしれる。
 紫陽花を愛でた後は一如庵でお茶を楽しむとよい。茶室からは奈良盆地、若草山が見渡せる。
 「咲く花は 過すぐる時あれど わが恋ふる 心のうちは 止やむ時もなし」(万葉集)

 所在地:奈良県大和郡山市矢田町。
 交通:近鉄「郡山駅」から、奈良交通バス矢田寺前行き、矢田寺で下車徒歩5分。
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「おふさ観音」(おふさかんのん)

2010年06月04日 08時00分23秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 高野山真言宗別格本山「観音寺」は通称「おふさ観音」と呼ばれており、慶安3年(1650)の頃、この地にあった「恋が淵(鯉が淵ともいう)」と呼ばれる池を、土地の娘「小房(おふさ)」が通りがかった時、白い亀の背に乗った観音様が霧の中に浮かんでいる姿を見て、この池に小さな宇堂を建てて観音を奉ったのが、当寺の起源だとも言われている。
 この話にちなんで今も境内には鯉の池や亀の池がある。本尊は十一面観音で、身体の健康にご利益があると言われてきたが、近年は開運厄除け、子授け、ボケ封じなどさまざまな願い事をかなえてくれるとして信仰が篤い。
 
 夏には、風鈴の涼しい音色が厄を払うという仏教伝来の思想から「風鈴まつり」が開催され、日本各地の2500個の風鈴の(奈良風鈴、小田原風鈴、江戸風鈴、南部風鈴、喜多方風鈴など)が展示・即売され、夏の風情を楽しむことができる。春と秋には「バラまつり」が開催されイングリッシュローズを中心に約1800種(2000株)のバラが優雅に咲き競うことでも有名だ。
 門前ではバラ苗の即売会(5月9日~31日)も行われ、日本庭園「円空庭(えんくうてい)」の公開や、寺宝である「生き人形」(初代安本亀八)の特別公開(拝観料300円)などが行われる。
 円空庭を奥に進むと「茶房おふさ」があり、四季折々に違う表情を見せる庭を眺めていると、喧騒から開放された空間のなかでゆったりとした時間を過ごすことができる。

 所在地:奈良県橿原市小房町6-22。
 交通:近鉄奈良線で西大寺で乗り換えて大和八木駅下車、または近鉄大阪線で大和八木駅下車、徒歩10分。



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