アルバニトハルネ紀年図書館

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『群青シネマ』第1巻/都戸利津

2010-01-25 | 少女漫画
 
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まだまだですね 君たち
もっともっと全力で
「今」を楽しみなさい


時は1961年(昭和36年)。四国の全寮制男子校、徳誠堂(とくせいどう)高校の寮で同室の、成績優秀なのに悪さばかりしている、栄朝日(さかえあさひ)、里見たまき(さとみたまき)、弥方京一郎(やかたきょういちろう)が織りなすLast Summer Cinema。
すごくすごく、ものすごく好みです! 高校生活最後の夏に、なにかせずにはいられないと精一杯の青春を生きようとする高校生、そんな大好きな要素満載のお話であるだけに、同じような空気が感じられる『青春攻略本』(あきづき空太)と同時期に刊行されたこのタイミングがほんの少しだけ残念です。あちらは『LaLa』でこちらは『別冊 花とゆめ』ですが、出版社が同じなので(白泉社)、「同時期に同程度のキャリアの新人さんが共通する部分の多い作品を描く」というかち合いをもし可能だったなら回避して欲しかった。それでもこの作品は大好きですが。

ある夜、朝日とたまきと弥方の悪ガキ三人組は、校長室に忍び込んである物を探していた。東京の大学の研究室に行ってしまった、いつも自分達を驚かせてくれた大好きな水野先生が二代目校長の写真の裏にあらかじめ隠しておいた伝言、そこには「たまき君 入賞おめでとう」と書かれていた。それはたまきの書いた小説が賞をもらい、雑誌に載った事へのお祝いの言葉。東京に行った3か月前からたまきの入賞を先生が信じていてくれたと知り、遠く離れても自分達を驚かせてくれると、たまらなく嬉しくなってしまう三人。

毎日を全力で過ごしている三人、それでも物足りなくて落ち着かない。1回でいいから自分達も水野先生をびっくりさせてみたいと言い出す朝日。夏休みになっても毎年寮に残る三人は、掃除当番の最中に先生が資材室の鍵を掛け忘れるのを見て、自分達には手の届かない贅沢品である8ミリシネカメラを見付ける。

当時は最新の技術だったそれに三人は高揚し、水野先生の研究室のある南暮山大学で学生自主制作映画祭を開催しているという新聞広告を見た朝日は、先生を驚かせる方法を見つけたと、息を切らせて部屋に戻る。たまきの書いた『夏日の堰(かじつのせき)』を脚本に俺たちで映画を撮ろう!

弥方のずる賢さでまんまとカメラを借りられた三人は、たまきがそこをイメージして書いたという朝日の実家を使って早速、撮影を始める。締切まで時間もなく、映画作りを理解する前に始めなくてはならない手探り状態だが、「何とかなるさ!! 俺たち3人なら!」と楽観的に笑う朝日。
いつも自分達が遊ぶ部屋が、映画の舞台になる。現像に出したフィルムが帰ってくるのが楽しみで仕方ない。そんな楽しい計画が幕を開ける。

軍人の恋人の写真として、小道具に「若い女の人が1人で写っている写真」が必要、朝日は弥方の婚約者の羽智汐(はちうしお)さんに、1人で着物で写っている写真の提供をお願いする。あまり関係ない人を関わらせるなと難しい顔をするたまきに、「弥方の婚約者だぞ?」と答える朝日。
4日後、試し撮りしたフィルムが現像から返ってくる。
「別の世界みたいだ…」「俺たちの創る世界か」と、胸が痛くなる程、魅了される三人。

夏休みに入り、秘密の計画は本格始動する。フィルムを買う資金のために、問題を起こさないような形でバイトを始める三人。映画用に脚本を書き直したたまきは、弥方の「お前きっとセンスあるんだよ」という言葉を聞いて、水野先生に言われた言葉を思い出す。


自分達にはもっともっと、いろんなことができるのかも知れない。そんな群青の空がずっと続くと思っていた。しかし自分達を取り巻く状況は容赦なく先へ進み、たまきは母に秋からイギリスに来いと命じられ、婚約者のいる弥方は既に将来を決められていて、思い描いた世界を撮ったはずのフィルムはことごとく撮影に失敗していた。
戦後の混乱期に大勢の人に恨まれながら大きくなった家で何不自由なく育った弥方は、自分には家を継ぐ責任があり、婚約者の汐さんもその責任の一つだと言う。
「俺には好きなものも好きな人も将来やりたいこともなくていい」。そう、自分を慕う朝日の妹に弥方が言った言葉を、立ち聞きしてしまうたまき。

弥方の、バイトなんかしていないという嘘がばれる。当時1万円近くしたビューアーとスプライサーも無かったと最初から気付いていたが、朝日が公正な奴だから言えなかったと。
「嘘ついて映画作っても 弥方は秘密抱えたままじゃないか!!」と朝日が弥方をひっぱたいてしまうシーン、悲しすぎて泣けた。たまきが言えずにいた、イギリス行きを打ち明ける。バラバラになってしまう三人。
"俺たち"なんて押しつけだったと、弥方に少しでもお金を返そうと自分を責めるようにバイトを増やし、過労で寮の玄関先で倒れてしまう朝日。たとえ事故でも問題を起こしたと、取り上げられそうになるカメラ。そこへ現れる、対応について話すのはもう少し彼等が落ち着いてからにしませんかと言ってくれる、東京からなぜか戻ってきた水野先生。


久しぶりの声の主は
全力で進む道を見失って不様な俺たちが
今 一番会いたくて
一番会いたくない人だった



SCENE 1見開きカラー(『別冊 花とゆめ』2009年8月号)



お薦め度:★★★★☆
楽しさと切なさが絶妙なバランスで同居していて、胸一杯。何度読んでも涙腺がゆるむ。
この続きはまだ別花には掲載されておらず(3月号から再開)、先はわかりませんが楽しみです。次巻で完結のようです。


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