慢性疲労症候群(CFS)患者のブログ

日々あったことなど綴っていきたいと思っています
どうかよろしくおねがいします

ラプラスの魔女 東野圭吾箸  あらすじ・解説・ネタバレ等々

2015-05-15 22:06:15 | 映画・書籍等

ラプラスの魔女   東野圭吾著
角川書店  2015年05月15日 初版第一刷発行
452頁 単行本ソフトカバー   1680円(税抜)


表帯  彼女は計算して奇跡を起こす。作家デビュー30周年記念作品
    東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ

裏帯  これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。 
    そしたらこんな作品ができました。 ―――東野圭吾
    価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
    作家デビュー30年、80作品の到達点。


■前口上
これは帯勝ちだ・・・帯だけで50万部は行く・・・
帯だけ見て「また」買ってしまいましたとさ・・・
東野歴17年の私としましては、
こんなキャッチーで挑発的なコピーを打たれては、
買わないわけには行きますまい。

さてさて、
帯が雄弁に語っているように、
東野氏にとって「80作目」という節目に当たる書籍です。

そんなに出してたっけ?というのが筆者の率直な感想。
東野作品はほぼ踏破していたつもりでしたが、40作品読んだか読んでないかといったところであります。
もしかして・・・いきなり文庫からの単行本化もカウン・・・ットットット・・・・・・いやいや何でもない。


御託はこれくらいにして、
東野氏の記念碑的作品である「ラプラスの魔女」を読んでみた感想などをしたためさせて頂きます。



■あらすじ
「いつか国家元首やハリウッドスター級の大物の身辺警護をしてみたい」
ささやかな夢を胸に秘める元警察官の武尾徹は警備保障会社に勤務していた。
だが、50の声をまじかにして、健康診断で尿酸値に異常が見つかり警備保障会社を体よく解雇されてしまう。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。

その神の名は 「独立行政法人 数理学研究所」。

何やら胡散臭さが漂ってくる神だが、小説は事実より奇なり、本当に本当に胡散臭かった。

というのも、、
契約条件が「被警護者への質問は一切受け付けない」といういわくつきのものだったからだ。
だがしかし、高額報酬に目がくらんだ武尾は二つ返事で引き受ける。

武尾に課せられた業務内容は、
18歳のまだあどけなさが抜けない女性・円華(まどか)の身辺警護だ。

円華は、
独立行政法人 数理学研究所で寝食をとっているということ以外はなにも解らないミステリアスな女性だった。
武尾は、円華のボディーガードとして行動を共にするにつれ様々な奇妙な光景を目にすることとなる。
例えば、降水確率100%の東京の中にあっても、円華には雨ではなく陽が降り注ぐのだ。
何事も先回りし、厄介事をもののみごとに回避して行動しているように見える円華。
武尾はそこに洞察力や先見力以上の何かを感じ取る。


そんなどこか牧歌的で摩訶不思議な東京と、時を前後し場所を北上させて、
「2つ」の不可解な事故が発生する。

北陸と東北の温泉宿近辺で、
立て続けに硫化水素中毒死が発生したのだ。
どちらも屋外でありガスが分散してしまうため中毒死が起こるとは考えにくい。

だがだが、2つの事故には、共通項があった。
事故後に「円華」の姿が現場周辺で目撃されたのだ。

空気系大学教授や独断型刑事が試行錯誤で調査を推し進める中、
東野圭吾名物「第3の事件」が浮上した。

それは8年前の悲劇であった・・・
そこから全ては始まったのだ。



■解説
 ■ラプラスの悪魔
「ラプラスの悪魔」という言葉を知っておられるだろうか?
1700年代の科学者であるラプラスは、
「現在におけるすべての条件が解れば、後は簡単、法則に当てはめるだけで未来は予知することが出来る」と豪語した。

1700年代といえば未だキリスト教の権威は強大であり、
このラプラス博士の科学礼賛思想にカトリックは驚異を抱いた。
カトリックの重鎮にとって、世の中を規定するのは科学ではなく神でなければならなかった。
そこで対ラプラス対策のネガティブキャンペーンがカトリックにより構築され、
科学至上主義を揶揄して「ラプラスの悪魔」というフレーズが用いられるようになったのだ。

本作のタイトルである「ラプラスの魔女」は、このラプラスの悪魔をもじったものだ。
劇中の登場人物の一人「円華」は、森羅万象有象無象を読み切ったかのように行動する。
温泉街で発生した死亡事故において、
もし、自然の中で風の流れを完全に読み切れる人物が存在したならば、
ガスを一箇所に滞留させて「人殺し」をしていたとも考えられる。
それはもはや事故ではなく事件だ。
だが、仮にそうだったとして、それを証明することは出来るのか?

