観劇日記

芝居(主にシェイクスピア)の感想を綴る。個人的な記録、見る予定のない人への紹介、すでに見た人へは一つの意見として。

「治天の君」

2016-12-09 22:58:13 | Weblog
10月29日シアタートラムで、劇団チョコレートケーキ公演「治天の君」をみた(脚本:古川健、演出:日澤雄介)。

激動の明治・昭和に挟まれた大正時代。そこに君臨していた男の記憶は現代からは既に遠い。暗君であったと語られる悲劇の帝王、
大正天皇嘉仁。しかしそのわずかな足跡は、人間らしい苦悩と喜びの交じり合った生涯が確かにそこにあったことを物語る。
昭和天皇の唯一の皇子でありながら、家族的な愛情に恵まれなかった少年時代。父との軋轢を乗り越え、自我を確立した皇太子時代。
そして帝王としてあまりに寂しいその引退とその死。
今や語られることのない、忘れられた天皇のその人生、その愛とは?(チラシより)

この劇団の公演を見たのは初めて。賞をいくつも取っているというので見る気になったが、いやはや驚いた。
座付き作者の脚本の緻密さ、見事さ、演出の巧みさ、そして役者たちの力量、どれをとっても素晴らしい。

大正天皇の妻節子(さだこ)役の松本紀保にも驚かされた。気品のあるゆったりした独特の声がいい。かつて見た「ワーニャ伯父さん」の
エレーナ役ではミスキャストだと思ったが、今回のこの役は彼女のためにあるかのようだ。
父・明治天皇役の谷仲恵輔は張りのある声が素晴らしい。
主役・大正天皇役の西尾友樹は人間味あふれる人物像を描き出して熱演。

病に倒れ、苦難の末、大正天皇はついに崩御。すると死者たちが次々と出てくる。父、明治天皇も登場。彼は苦しい一生を終えた息子に
どういう言葉をかけるのだろうか。観客は固唾を飲むが・・・。

悲劇の大君・・・しかし彼はなぜ皇太子を摂政にし自分の職務を任せることを頑なに拒んだのだろうか。痛々しいまでの歩行困難、発声困難、
発作を起こしては倒れる自分を客観的に冷静に認識できなかったのだろうか。それとも息子である(後の)昭和天皇の性格と政治的傾向を感じ
取り、それを危ぶんで、戦争を避けるために運命に抗おうとしたのだろうか。

原首相の暗殺はタイミングが良すぎて何やら怖い。

これはあくまでも「フィクションです」と作者は書いているが、現実にいた人物の話なので、そこを割り切るのは難しい。

役者たちがそれぞれ適材適所と言うか、ぴったりの役を演じる。こういうことは実に珍しい。
この劇団はこれを持ってロシアまで行ってきた由。彼の地ではどんな風に受け止められたのだろうか。
劇団名詐欺とか言われているらしい、この風変わりな劇団と出会えてよかった。




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