さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【DVD鑑賞録】ロッシーニ/歌劇 《ギョーム・テル(ウィリアム・テル)》

2018-02-11 23:50:37 | オペラ・バレエ鑑賞
また輸入盤のDVDを英語字幕で、リージョンコードを見ない安物中国製再生専用DVDレコーダーでつらつら見る。

まず、イケメン指揮者が出てきて、あの、素晴らしい序曲をまとめ上げる。わ・・この人の指揮分かりやすい。やろうとしていることが分かる。
我々の本番の時のイケメン指揮者の指揮も素晴らしかったが、この人もまた一味ちがって良い!

まず序曲が終わった時点で、まるでオペラが終わったかのようなブラボーと足音の嵐。

しかしこの序曲に使われたフレーズは、長いオペラの中で、一度も登場しないのである。

さて、幕が開くと、やたら現代風の舞台。現代風の舞台は個人的にはあまり好かないのだが・・・しかし次第に引き込まれ、現代風だということを忘れるほど素晴らしい演奏だった。

このオペラの中での本当の主役は、ウィリアム・テルではなくて、アルノール君なのだな・・この顔・・この声・・見覚えあるぞ・・チェネレントラに出てきた王子様・・そうだ、ペルー出身のフローレスだ! あらためてジャケットをよく見たらやはりフローレスだった。

ウィリアム・テルがあまり上演されないのは、尺が長すぎるのと、テノール役に超高音を強いるため、歌える人が少ないということであるが、フローレスは劇中に何度も登場するハイCを、何ごともなく歌っており、それでいて中音域もちゃんと鳴らすことができる素晴らしい歌手だ。

そして、アルノール君の恋人が、マティルデ王女。アルノール君がスイス人で、マティルデがオーストリアのハプスブルグ家の王女。このオペラはオーストリアからは派遣された代官であるゲスラーの圧政に苦しむスイス人が立ち上がる物語で、いわば先日見た「シチリアの夕べの祈り(晩鐘)」と似たようなシチュエーション。敵味方に分かれた恋なのであるが、微妙なのがマティルデの立ち位置。政治的な権限はないのだろうが、多少ゲスラーに物申せる立場にあるらしい。

有名な、テルが息子のジェミの頭に乗せたリンゴをクロスボウで見事射抜くシーンの後、テルがもう一本用意していた矢が見つかり、もし失敗していたら、次の矢でゲスラーを射ていただろうと告げ、息子ともども逮捕される場面がある。その時、マティルデ王女が駆けつけ、ジェミだけでも救おうと頑張るのである。このマティルデ・・登場シーンのアリア「暗い森よ」ではやや低めのトーンで大人しいのだが、劇が進むにつれて音域が高く、強い歌声になっていく。マリナ・レベカのソプラノは、中音域は優しく、高音域は輝かしくて素晴らしい。マティルデはジェミを母親の元に連れて行き、自分はテルがちゃんと戻って来れるように自ら人質になると申し出、スイス人親子の信頼を勝ち取る。

そしてラストシーンでは、テルが、ぷらっと不用意に登場したゲスラーの胸をクロスボウで射抜き、・・ゲスラーさえ倒れればよいという設定なのであろうが・・・大団円を迎える。このオペラは途中かなり血なまぐさいシーン(アルノール君の父親が暴行され、結局は処刑されるとか、スイス人がオーストリア人にいじめられるシーンなど)が沢山あるが、マティルデ王女の行動のおかげで救いを感じる。テルの息子ジェミは女性が演じており、テル以上に勇敢である。ゲスラーがテルに息子の頭の上のリンゴを射てみよと言った際、テルは一度あきらめてゲスラーの前に膝まづく。しかしゲスの前に屈する父親を見たくないジェミは、父親を奮い立たせて、自ら自分の頭の上のリンゴを射るよう説得するのである。

非常に長い演目であったが、やはり、実際に見てみないと分からないことは多いものだなと思った。

---------------------------------------------------------------
ギョーム・テル:ニコラ・アライモ(バリトン)
アルノール・メルクタール:ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)
マティルデ:マリナ・レベカ(ソプラノ)
ジェミ:アマンダ・フォーサイス(ソプラノ)、他

ボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団

指揮者:ミケーレ・マリオッティ
演出:グラハム・ヴィック(演出)
---------------------------------------------------------------

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする