“生活が豊かになれば、医療にもお金をかけることができ、長生きになる。”という迷信が崩れそうである。生活が豊かになれば、暴食もするし、暴飲もする。すぐにタクシーを拾って、人は歩かなくなるのである。でも、生活が豊かになれば、医療機関のアドバイスも受けるだろうし、フイットネスクラブにも通うようになるじゃないかと言われる方もいる。しかし、事実は確実に、生活が豊かになれば、早死にする人が増えるのである。中国の保険規制当局は最近、10年以上ぶりに生命表(死亡率表)を更新した。それによれば、生産年齢人口の3分の1近くを占める41歳から60歳の中国人男性の間での死亡率が2013年までの10年間(入手可能な直近のデータ)で12%も増加しているという。中国では1人当たり可処分所得は過去6年間で90%も増加していて、10年間ならば、たぶんそれ以上だろう。その中国では酒類の消費が過去15年間にわたって毎年5%ずつ増加してきた。急増である。爆飲と言ってもいい。これに象徴されるように、より豊かな食事は中国人男性のあいだで肺や心臓の病気の多発も招いている。一方で、急速に進む豊かな社会とは、そうでない人たちも多数生むことになり、絶望死も増加させる。そういえば、日本でも、戦後の混乱期、決して豊かでなかった時代を生き抜いてきた人たちは長寿だ。(2017.2.26)