大木昌の雑記帳

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映画『TAP THE LAST SHOW』:すごい迫力に圧倒される

2017-06-19 10:02:01 | 思想・文化
映画『TAP THE LAST SHOW』:すごい迫力に圧倒される

17日に封切られた映画、水谷豊監督の『TAP THE LAST』を観ました。

この映画の監督でありメイン・キャストの一人として出演した水谷豊氏、この映画の構想を40年間もあたためてきた、
といっているように、相当の熱の入れようです。

今回の映画のため、水谷監督は300人のダンサーと会い、オーディションを通して選抜しました。

試写会を見た人の感想をテレビで見て、これは見に行かなければ、と思いたって見てきた次第です。

なかでも、最後の25分間の大勢でのタップは、まるで劇場で生で観ているような迫力と臨場感があった、というコメン
トに惹かれました。

タップダンスの格好良さには惹かれますが、普段あまり観る機会きかいはありませんでした。

タップダンスをテーマにした映画を私は見たことがありませんでしたので、どんなふうに仕上がるのか、興味津々でした。

正直に言うと、私は最後の25分に大勢のダンサーが勢ぞろいしてタップを踏むシーンだけを楽しみにしていました。

しかし、私の予想を見事に裏切り、オープニングにタップ・シューズの輪郭線が暗闇のなかで発光し、タップの足の動きと、
靴底の金属が床をたたくリズミカルで小気味良い音で、一気に映画の中に引き込まれてしまいました。

オープニングに続いて、この映画のストーリーの中心である、劇場最後のタップダンス・ショーに向けての、解説的なシー
ンが続きますが、これらのシー
ンは決して長すぎず、要領よくまとめられているので、退屈はしませんでした。

それが終わると、直ちにオーディションのシーンに移りますが、オーディションで応募者が披露するタップダンスだけでも
十分に見応えがあります。

そして、採用されたメンバーによる練習風景も、タップダンスの難しさや素晴らしさを存分に堪能させてくれます。

最後の、25分間の圧倒的な迫力は、到底、文字で表わすことはできないので、映画館で観ていただくしかありません。

この映画に登場したタップダンサーたちは、いずれもすでにダンサーとして活躍している人たちですから、誰が最も優れて
いるのか、という評価はしたくありません。

ただ、この映画でもっとも中心的ダンサー(5人)の中で、主人公的な存在であった、清水夏生氏のタップダンスは、私の
想像をはるかに超える迫力と芸術的な美しさを感じさせました。

清水氏のブログ(http://profile.ameba.jp/tapbeat/)の「自己紹介」によると、彼は7歳からタップダンスを始め、これ
までも多くの舞台・イベント・TV番組で活躍してきた。

彼はフランスへの留学を通じタップの新たな可能性を実感し、ダンスとしても音楽的にもより表現豊かな新しいタップのス
タイルを見いだしたという。

映画で演じる彼のタップダンスは、今まで見たこともない超絶技法の光速タップで、大げさに言うと、私は息をするのも忘
れさせるほど感動し、見入ってしまいました。

映画の中では、清水氏のライバル的存在であった濵地 正浩氏のタップも、清水氏に劣らず素晴らしく、二人の掛け合いも迫
力満点です。

監督の水谷氏は、この映画を「“ショービジネス”をしっかり描きたい」と語っているように、まさにこの映画そのものが
“ショービジネスとはこういうものだ”といことを、タップダンスを通じて観客に分からせてくれる。

今回は、あまりに衝撃的に素晴らしかったので、その良さをうまく表現できないのがもどかしいです。

その感動を興奮はいまだにずっと続いています。

私は、どちらかというと、俳優としての水谷豊はあまり好きではありませんでした。特に、『相棒』における水谷氏の演技は、
わざとらしさが気になって、一度も見たことがありません。

しかし、今回の水谷氏は、『相棒』でのいつも得意満面で気取った人物ではなく、怪我を負い、歳を取り、酒に溺れる、往年
の天才タップダンサーという設定で、とてもいい味を出していました。
私には監督としての水谷氏の裁量を評価する能力はありませんが、これだけは大いに評価したいとおもいます。

それは、タップダンサーとして出演した全員が、ダンスはうまくても、演技は一度もしたことがない人たちです。

水谷氏は、タップダンスができる俳優を集めたのではなく、まずダンスがうまいこと、その中で、演技もできそうな人を集め
たと言っています。

いわば、演技者としては“素人”に近いタップダンサーたちに、あれだけの自然な演技をさせたのは、監督としての水谷氏の
能力が優れていることを示しています。

この映画の主人公的存在である清水・濱地をふくめ、自閉症ぎみの西川大喜、父親の反対を押し切ってダンスに熱中する、お
嬢様タイプの太田彩乃、食べるのが大好きで太っちょの佐藤瑞希らを含めた5人は全て、それぞれの役割を十二分に果たして
います。

そして、この映画の最後に登場する、”その他大勢“的なタップダンサーたちも、決して端役というわけではなく、彼らを含
めて、この映画はタップダンスのすばらしさを演出してくれます。

最後に、水谷監督は、この映画の最初の1秒から最後の1秒まで、決して手を抜かず、観客を感動させ続けることに成功した
と思います。

オープニングで、暗闇の中を、タップシューズの輪郭線が夜光塗料で浮かび上がり、それが足の動きとともに目に飛び込んで、
最初の衝撃を与えたことは、冒頭でのべました。

そして、出演者などの字幕が延々と続くエンディングロールの最後の1秒まで、背後ではタップダンスの映像が流れ続けます。

これこそ、水谷氏のサービス精神、ショーマンシップの真骨頂です。

この映画を観て、どことなくフランス映画の終わり方を思い出させました。

アメリカ映画の基本は、ハッピーエンドと、映像として最後まで描き切ることですが、フランス映画はしばしば、最後まで描か
ず、観る人が想像する余地と余韻を残して終わります。

この映画でも、ラスト・ショーは大成功に終わり、観客の大拍手の場面となったに違いありません。しかし、そこは映像には出
てきません。それは、観る人が想像してください、ということなのでしょう。

また、主役の “まこと”が“ 果たして結婚して父親になって、それもでもタップダンサーとして生活できるかどうかを、水
谷演ずる”渡“に聞く場面があります。

観客としては、あの若いカップルがその後どうなるか気になるところですが、それについて渡は、最後の場面で、”まことは“
、といったきりで、言葉を飲み込んでしまいます。

この映画を観た人は、私も含めて、きっと二度、三度見たくなるに違いありません。

私にとっては、マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』以来の感動的で、楽しめた映画でした。

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