総天然色日記

映画、怪獣、プリパラなど好きなものについて色々書いていきます。

きょうドラマ放送開始!小説「初恋芸人」を読んで感じたこと

2016年03月01日 02時39分46秒 | 特撮
小説「初恋芸人」を読みました。

著者は、以前当ブログで紹介させていただいた、脚本家の中沢健さん。

作家、UMA研究家、歩く雑誌、動く待ち合わせ場所の中沢健さんに感銘を受けた話 - 総天然色日記

こちらの記事は公開後、中沢さんご本人にも読んでいただき、感想をツイートしていただけました。



こういった体験をできるのが、ブログをやっていて、自分の意見を発信していてよかったと思える瞬間です!
ありがとうございます...!

この「初恋芸人」、なんとドラマ化が決定していて、放送は今日3/1からNHKBSプレミアムにて毎週火曜23:15〜です。



主演は柄本時生さん。ヒロインはなんと、松井玲奈さん!
原作の雰囲気を表現するのにふさわしい、ピッタリのキャストです!!

この「初恋芸人」原作小説、以前から気にはなっていたもののチェックできていなかったのですが、今回ドラマ化の発表を聞いて、今しかない!と思い、楽天ブックスで注文しました。在庫は、まさかのラスト1冊!!
(原作小説「初恋芸人」は、3/18に文庫版の発売も予定されています。)

ということで、今回はこの小説の感想を書かせていただきたいと思います。

…が!!
ドラマ放送直前ということで、物語の結末には、あえて触れません。当記事は、ネタバレなし感想です!

本当はこちらの作品、物語の結末こそが作品テーマそのものであり、この作品を語る上では外せません。
テーマと結末が切り離せないので、どちらかを語ると自然とすべてを明かしてしまうことになる…。
レビューなので、本当はそれでもよいのですが、

ドラマで初めて「初恋芸人」を知る人
ドラマを観てから原作を読もうと思っている人

には、ドラマでも小説でも、物語そのものをご自身で感じて、その結末を見届けていただきたいからです。

…いち読者の身分で生意気ですが、それくらい私の中でこの作品が特別な存在になってしまったのです。お許しください。
原作のネタバレあり感想は、ドラマの放送がすべて終わったら公開する予定です。

そもそも、ドラマと原作で、結末や、それに至る展開が同じかどうかも今はまだわからないですよね。

ということで、今回は、小説としての「初恋芸人」主人公から私が感じたものを記していこうと思います。

◆◆◆

主人公の佐藤賢治、いや、呼び捨てにするのはちょっと気がひけるので、佐藤賢治さんですね。
彼は25歳の売れないお笑い芸人で、年齢=彼女いない暦。
更に、中学時代いじめに遭っていた過去があり、女性が苦手です。

お笑い芸人という点を除くと、現実にも当てはまる方は決して少なくないでしょう。
特にここ数年、おそらくSNSの普及、また「リア充」という使い勝手の良い言葉の浸透などにより、自分という人間の短所、他人と比較して己の人生の悲惨さにクローズアップして、笑いをとるでもなく、たんに自虐というか「そういうもの」として、また多くの人がステータスのように公言する文化があります。

元々が2ちゃんねるなどの匿名掲示板で主流だった文化なので、Twitterなどインターネット上のほうがそういった傾向が強いように感じますが、近年はリアルとネットの文化に壁がなくなってきているので、リアルでも若者を中心にそのようなコミュニケーションのとりかたをする人は多くなってきています。

いじめられっ子だった、異性との接し方がわからない、童貞だ、仕事も成功しているとは言えない、自分という人間に自信がもてない…と、この情報だけみると、親近感を抱く方は少なくないと思うのです。

しかし、この「初恋芸人」主人公・佐藤賢治さんのような人間は、現実にはなかなかいないでしょう。

なぜなら、彼はどこまでも謙虚で、あたたかく優しい人間で、美しい心の持ち主だからです。

まず理由のうちひとつとして、私の主観ですが、前述の自虐をコミュニケーションの手段として使う若者、普段から自虐ばかりする現代の若者には、佐藤賢治さんのような心を持っている人はあまりいないんじゃないかな、と思います。
むしろ、自分をいじめた者への強い憎しみ、自分を受け入れてくれない世の中への怒り。また、自分と仲良くしてくれない人間、多くの場合は「リア充」(人によっては異性全体)への軽蔑。そういった気持ちの大きい人が、「自虐による自分の切り売り」をやっている印象です。
なぜなら、正直に言うとこれを書いている私自身に心当たりがあり、またネットでもリアルでも周りにそういった知人が多いからです。

「初恋芸人」主人公の佐藤賢治さんの中にも、勿論そういった気持ちはあるでしょう。「バレンタインというムカつくイベント」(P5)という表現は、本文が始まって早い段階で目に入る文章です。人間関係がうまくいかず、イライラして行き場のない怒りで意地悪な気持ちになるシーンもあります。
人間なので、そのような感情があるのは当然のことです。

しかし、それ以上に彼は謙虚で優しい。
ほとんど、常にと言っていいほど彼は反省している。どんな小さな卑しい感情でも、そんなふうに思ってしまった自分を反省し、考えを改めようと努力している。
そんなところまで反省しなくてもいいのに!そんなことになったら誰だってそう思ってしまうよ…。というところですら、自分を省みています。
「〜〜(ネタバレになるため省略)を想像したら、胸がいたむ。そこで胸がいたんでしまう自分も、いやだった。」(P115)と。ここの場面は、彼の苦しみを想像してしまって、自分もつらい気持ちになり、早く救ってあげたいと思いました。

