武弘・Takehiroの部屋

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「グローバリズム」という妖怪 ?

2024年04月25日 03時01分45秒 | 歴史

<以下の記事は2008年4月18日に書いたものです。>

1)昔から、コスモポリタニズム(世界市民主義)や世界連邦主義はあった。しかし、最近は「グローバリズム」というのが注目を集めている。国際主義と言うのだろうか、あるいは地球一体化運動とでも言うのだろうか、定義はさまざまなようである。
私にはよく分からないが、経済的には市場主義と資本の論理の国際化を目指しているようだ。資本主義が世界的に拡大し、各国が経済的に緊密な関係を持つようになったのは事実だが、それを更に推進しようというのがグローバリズムなのだろうか。
それだけなら別に問題はない。世界経済はいやでも緊密化してきている。問題は、そうした動きを意図的に、強制的に更に進めようという点にあるのではないか。そこには市場主義の強制と、資本の論理以外のものを排除しようという意図が垣間見える。

資本主義が拡大、発展していくこと自体は問題ないだろう。これは今や“自然な流れ”と言ってもいいくらいだ。社会主義(共産主義)国もずいぶん資本主義化してきた。だからと言って、何もかも市場主義化せよと言うのには疑問が生じる。
全ての国で、全ての物が市場経済の中に放り込まれたら、優勝劣敗、弱肉強食の世界になってしまうだろう。資本の論理とはそういうものだから、勝ち残るのは巨大企業や強力な多国籍企業だけとなる公算が高い。これらの企業はそれで良いだろうが、弱小・零細企業は整理統合されて潰される危険性が大きい。
何を言うか、それが資本主義ではないかと一喝されそうだが、市場主義や競争原理だけから経済活動を一くくりすると、そうなるのが当然の帰結だろう。それは仕方がないと言う人もいるだろうが、弱肉強食、優勝劣敗のままでは堪らないという人たちが、反グローバリズムの運動を繰り広げているのではないか。

経済のグローバリズムは本来、全ての人たちを豊かにしようという「理念」があるはずだ。また、そういう「理念」がなければおかしい。ところが実際は、強くて巨大な国際企業(多国籍企業)だけが大儲けして、各国の弱小・零細企業は飲み込まれていくという構図だけが見える。
だから、全ての人を裕福にしていくはずのグローバリズムが、貧富の格差を拡大し、失業者を増大させるものだと非難されるのではないか。そこには金・金・金といった「資本の論理」だけが我が物顔でまかり通り、他の価値観や理念などはどこかに消し飛んでしまいそうだ。
私から見れば、グローバリズムとは「大が小を飲み込む」「大を生かして小を殺す」理念としか思えない。

2) 以上、グローバリズムを経済的な側面から見たつもりだが、もちろん、その中には効率化、合理化といった適切な要素も含まれている。しかし、効率化、合理化というものは、それだけを目標にすると得てして人間性や良き伝統を破壊することがある。
市場主義から見れば、それは当然ではないかと言う人がいるだろうが、現実は大量のリストラ、非社員化につながるだろう。フリーターや潜在失業者の増加を見れば、それは明らかである。だからと言って、企業は効率化、合理化を止めるわけにはいかない。企業は“慈善事業”ではないのだ。
ただし、こうした状況を放っておけば、フリーターなどの増加で貧富の格差はますます広がり、社会不安は増大するだろう。そこを調整するのが、政治の役割である。 日本はかつて“総中流化”社会と言われた。このため社会生活は安定していたが、今や間違いなく「格差社会」に突入している。それで良いと言うなら別だが、多くの国民は良いとは思っていないだろう。

話しが「格差の問題」になってしまったが、これはグローバリズムと無縁ではない。市場主義と資本の論理だけを追求していくと、必ずそういう問題が起きてくるのだ。また、ことは貧富の格差拡大だけではない。環境破壊の面から、グローバリズムを強く非難する声が起きている。
さらに、国や地域によって、文化や伝統、慣習といったものは全て違うのである。それを市場主義と資本の論理だけで画一化、統一化を進めようというのは、文化的な「ファシズム」と言っても過言ではない。誰がそんな「ファシズム」を歓迎するだろうか。
国や地域によって、民族も宗教も文化も全て異なる。それをアメリカ的(あるいは欧米的)な価値観で画一化、統一化しようとしても無理だ。絶対に無理である。 私は「グローバリズム」の一面しか見ていないかもしれないが、この言葉自体に、得体の知れない不気味なものを感じる。正に現代の“妖怪”といった感じだ。
冒頭に述べたコスモポリタニズム、世界連邦主義には少なくとも「理想」がある。しかし、グローバリズムに果たして「理想」があるだろうか。そんな高邁な理念が生きているだろうか。 私には、単なる経済的野心と露骨な資本の論理しか見えてこないのだ。(2008年4月18日)


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2 コメント

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アメリカの白人労働者が被害者になりました (さすらい日乗)
2017-01-26 14:57:30
一昨日、BSフジのプライムニュースを見ていたら、五百旗頭先生と慶応大の細谷先生が出ていて、トランプの出現について議論されいました。
グローバル化で、皮肉にもアメリカ中西部の工場労働者、つまり白人中産階級が一番被害を受けて、彼らが本当は救い主ではないのに、トランプに入れたのだと分析されていましたが、その通りだと思います。

BSフジのこの番組は好きでよく見ていますが、大変公平で優れた番組だと思っています。フジも捨てたものではないなと思います。
BSニュース (矢嶋武弘)
2017-01-27 12:07:27
BSニュースはほとんど見てませんが、たまには見てみようと思います。
アメリカでは白人中産階級がずいぶん没落していると聞きます。トランプ氏の当選はそういう人たちの支持を受けたのでしょうが、今後もその傾向は続くと思います。グローバル化に逆行しますね。
それが良いか悪いかは知りませんが、トランプ氏の実行力は大変なものだと思います。
「有言実行」の見本みたいですね。「有言不実行」の政治家が多い日本では、あまり考えられないことでしょう。

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