アルバニトハルネ紀年図書館

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『ゴルゴ13』第158巻/さいとう・たかを

2010-10-22 | 青年漫画
  
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先月出た最新刊。表題作の選び方に何か意図的な物を感じてしまう。


『ダーティー・ウイング』。
シャルルロア、ベルギー。国王に仕える伯爵は、世界最高峰の鳩レースに出場させる王室鳩を完成させた愛鳩家(あいきゅうか)に、エキプ・ロワイヤル(王室チーム)を名乗れと提案する。
かつての師匠に放り出された、血統種を持たない金の亡者は、遺伝子ドーピングで育てた鳩を放つ。その情報をつかんだ伯爵は、汚れた鳩の優勝を「阻止」してくれと、奇跡を起こす男に依頼する。
時間との戦いの中、男は機内で詳細を聞きながら、長距離鳩が発達させている筋肉の違いを指摘し、風と鳩の飛行速度から一瞬で狙撃点を計算し、飛行機の針路を変えさせる。
男は「霧の中でも見えるスコープがある」と言い、レースではオランダの名も無き愛鳩家が優勝する。
伯爵は貴族の習性で「射殺」という言葉を使わず婉曲に頼んだと解釈した愛鳩家と、国王からの信頼を取り戻したい伯爵は和解する。
2005年1月作品。
短期間とはいえ「愚かな総理」が選出されてしまったことで「鳩」という字にすっかりマイナスイメージが定着してしまったけど、「鳩」というのは人類のパートナーであり、そのレースは高貴な物なんですよ!
そして人間の欲望の風の中ではばたき続けている。



『戦場に漁(すなど)る者』。
日本時間二〇〇三年四月九日に制圧されたイラクの首都バグダッド。旧独裁政権は崩壊したが、一時的な無政府状態は略奪を横行させ、二十万点に上る美術品・文化財が盗難、破壊されたと伝えられていた。
イラクとは深いつながりがあり、その国の政府がイラク派兵に反対したフランスから出向しているユネスコ職員は、祖国を捨てたアラブ人が設立したNPOの仕事を手伝う。美術品の保護に一二〇万ユーロの寄付を申し出た匿名の会社社長は、盗難文化財の取引に、自分たちの人間を一人同行させたいという条件を出す。
略奪品の買い手と売り手は、かつて国を捨てた兄と、反体制派の子として残された弟として再会する。財宝はイラク国民のものだという互いの主張は、国民に自国に誇りを持ってもらうシンボルとして返還されるべきだと言う兄と、支配と搾取からの解放に使うべきだと言う弟という根底の部分で大きくすれ違っており、その関係は修復不可能だった。アメリカ主導の"日本型"民主化が可能だという目論みが外れ、イラクの反米勢力の変化を憂慮する者たちから依頼を受けていた男の銃弾は、再び兄弟を引き裂く。
NPOには大量の略奪文化財の所在が知らされるが、弟を亡くした所長がセンターに顔を出すことは二度となかった。
2004年7月作品。



『消滅海域』。
尖閣諸島付近の海域。日本のEEZ(排他的経済水域)を侵している中国の警備艇が、逆に日本の船を、中国の海域で勝手な海底調査をするなと砲門を向けて威嚇していた。中国船は小日本(シャオリーベン)の輩共はこの尖閣諸島に釘付けだとほくそ笑む。その間、海洋開発局のエリートは、沖ノ鳥島を「消滅」させる作戦の準備に取りかかっていた。
小笠原諸島最南端では、船上の海洋局長が、浸食からコンクリートで守られている沖ノ鳥島を島ではなく単なる「岩礁」だと癇癪(かんしゃく)を起こしていた。今から行う作業は共産党の了解を得ていないと諌(いさ)める部下に、海洋局長は自分は「領土拡張特別賞」を受けていると勲章をひけらかせ、日本の深海掘削研究船が見ている前で作戦を強行する。
日本の採掘研究船には、その男の行動に関与するなと命じられている自衛官が乗っており、その謎の自衛官は船長に船を固定してスクリューを逆回転させ、海流を変えろと命じる。そうしなければ沖ノ鳥島が消滅すると。
小日本に作戦を察知されたと、逆上した海洋局長は誘導機雷で島を爆破しろと命じる。しかし自衛官はあの船はただの不審船で中国だという証拠は何もないとライフルを構える。波間で動く機雷の二センチしかない先端を狙撃され、海洋局長は正気を失いこの手で島を吹き飛ばしてやると叫ぶ。迫撃砲のシートを払った弾みで彼の大切な勲章が襟から外れてしまい、本国からは彼を中国共産党から除名するという通達が届き、不審船は去って行く。
霞が関の内閣情報調査室は、中国の「消滅海域計画」を撃滅したという報告を受け、情報がリークされた十五時間前に彼がタイにいてくれた幸運に一時の安堵をする。
2004年12月作品。



お薦め度:★★★★☆
リイド社がふざけてこういうセレクトになったのではないかと、ちょっと怪んでしまった。
もちろん私はさいとう・たかを先生ご本人にお会いしたことはありませんが、聞く処によるととても陽気で楽しい関西人だそうです。
我々小市民は政治家の言動や隣国の態度にいちいち腹を立てるけど、国籍も本名も分からない男が主人公の劇画を40年以上描き続けている作者は、むしろ時勢を達観している。問題意識を持たないことと、怒りをあらわにしないこととはイコールではない。
新聞を読んだりテレビを見たりして「むかつく!」「許せない!」などと負の感情を抱いてしまう自分はまだまだ青いと思ってしまう。「つまり大局的に見ればこういうことだよね」と俯瞰(ふかん)できる境地に立てるから、さいとう・たかをは偉大で、『ゴルゴ13』は常に名作なのだ。

「ゴルゴは日本人なのか?」という論争の根底にはおそらく「日本人であってほしい」という願望が存在する。世界で最も臆病で最も優秀な男は己のルーツを探られることを極度に怖れ、タブーを犯した者に有罪(ギルティ)の判決を下し、容赦なく排除する。
その力を手に入れれば世界を思いのままにできる男が日本人であると描くことを、寛容ではない今の世界はまだ赦してくれないだろう。


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2 コメント

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Unknown (存在しないIDです)
2010-10-22 21:15:13
鳩はアルカイダの友達の友達なんかでもありませんしねw
 (Wrlz)
2010-10-23 13:39:28
>存在しないIDです 様

ぼくは鳩をもっとかわいがろうとおもいました。

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