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『さよなら、アドルフ』-ナチの犠牲者側でなく、加害者側の幹部だった家族の視線からの戦後の悲惨さを描く

2014-02-25 18:03:56 | 最近見た映画


        【2014年2月15日】    京都みなみ会館

  『アドルフ』とは、もちろん「アドルフ・ヒトラー」のことである。戦況が連合国側に傾き、ナチスの敗北が決定的になる中、ヒトラーに忠誠を誓ったナチ親衛隊将校らが連合国側に捕らえられる。

 原題となっている『RORE』(レア)は、ナチ親衛隊の幹部である父と、熱狂的なヒトラー信奉者である母を持つ裕福な暮らしをする家庭の5人兄弟の長女の名前である。レアの両親も連合国に捕らえられ、残された子ども達は遠い親戚を頼って逃避行の旅に出るが、一番下の第5子はまだ乳飲み子である。飼っていたシェパードは旅立ちの前に父親が射殺した。


                                               
         



 南ドイツから900km離れたハンブルクまでの道のりは遠い。ドイツの気候がどのようなものか想像できないが、真夏でもない限り、北に行くほど夜露をしのぐものをもたない逃避行は厳しいものに違いない。

                     

                           



 子どもとはいえ、ナチ親衛隊の家族を温かく迎える家庭など無い。金はもちろん形見の指輪も食料と交換するために使い果たしてしまう。
  


      


 途中、レアはあるキャンプで多数のユダヤ人が虐殺された写真を見る。傍らには父が着ていた同じ制服を着た兵士の姿が。《ウソだ!》と思い写真を破りちぎる。

 占領されたドイツはソ連やアメリカ地区に分割されていた。それにともない、ドイツ縦断の旅は厳しくなる。連合国の検閲があった。どこからか一緒になった青年が「自分の妹達だと」と偽って、身分証を持っていないレア達一行をかばう。彼が示した身分証には《ユダヤ人》であることを示す黄色い星印があった。


                                                      


 それまでレアが受けた家庭教育からは、その好意は素直に受け入れがたいものだった。行く手には橋を破壊された川が行く手を阻んでいる。もう一つの《事件》が起きる。

      
                          


 最初だけ登場したレアの両親-特に母親の熱狂的なヒトラー信奉者である事と、その末期的な退廃振りを何気ない仕草の中で活写していて、ナチスの末期的雰囲気がうまく演出されていると思った。


 それにしても、ずっしりと深く考えさせる内容を持ち、しかも美しい映像としっかりとした脚本で、丁寧に作られた見事な出来映えの映画だ。


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 折しも一昨日、テレビで「東京の図書館を中心に、数百冊に及ぶ『アンネの日記』の本のページが破り取られる。」というニュースが報じられていた。一方、欧州では移民問題から発して、『ネオナチ』の勢力が大きく支持を伸ばしてきているという。

 日本のこの事件はどんな人物が起こしたものなのだろう。不穏な動きの多い昨今、気になる事件である。





   

        
        『さよなら、アドルフ』-公式サイト








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