おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

母親が息子の交通事故の身代わりに

2006-02-14 12:05:12 | 珍事件
 子供が友達の家でおもちゃを盗んで帰りました。お母さんは叱るどころか「うまく盗んで来たね」と褒めました。この子供は長じて大泥棒になり、捕まってとうとう刑場へ引かれるその時に、野次馬の中に自分の母親を発見しました。「お母さん、お話があります」と母親を呼び寄せました・・・

 このイソップの寓話を思い出した。
 母親が自分の息子を庇ってひき逃げ犯として出頭して罰金刑を受けていたが、事件から三年後、真犯人はその長男であることが判明。長男はひき逃げ容疑で、母親は犯人隠匿容疑で逮捕されたという事件。
 <当時、長男は大学進学を控えており、母親は「息子がかわいそうで、身代わりに自分が起こしたことにしようと思った」と供述しているという。>(朝日新聞2月13日) ある意味そんなに珍しい事件でない。この事件の特異性は、その発覚の経緯だ。

 事故を起こしたときにこの親子の他にその次男も同乗していた。<05年12月、事故車両に同乗していた次男が別の事件で警察の事情聴取を受けた際に「これを機会に自分でも悪いと思っていることを話します。03年に事故を起こしたのは母ではなく、本当は僕の兄です」と話し、身代わりが発覚した>(朝日)
 次男はいったい何の容疑で「事情聴取」を受けたのか、触れている記事は見当たらなかったが、とにかく次男の中にはずっと罪の意識がくすぶっていたことは間違いない。

 イソップの話では、息子の最後の言葉を聞こうと耳を近づけた母親の耳たぶを息子が噛み切ってしまう。母親は悲鳴を上げて、「この子はなんてことをするんだい」と叫ぶと、息子は「あんたはなんでオレが最初盗みをしたときに叱ってくれなかったんだ。そうすれば今日死刑になることもなかったのに」。
 どうも自分の悪行を母親に責任転嫁しているような気もするが、「悪」を認めない限り更生することはないという教訓だ。この長男も、このままではまた交通事故を起こして、同乗していた妻に、「おまえがやったことにしてくれ。飲酒運転がバレたら会社は首だ。そうなればお前も困るだろう」と罪を被ってもらうことを繰り返していただろう。

 このほかに気になることがこの事件であと二つ。
 ひき逃げにもかかわらず、この母親最初の刑は罰金40万円だけ。交通事故犯罪の刑が異常に軽いのは、すでに指摘した「副検事」制度の不都合から来るのだろう。
 もう一点は、最初この事件を捜査した富山県警魚津署が、「当時の捜査に問題はなかった」と全く反省していないことだ。日本の警察は捜査ミスがあったとき必ずこう言う。間違いや「悪」を決して認めないのだ。まさにあのイソップの母親だ。警察が大泥棒養成場になってはいけない。耳を食いちぎられる前に、批判の声に耳を傾けなければ。


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