そんなこんなで大気科学者や警視庁の刑事が悪戦苦闘する中、
8年前の奇怪な「第三の」硫化水素ガス中毒事件が浮上するという東野圭吾としては紋切型の展開だ。


では物語のどこに、
裏帯で東野氏がいっている、
「これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった」が垣間見えるのだろうか?


 ■主人公がいない
この小説は、
452ページの中で41回も視点を変えている。

おおよそ11ページに1度、視点が変わる計算だ。
読んでいて頭がクラクラするようだった。
・大学教授
・刑事
・ボディーガード
・若き未亡人
などなど多彩な面子で三人称の主体を持ち回る構造になっているのだ。
複数人の視点から1人を多面的に読者に提示することで、人物像を鮮明にする方法論は多用されている。
だが、本作では、誰も深く描写されていないのだ。1人に深くスポットライトが持続集中しないのだ。
極論すれば、一人一人のキャラが「記号」や「空気」のように軽く扱われている。
例えば「円華」は大気のなにげない変化をつぶさに把握して、竜巻が発生することを予見することすらできる。
そのような個性豊かな登場人物も本作ではまるで記号のようにそっけなく扱われているのだ。
ここに東野圭吾の狙いがあったように思える。

 ■二つの「空気を読む」
まさに「空気を読む」事が出来る超人・円華だが、
彼女は劇中で世俗的に「空気を読む」ことの大切さを力説する。

屋台が立ち並ぶ縁日を例にとって彼女は次のような台詞を吐く。

「縁日であんなにたくさんの人々が秩序を乱さずに行動できるのは何故か?
 それぞれが思いのままに動けば必ずぶつかり合って喧騒沙汰になってしまう。
 かといって前を気にして歩いていては屋台の見世物を楽しむことが出来ない。
 そこで人々は目の前の人についてゆっくり歩くことを覚え、
 さらに列を左右に分けて、左は進行方向に進む列、右は逆進行方向に進む列と峻別した。
 こうして凡庸な人々が自然に秩序を作ることで、
 まるで原子のように個性を消してしまうことで、
 皆が角逐せず豊かにくらせる社会が生まれてきたんだ。
 そして、単体では分析し難い人間の心も、全体を眺めれば自然と同じように法則化できる」。

自然も人心も見通せる超人・円華をして、
凡庸な人々の原子化して「空気を読む」姿勢の素晴らしさを説かせているのだ。

未来を洞察する「空気を読む力」よりも、
協調していらぬいざこざを回避する「空気を読む力」が大切。

考えてみれば当然のことだ、
というのも、現在に大きな戦乱が起これば、未来を洞察するどころではないのだから。

ともすれば、現代は同質化した人々や組織は良くないものとするムキも強い。
確かに同質化が社会にとって悪癖となる側面もあるだろう。
だが、人々が個性の角を少しずつ丸くして、同質化・原子化することで世の中は上手く回っているのだ。

このように、人々が「原子化」している状態が動き始めるのを、
著者は劇中で表現したかったのではないだろうか。

それが主役不在の物語として筆者にはみえた。


 ■突出者の末路
登場人物の一人に、映画監督として凄まじい素養を有している甘粕という人物が登場する。
これがとてつもなくエグいキャラだ。
優れた映画を撮影するために妻と長女長男を硫化水素ガスで殺害し、それを長女の自殺に装う。
長女の自殺とそれに巻き込まれた妻と長男という絵図で、警察の目を欺くことに成功する。
その上で、
甘粕は、長女の自殺の原因をはじめとする家族への慙愧の念をブログにアップするのだ。
そこには、過去の和気藹々とした家族の姿と、現在の暗澹たる自分の心中が対比されており、
多くの人の心を打つブログサイトとなる。

だが、このブログに書かれた内容は全てがウソ。
長女の自殺の理由も併せて全てでっち上げ。

自分の偽りの絶望を映画化するために描いた宣伝用のフィクションなのだ。

この8年前の殺人が引き金になり、
劇中の2つの殺人へと繋がっていく。

そして、最終盤で甘粕のグロテスクな野望は円華たちによって阻止され、甘粕は自壊する。

甘粕は別段未来を予知できる能力があるわけではない。
だが、凡庸には収まり切らない突出した創造力を有していて、
世の中を大いに楽しませた後、小さいが無限に膨張する混乱の種を生む。

それを円華たちは許さなかった。

こうして、突出者が去り、
個性の角を丸め原子化した人物だけが残ったところで、劇の幕は下りる。

ようやく世の中がスムーズに動き出す下地が整った所で終劇だ。
なんとも歯がゆくもどかしいが、こういったのもありかな?



ーーーーーーーーーーーーー―
とりとめなくなってしまいました・・・
明日、修正します。。。
『本』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「10人目の男」 イスラエ... | トップ | レーガノミクスが東南アジア... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL