アルバニトハルネ紀年図書館

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とてもロマンチックな漫画である。

2011-05-12 | 青年漫画
  
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節電しないと大変な事になりそうな気がして、ネットをせずに漫画ばかり読んで過ごしている。

それはさておき、さいとう・たかをの『ゴルゴ13』という漫画(劇画)が私はとても好きだ。
ただし、現在SPコミックスで第160巻まで刊行されている単行本を、全巻は持っていない。私が持っているのは刊行済みの巻数の3/4の120冊ほどで、最近は『ビッグコミック』を購入して連載もリアルタイムで読んでいる。私には「『ゴルゴ13』という作品を理解している」と言う自信はないが、「どちらかといえば読んでいるほうだ」とは言えると思う。


『ゴルゴ13』がどういう漫画なのかという問いへの答えは、人によって千差万別だ。
「超一流の狙撃手が主人公の、世界情勢を絡めた、40年以上続いている劇画の傑作」というのが、大多数の人が同意してくれる無難な評価だと思う。
しかし最近になって、私は『ゴルゴ13』は「とてもロマンチックな漫画」だと感じるようになった。


「『ゴルゴ13』ってロマンチックな漫画なんですよ!」と言われても、「へ?」と首を傾げられるかもしれないが、私がそう思うようになった経緯のような物を書いてみたい。

『ゴルゴ13』の第一作『ビッグ・セイフ作戦』が発表されたのは1968年で、私はその時まだ生まれていなかった。それどころか、私は高校生になるまでこの漫画をまともに読んだことがなかった。従って、第20巻以前の作品は私が生まれる前に描かれた物であり、冷戦終結の直後に高校生になった私がこの漫画に触れ始めた頃、『ゴルゴ13』は既に70巻を超える大作になっていた。


つまり、私は『ゴルゴ13』という漫画と「さいとう・たかを」という漫画家のファンだが、いわゆる「ファン歴」というのはとても短い。貸本漫画時代からのさいとう・たかをファンが50年来のファンだとすれば、私がファンになってからの期間はその方々の1/4にも満たない。故に、私の抱いている感想や憧憬は、人によっては的外れな物に感じられるかもしれない。


私が初めて読んだ『ゴルゴ13』のエピソードは『キャサワリー』(1972年作品)だが、読んだのが小学生の時だったのでその時は感想らしい感想を抱くことはできなかった。それから十年が経過し、受験勉強をしたおかげで世界史などの知識を人並みに身に付けてから何作か読むと、私は最初、「これは世界情勢の勉強になる面白い漫画だな!」という、かなり浅はかな感想を抱いた。

その後、デューク・東郷と自称する主人公に惚れ込んだきっかけは『アクシデンタル』(1972)というエピソードで、『おろしや間諜伝説』(1978)を読んだ時に「これは実はとても悲しい漫画なんだ」と気付いた。『冥王の密約』(2000)を読んで、『ゴルゴ13』の醍醐味は神業的な狙撃や物語に織り込まれた世界情勢ではなく、「約束」を基軸にした人間ドラマなのだと私は解釈し、いずれ全巻揃えようと決めた。


私は興味を引かれる巻を買うのと並行して、SPコミックスの第1巻から順に、私が生まれる以前から描かれてきた過去の作品も徐々に買い揃えていった。そして今になって(今更というか)、『ゴルゴ13』という漫画に対して私が強く抱いている印象は、「とてもロマンチックな漫画」という物だ。

とりわけ初期の『ゴルゴ13』、1970年代後半(第30巻あたり)までの作品にはロマンチックな物が多い。
一作目から『ゴルゴ13』には「世界情勢」が盛り込まれていたが、私にとって真の見所はそちらではなく、むしろ「哀しみ」「儚さ」「切なさ」という雰囲気に満ちていて、演出はムードたっぷりで、主人公はこの上なく孤独で、作品世界は時に陰鬱で、物語は時に後味が悪く、それでも情緒豊かで、何度も読み返したい魅力に溢れている所、要するに「ロマンチックな所」だと今は思う。
それは決して「昔のゴルゴ13はロマンチックだったが今のゴルゴ13はロマンチックではない」という意味ではなく、2003年作品の『宴の終焉』のような「残酷さ」は、「今のゴルゴ13」ならではの魅力だ。そして「40年前のゴルゴ13」と「今のゴルゴ13」の違いは、「洗練の度合い」だと私は感じている。そう感じたきっかけは『大和小伝』の復刻版(1960年代の作品を採録)を読んだことだ。
『大和小伝』を読了した時、初期の『ゴルゴ13』のどこか泥臭くも情調のある演出と、『大和小伝』に採録された作品の陰惨さが私の中で符合したような気がする。


私は『ゴルゴ13』は、刀がライフルに代わり、舞台が現代に置き換わった、一種の「時代劇」なのだと思う。それも『木枯し紋次郎』のような血なまぐさく暗たんとした時代劇で、極度に無口なデューク・東郷はそれを口にしないが、依頼を遂行すると「あっしには関わりのねぇこって」の心持ちで無言で姿を消すのだ。

例を挙げればきりがないが、例えば初めて「ゴルゴ13の出生の秘密」が題材にされた『日本人・東 研作』(1972)は18節から成り、PART 1「夕やけを背に」という導入部で幕を開け、PART 18「そして…"彼"はふり返らなかった」で幕が下りる。
人が訪れ、人が殺され、しかし真相は分からなかったという物語の全てがロマンチックなのだ。

そもそも「漫画の感想」というのは結局は主観に過ぎないのだが、「『ゴルゴ13』はロマンチックな漫画だ」ということが書きたかった。


トップの画像は『2万5千年の荒野』(1984)が採録されている第64巻。一月ほど前に知人に貸したら、「すげえ面白かった! これって今まさに福島原発で起こってることじゃん! ラストのたばこに火をつけてあげるシーンは最高だよ!」と大絶賛された。


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