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『星を継ぐもの』第1巻/星野之宣・J.P.ホーガン

2011-11-29 | 青年漫画
 
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ローマ神話の知恵の女神に因(ちな)んで
この星を"ミネルヴァ"と名づけることを提案したい。
太陽系には
我々のまったく知らない歴史があったのだ---!!

(ヴィクター・ハント)


 今、私には夢中になって読んでいる、1970年代のSF小説を原作とした漫画と、その原作小説がある。実はこの、星野之宣による、ホーガンの小説を漫画化した連載が『ビッグコミック』で始まった時、私はまだ原作の小説を知らなかった。私はビッグコミック誌上での連載が先へ進むごとに、この星野之宣の漫画にのめり込んでいった。私は「自分は原作を未読だが、なんと面白い作品だろう」という興奮と感動を覚えた。しかし、原作に触れたことで、私はこの漫画の魅力を半分も理解していなかったことを思い知った。

 先に原作を読んでいる昔からのファンと、私のように漫画で知ってから原作を読んだ者とでは、この星野之宣による漫画に対して抱く感想は大きく異なるかもしれない。こう書くと以前からの原作のファンには怒られるかもしれないが、私はこの漫画を、「見事」というありきたりな称賛を遥かに凌駕(りょうが)している傑作だと思う。一言で言えば、原作に忠実でありながら、原作の魅力を何倍にも増幅させている、「小説の漫画化」を超越した名著になるだろうと感じている。星野之宣には、この作品を「原作の通りに漫画で再現」するつもりなど、はなからなかったのだ。

 まず、この漫画は、原作の構成を素晴らしく大胆に変更している。それどころか、物語の筋や、謎が明らかになる過程までもが激しく変えられている。原作が描いていない部分を斬新な視点から補完していながら、原作の多くの箇所は容赦なく切り捨てられ、逆に原作にはない内容がおびただしく付け加えられている。そして原作の発表から三十年が経過した、現在の人類の価値観に沿う切り口で物語が綴られている。三十年前に思い描かれていた「五十年後の未来像」は、2011年の今日想像される「五十年後の未来像」に、巧みに、しかしあくまで原作に忠実に置き換えられている。最大の魅力は、星野之宣の圧倒的な演出と表現力を以って「視覚化」された、宇宙船のデザインや外惑星(の衛星)に人類が建設した基地などの、作品世界の姿だ。

 原作があり既に「結末」が定まっている作品なので、ここで粗筋に言及するのはやめておく。しかし、我々の住む「地球」という惑星が、天変地異とも呼べる多くの自然災害に見舞われている今、この傑出した作品が新たな形で発表されている意味はとても大きいはずだ。

 原始人類も、現代の我々も、地球の環境を変える力は持っていない。有史以前から人類は、自分たちの住む惑星の気候や恒星系の周期的・突発的な変化に翻弄され、文化や人種の違いなどに由来する争いで、何度も滅亡の危機に瀕してきた。しかし、ホモ・サピエンスは、環境に対して決して敗北することのない種であり、自分たちを滅亡させる脅威をねじ伏せて生き延びる能力を、遺伝的に「継承」している。そればかりか、我々地球人類は、この恒星宇宙を、正当な遺産として受け継ぐ権利を持つ種である。そのように考えることは、人間の「傲慢さと攻撃性」の表れなのか、それともそれこそが「人類の英知」と呼ばれる物なのか。私はそのどちらでもなく、それは「希望」ではないかと思う。



お薦め度:★★★★★


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