アルバニトハルネ紀年図書館

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『ACONY』第1巻/冬目景

2009-07-12 | 青年漫画
 
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永らく単行本化が待たれていたという冬目景の『ACONY(アコニー)』。この度第1巻を買いました。『アフタヌーン』2003年1月号から2006年8月号掲載分を採録、単行本化は2009年3月です。
…打ちのめされました。連載されていたのは『ハツカネズミの時間』と同時期ですが、こちらの方が断然好みです。もともと私は「言葉」で漫画の魅力を伝えることなど不可能だと思っていますが、『ACONY』の作品世界の魅力は尚更です。これは実際に読んでもらわないと絶対に伝わりません。それでも一応、記事としてご紹介します。紹介せずにはいられません。

第1巻は14ページに渡るカラーの導入部分と「アコニー百面相」と題したイラストで幕を開けます。これを読んだ(見た)だけで冬目景の世界に引きずり込まれ、震えます。紫色の髪、青白い肌をした少女「アコニー」。眠らず食べず歳もとらない彼女。永い時間の中でいつしかモノではなくなり、ザシキワラシとなった日本人形。

物語は13歳の中学生、空木基海(ウツキモトミ)が祖父の暮らす「しきみ野」アパートに引っ越してきて、自分と同い年のハーフらしき少女アコニー・ランチェスターと出会って始まります。昭和の初め頃に竣工された、築80年は経過していて、そこだけ時が止まっているかのようなアパート。そこで模型絵師として生計を立てている祖父。怪奇小説家のパパの仕事の邪魔をしないように廊下や階段でねずみと遊んでいて退屈しているアコニー。モトミが挨拶すると、彼女は笑顔でねずみを差し出した。

永らくアメリカのマサチューセッツで暮らしていたアコニーは空木のことを「モトミ」とファーストネームで呼ぶ。
再開発の対象となっているのに取り壊されないしきみ野アパート。モトミが管理人に挨拶に行くと誰もいないのに指示を書いた書き込みが現れ、お茶が二人分出て、気付くと減っている。いずれ慣れるという祖父。
「幽霊が出る」という雰囲気をモトミの信じられない、そうかもしれないという視点でとても不思議な感じで描いていて、酔わされます。
廃屋のようなこのアパートに新しい入居者が来たのは初めてだと言うアコニー。このアパートが取り壊されないのはタタリなどではなく、「このアパート自体が 壊されるのを嫌がっているからよ」と言うアコニー。

自分はもう死んでいるというアコニーの言葉を信じることができないモトミ。大人でもなく子供でもなく、13歳でもうすぐ14歳という中途半端な年齢のモトミ。モトミがゾンビなのかと言うとそれ一番言われたくないとアコニーは激怒する。学校にも行かずアパートの敷地からも出ず、常に退屈しているアコニー。両手にハサミを持ち、ねずみと戯れコウモリを飼い、自分に馴れ馴れしくするアコニーを怪訝に思い、彼女の「暇潰し」に振り回されながら、いつしか友達になる二人。アコニー自身も、モトミと出会ってから自分はこのままの姿で歳を取らないのだと改めて思い知るようになる。でもママがいずれ帰ってくると信じているのでずっとここで暮らしている。

仕事人間のモトミの母は、父と離婚してからその仕事人間ぶりに拍車がかかる。母の仕事が具体的に何なのか未だに理解できないモトミ。珍しく帰国した母は医療関係会社の開発調査部から依頼を受ける仕事だと言う。そして40年くらい前にこのアパートに敷島(シキシマ)という男は住んでいたかとモトミの祖父に訊く。

やる事ないし遊び相手もいないし退屈だと言うアコニーにモトミが親切心から中一の時に使っていた教科書を渡してやると、彼女は自分はこんな姿だけどもう23歳だと、今後一切話しかけるなと子供のように逆上する。
何かがしたいんだとモトミが下手に出ると、十年間外に出ていないアコニーはどこかに連れて行ってくれと言う。フードで目立つ色の髪を隠し、モトミの通う「日本の学校」を見に連れて行ってもらうアコニー。明らかに普通じゃないのにたまに普通っぽいことを言うアコニー。このヘンな女の子との距離をどう測ったらいいものだろうと戸惑うモトミ。


ユーレイが出ると聞いてアパートに押し掛けてくるモトミの友人達。ミリタリーオタクで、模型絵師のモトミの祖父と「濃い」会話ができる牧野さんを女子中学生にしておくのは惜しいと言うお祖父ちゃん。その様子を見ていたアコニーは、すねているのか羨んでいるのか、「お友達が多くてよろしいことね」とモトミに突っかかる。

またどこかに連れて行けと言うアコニーに付き合うと、行き先はお祖母ちゃんの墓参り。長いこと来られなくてごめんなさいと謝る彼女を見て、モトミは母の言っていた、不老不死の研究をしていたシキシマがアコニーの祖父なのだと気付く。
きみのお母さんがあそこに住んでいたのは嘘じゃなかったから信じるよとモトミが言うと、アコニーは自分が一度、爆発事故で死んで生き返ったいきさつを話し始める。
他人が信用できないのにモトミには過去を話すアコニー。こんな姿だけど自分は23歳だと、ガキに説教されたくないと、子供扱いされるたびにアコニーはモトミに突っかかる。社会性はなく、精神年齢も13歳で止まっているんだとアコニー。
眠らないはずのアコニーが突然倒れるが、父のハッシュは3カ月に一度くらいこうして昏睡状態になるだけで心配はいらないと言う。

万年筆でペン入れされた独特のタッチから、時が止まったままのような、どこまでが現実なのか分からなくなるような空気、どこか猟奇的で孤独なアコニーがモトミと打ち解けるようになる過程まで何もかもが素晴らしすぎます。カラーページで始まり、巻末に採録された『アフタヌーン』掲載の予告漫画まで「一冊の本」としての完成度もものすごく高く、隅から隅まで堪能しました。
私は『ハツカネズミの時間』全4巻と『僕らの変拍子』『ZERO』しかまだ読んでないのですが、冬目景の他の作品も読んでみます。特に『イエスタデイをうたって』が気になります。


お薦め度:★★★★★
私には文章でこの漫画の魅力を伝えることはできません。どうか買って読んで下さい。
「ストーリー」を追うというよりも、ひたすら冬目景の世界に「酔いしれる」のが正しい楽しみ方だと思います。
「買って良かった」と心から思います。滅多に付けない5つ星。


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2 コメント

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Unknown (Jing*3)
2009-07-12 14:44:13
おお、買われたのですね。
『ACONY』、なかなか続きが掲載されませんけれど、これも面白い一本です。
ちょっと『LUNO』と被るところもあるんですけど、あ、『LUNO』も放置状態ですね、今は(苦笑
酔いしれました (Wrlz)
2009-07-12 15:27:50
>Jing*3様

素晴らしかったですよ!
冬目景の本当の魅力がやっと分かったような気がします。
もう褒め言葉しか出てこない。名作です。

『LUNO』も第1巻で止まってますね。
『ACONY』は第2巻が8月に出るようで、今から楽しみです。

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