博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2015年8月に読んだ本

2015年09月01日 | 読書メーター
戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで (新潮選書)戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで (新潮選書)感想
日露戦争からアジア太平洋戦争までの日本の行動を通じて、日本の失敗は国際社会の中での自分のポジションや行動の意味を理解せず、国際秩序を破壊する道を選んだからであるとする。アジア諸民族の解放を本気で訴えるなら、ドイツの側に立つのではなく大西洋憲章の民族自決の理念を支持する道もあったという著者の指摘は面白い。一方で著者の本意とは異なるかもしれないが、日本人が考えるような意味での現実主義は、国際社会では最終的には多くの共感を得た理想主義に敗北するという教訓も導き出せるのではないか。
読了日:8月2日 著者:細谷雄一
近代政治哲学:自然・主権・行政 (ちくま新書)近代政治哲学:自然・主権・行政 (ちくま新書)感想
ホッブズとルソーの想定する「自然状態」にはズレがあるとか、ロックの言う「抵抗権を認める」とはどのようなことを指すのかとか、行政権と立法権との関係など、言われてみればもっともという指摘が多い。政治哲学はロックの思想が名誉革命を背景とし、(本書では触れられていないが)アメリカ独立革命に影響を与えたように、哲学が実際の政治と深く結びついていた時代の産物と思っていたが、現代でもまだ政治哲学の可能性は残されているのかもしれない。
読了日:8月8日 著者:國分功一郎
風の払暁 満州国演義一 (新潮文庫)風の払暁 満州国演義一 (新潮文庫)感想
張作霖爆殺事件で幕を開ける敷島四兄弟の物語。兄弟に疫病神のごとく絡む間垣徳蔵の正体というか出自は冒頭の序章から何となく察しが付くが… 四兄弟の中ではしょっぱな馬賊団を壊滅に追い込まれた次郎の運命が気になるところ。
読了日:8月12日 著者:船戸与一
則天武后 (中国歴史人物選)則天武后 (中国歴史人物選)感想
今視聴している中国ドラマ『武媚娘伝奇』の副読本として読み始めたが、読みやすい文体で彼女の生涯と時代背景を手堅くまとめている。ドラマに関しては過去の劉暁慶主演版でスルーされていたエピソードや人物をうまく引っ張ってきてエンタメ作品に仕上げているという印象を抱いた。
読了日:8月16日 著者:気賀沢保規
中国考古学のてびき中国考古学のてびき感想
先頃退職された飯島先生による入門書、と言うよりはタイトル通りてびき。夏殷周のあたりは確かに必要最小限の事項を詰め込んだ手軽なガイドとなっている。(これ以外の時代についてはよくわからないので、その時代を専攻されている方の判断を請う。)
読了日:8月17日 著者:飯島武次
日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日感想
岡本喜八の映画版よりドタバタ感が強い。と言うより、岡本喜八版が悲壮感を数割増ししたのだろう。今度の映画版もおそらく悲壮感を強調したものなのだろうが、三谷幸喜あたりに監督させた方がより原作のノリに近くなり、岡本喜八版との差別化もできたのではないか。
読了日:8月21日 著者:半藤一利
天の血脈(6) (アフタヌーンKC)天の血脈(6) (アフタヌーンKC)感想
満鉄調査部員としてソウルに派遣された安積。穏やかな表情をした津田左右吉に三韓征伐は史実ではないと思いますよ?神武天皇やヤマトタケルなども実在したかどうか怪しいんですよ?と諭される場面が見ていてなかなか辛い (^_^;)
読了日:8月22日 著者:安彦良和
天穹は遥か-景月伝- 1 (サンデーGXコミックス)天穹は遥か-景月伝- 1 (サンデーGXコミックス)感想
架空中華世界を舞台にした武侠マンガ。日本のマンガ界ではこのジャンルは爆死を続けているので、この作品が突破口となって欲しい。
読了日:8月22日 著者:倉田三ノ路
日中関係史 (PHP新書)日中関係史 (PHP新書)感想
今までの岡本隆司氏の一般書の総まとめあるいは入門書的な位置づけ。前半の遣唐使とか元寇のあたりの話が今までの同氏の著書に見えないオリジナルの部分だが、その部分の内容は正直微妙。特に遣唐使の頃の日中関係については、近年の東部ユーラシア関係の研究を踏まえると、もっと違った評価が可能ではないか。
読了日:8月24日 著者:岡本隆司
古代末期のローマ帝国: 多文化の織りなす世界古代末期のローマ帝国: 多文化の織りなす世界感想
本文の内容もさることながら、興味深いのは、訳者あとがきに見える、古代末期という時代区分を日本や中国にあてはめてみたらどうなるのかという発想。日本の歴史に古代はなく、中世から始まるという論者もいるが、古代末期という考え方を適用すれば、やはり古代から始まると見て問題ないというこになろう。中国史の場合も、後漢末から隋唐の成立あたりまでを古代末期と見るべきということになるのではないか。
読了日:8月26日 著者:ジリアンクラーク
天下統一とシルバーラッシュ: 銀と戦国の流通革命 (歴史文化ライブラリー)天下統一とシルバーラッシュ: 銀と戦国の流通革命 (歴史文化ライブラリー)感想
石見銀山発見を嚆矢とする「シルバーラッシュ」を、戦国から天下統一への流れを重ね合わせて見ていく。信長・秀吉の金銀をふんだんに用いた自己演出が、当時の金銀の流通の増加を背景としたものだったという指摘や、海賊の役割に関する話などが面白かった。
読了日:8月27日 著者:本多博之
ナポレオン ~覇道進撃~  9巻 (ヤングキングコミックス)ナポレオン ~覇道進撃~  9巻 (ヤングキングコミックス)感想
政治家として劣化しつつあることをタレイランに見透かされたナポレオン、一族の醜聞、そして終わりなきスペインゲリラなど盛りだくさん。ダヴィッドもそうだったが、今回初登場のゴヤも印象的なキャラになっている。
読了日:8月30日 著者:長谷川哲也

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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武侠マンガ (wanko)
2015-09-05 09:52:00
おお、面白そうですねえ。
でも在外生活20年になる私には、出てくる単語の全てが日本語読みなのが違和感ありすぎて逆に読み進められない副作用があるのです。「ひょうきょく」とか「しけい」とか辛い。
Unknown (さとうしん)
2015-09-06 08:34:02
>wankoさま
確かにドラマに慣れてしまうとbiaojuとかshixiongとかの方が違和感ないかもしれません。しかし20年も現地で暮らされているのですか…

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