彼がそのような、常に反省するような考え方になったのは、中学生のとき、好意を抱いてすらいない女子生徒から
「佐藤君と付き合うくらいなら、死んだほうがマシよ!」(P4)
と言われたことが大きく影響しています。25歳になったいまでもその言葉が忘れられないようで、
「ボクが近づいても女性は不快な気持ちになるだけ。」(P36)
とハッキリと表現しています。

しかしそれだけではないと私は思います。
彼自身が、実はとても強い人間で、他人への思いやりの心を忘れていないからです。
これが、現代の自虐コミュニケーションの若者の大半と、佐藤賢治さんは違うと感じたふたつめの理由です。

自虐をする人間、というと、つねにネガティブで悲壮感にあふれ、近寄りがたさを感じさせる暗い雰囲気をまとっていて、こちらまでどんよりした気分になってしまう…そういった人を想像します。
しかし彼は、基本的に考え方はネガティブではあるものの、どんよりとした暗い空気はあまり感じさせません。
芸人という、他人を笑わせて楽しい気持ちにさせるという職業の影響は勿論あるでしょう。

また、それ以上に私が感じたのは、彼は「今自分がこうして生きていること」への道しるべを示してくれた存在すべてに感謝しているということです。

直接的な表現でそのような言葉が何度も登場するわけではありませんが、本文中のちょっとした表現や、言葉の端々から、とても伝わってきます。
一番わかりやすいのが、いつも仕事を紹介して面倒をみてくれる先輩芸人の山形ツチノコさん。そして、何かにつけて食事をおごってくれる高校の同級生である、橋本晃。更に「ボクに向かって初めて笑いかけてくれた女性」(P24)であり、本作ヒロインの市川さん。そして、ネタを見てくれるお客さんに、子どもの頃から自分に寄り添ってくれた、フィクションの世界の怪獣という存在。
そういったものへの感謝の気持ちです。

そのような気持ちを出来るだけ忘れずに生きるというのは、単純なことのようでとても難しく、しかし幸せに生きていくうえでとても大切なことです。

そして、小説である「初恋芸人」の主人公がそのようなあたたかい人間であると読者である私に感じさせた理由は、他でもない、著者の中沢健さんが優しい人間だからではないでしょうか。

つい最近、有名な音楽家が
「純粋で美しい音色を奏でられる人に悪い人がいるわけがない」(=表現者の性格と作品の美しさは一致するものだ)
と発言し、反論意見でTwitterが炎上したばかりです。私もこの発言は正しくはないな、と思いましたが、
「初恋芸人」主人公の佐藤賢治さんと、それを生み出した著者である中沢健さんはその限りではないと思います。
それは、この作品に限らず、中沢さんの書かれる文章からはいつもそういった雰囲気を感じるからです。

私は以前から、中沢健さんご本人のTwitterアカウント、そして中沢さんの様々なメディアでの発言を集めたbotをフォローさせていただいています。
ご本人やbotのツイートを読んでいていつも思うのは、柔らかくてあたたかくて、優しい雰囲気が伝わってくるなぁということです。

と言っても言葉の選び方や、句読点の付け方など、そういったパーツをある程度意識すれば優しい人風の文章は誰にでも書けるのでは、とも思いますが、文章から伝わってくる、文字で書かれている情報以外のもの、オーラとでもいうのでしょうか。そういうものはあると思います。

私自身、全くそんなつもりがなくても、文章から威圧的なものを感じ取られて怖がられることや、がさつな性格が見えてしまう文章だな、と自分で感じることがしばしばあるからです。
なので、そんなときに中沢さんの文章を読むと、こんな美しい心で生きていることが素敵だな、と思います。
なんだかとても大げさな表現のように見えて、胡散臭いかもしれませんが、今回初めて中沢さんの小説家としての文章を読んで、より、そう思うようになりました。

◆◆◆

そして、本作のもうひとつの魅力。
「初恋芸人」は、中沢さんの一番の専門分野である特撮ネタが、これでもかというくらい飛び出します。
「ウルトラマン」「ゴジラ」シリーズは勿論、「ガス人間第一号」「サンダ対ガイラ」「シルバー仮面」まで…。
知っている人はニヤリとしてしまうし、知らない人にもきちんと意味がわかるように丁寧な解説がされている点も、すばらしいです。



勿論それはドラマ版でも完全再現されているようで…!!
特に写真右の、「ウルトラマン」登場怪獣の、ゴモラのような着ぐるみを着た男。主人公とは別の、怪獣オタクの「ガラバン」です。
ガラバンは、小説を読んでいたときの想像のまま、いや、それ以上に「っぽい!」な姿で、とてもテンションが上がりました!



また、佐藤賢治さんの部屋は勿論怪獣だらけ!
伏せ字でも、パチモンでもない、円谷プロの正規グッズがチラチラと画面にうつる。これだけでワクワクしちゃいますね。

更に、小説「初恋芸人」は、小学館 ガガガ文庫から、3/18に文庫版が発売されるそうです。




表紙は、この物語の世界を凝縮したような素敵なイラストになっていますね。
こんなにかわいいイラストにバルタン星人の姿が描かれるとは…!
さらに、中沢さんのオリジナル怪獣「ほしくい」の姿も。
単行本の表紙は渋谷の街を歩く中沢さんの後ろ姿の写真で、作中の空気を切り取ったような印象的な表紙で好きだったのですが、文庫版の表紙もすばらしいですよね。

◆◆◆

ということで、「初恋芸人」ドラマ版は、日付が変わって今日。
23:15〜よりNHK BSプレミアムで放送開始!
毎週火曜放送、全8回です。

「新ウルトラマン列伝」と合わせて、1日で2回もTVでウルトラマンや怪獣の姿が見られます!

「火曜深夜も、見てくれよな!」というやつですね。
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