~プラモんモんな徒然に~

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MAD MAX

2015-07-31 | シネマレビュー・エンタメ

 

MAD MAX 

FURY ROAD

 

 

ようやく熱量も下がったし(都合3回鑑賞)覚えかき兼ね、アートブック(日本版メイキング本)出版記念として・・・

 

マッドマックスに関しては1作目原理主義な私だったので観るまでは正直云って全く期待値が高くなかった新作でした。しかし、ここまで尋常でない映像表現だけで引っ張る力量は流石としか云えずミラー監督は今年70歳を迎えても衰えなど微塵も感じさせないのは感心するばかりです。

何とプライベートでもロックはよく聞いていると公言してます(驚)

ミラー監督はER(救急救命)医師の経験がある異色の経歴を持っています。オーストラリアは広大な土地故にその殆どが高速ハイウェイで繋がっていますので忌まわしい交通事故が多いらしく、瀕死の患者に多く携ったことがミラー監督の作品感に影響を及ぼしているのは間違いないと思います。心理学に関しても造詣が深く人間の破壊や暴力への快楽的な矛盾にとても興味があり、初期作品のマッドマックスの劇中でもそれらが醸し出されているのは納得です。

しかし、今作はそれらの小難しいことは徹底的に削いでシンプルな行って帰って物語として画面に没入できる中毒性ある作品へと昇華させました。しかもパート2の世界観を踏襲しつつも全く別の仕上がりにしています。

劇中のキャラクターの背景や登場車両、世界観が撮影準備前から明確な解像度でデザイン化されているのが分かります。また、それらの事を劇中で一切説明を入れていない事が却って評価出来ます。観客はイメージとして数々のアイコンからその世界の雰囲気を汲み取る事が出来るのです。

常日頃思うのは映画とは 実体化した言葉の連続紙芝居なもの であると思うのです。故に巷にある映画で台詞で映像説明するという手法は本来映像表現としては失格ではないかとさえ思うのです。登場人物の心情や世界観を表現する台詞を徹底的に排除して観ている我々の深層心理に想起させる作品は昨今少ないのではないでしょうか。

紆余曲折あり(結局ロケはアフリカはナミビア国)準備期間が長くかかっていた所以でしょうが明確な美術デザインだけは決定されていたのでそれに合わせ脚本を進めて構築して云ったとの事です。それも今作の特徴付けになったのでしょう。

いきなり走り出しながら最後まで走りきるという手法はあまり用いられる作品は少ないように思います。駅馬車という作品がよく例に挙げられていますが、もっと原始的なリュミエール兄弟の「シネマトグラフ」が初めて世に出た時、ただ汽車が画面の向こうからこちらに向かってくる映像を観て当時の人は仰け反り驚愕した感性をミラー監督は原点的な視点で映像表現を見つめ直したのではと思います。

また、作品の女性の扱い方がフェミニズム思想に触れて想定外の論争になっていますが、そもそもミラー監督はそこまで考慮せずに作品世界感に伴った必然から終着したのだと云っています。しかもご丁寧に女性の社会的性差別問題に詳しいコンサルトに関与させてイモータンの妻達【ザ・ワイプス】の心理的な葛藤や人生観の検証をする念の入れ様です。

反面、相変わらずグロテスクなフリークス的表現や薬物中毒者や放射線障害者を想起させる表現、カルト宗教崇拝の歪さ、人肉食すら匂わせる隔離管理された砦などミラー監督の頭の中はMAD色も健在です。

劇中車はバカバカしさを通り越しているのが見モノでよくもこんなデザイン考えたなぁとしか思えない凄いモノばかり。特にデンデン太鼓のお囃子スピーカー車【ドラム・ワゴン】は異色でミラー監督も大変お気に入りだとか・・・終盤ライブでのギタークラッシュパフォーマンスを象徴するようなぶっ壊れ方しますし・・・監督曰く一種のロックオペラでもあるらしいです。

しかし、全くの はっちゃけ 映画でもなく円熟したカット割が結構いい塩梅で作品感の奥深さを際立たせています。人間ドラマとしても骨格はしっかりしていて、幻覚、幻聴に悩まされるマックスは脱走に加担する事で贖罪する切っ掛けとなり女戦士フュリオサはそのマックスと共闘していくことで新たに再生する自分へと心が救われる。バディ感ありながら劇中の主役はマックスと云うよりヒロインのフュリオサだとも云えますし、その意味で巷で云われるほどフェミニズム思想に寄せた女性蔑視など微塵も感じません。

多分、今作は色々な意味でミラー監督最高傑作であると思われます!

蛇足ながら、吹き替え版鑑賞した際、話題性を先行した配給会社の企みでAKIRAや竹内 力などが声を当てていますが私的にはそんなに気になりませんでした。(もともと台詞はほとんど無いし)ですが配給会社には今後はプロの声優のみで構成していただきたいのは本音です。因みにフュリオサの声はシャーリーズセロン専属に近い吹き替え声優、本田貴子さんです。声色は合っています。他の中村悠一さんや幡めぐみさん、千葉 繁さん等ベテラン勢も良かったです。(実は吹き替えマニアでもあるのです)

そろそろLASTなので未見な方は是非劇場の大画面で没入確認していただきたいものです。DVDなどのメディア媒体で今後発売されるからいいやっと思われる諸氏もいましょうが大画面と音響で上映しているその時代で観たということに価値がある訳でして・・・もぅ一回最後に見納めじゃ!

 

・・・扉写真はこの機会にと何かしら企んでいる筆者の最近のストックですがな。どうかなw・・・

 
 
参照文献: 【玄光社 メイキング・オフ・マッドマックス 怒りのデスロード】 【高橋ヨシキ インタビュー集】 【松竹劇場パンフレット】 より