アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『ゴルゴ13』第149巻「ピンヘッド・シュート」/さいとう・たかを

2010-07-06 | 青年漫画
 
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ



表題作ではなく、巻末の『ピンヘッド・シュート』の紹介です。
こういう一見して地味なエピソードが私は大好きです。


9・11テロの翌年、新疆ウイグル自治区。列車で大勢の中国人がやってくるウルムチの駅。大量の漢民族を移住させて民族の混合を進めてやがると街行く人々が悪態をつく中、東洋人の狙撃手はホームに降りると同時にイスラムの起こした爆破テロに巻き込まれそうになるが、難を逃れて姿を消す。

そして貧困の村では、自治区の教育部幹部になったウイグル人の青年、アッシジが、村人と共に額に汗しながら学校の建設をすすめていた。近代的な教育を身に付けた子供こそがウイグルの未来を担うと説きながら。
校舎は完成し、壇上で演説する共産党幹部は、イスラム教の信仰は認めているがテロを容認する教育は認めない、中世のような薄汚い生活から近代化された生活になったのはすべて共産党の功績だと威張り散らす。怒れる民衆を、アッシジは、コーランには「汝の主のためには耐え忍べ」と書かれていると、たしなめる。

Gは、抵抗運動をしていた夫を中国軍に殺された、養蜂家の未亡人に頼み事をする。

車内で密会する、ウイグル人でありながら共産党の飼い犬になったアッシジと、党幹部。昨年のアメリカのテロは絶好のタイミングだったと。世界の強国がテロを力で制圧する大転換が起こり、イスラム系住民の分離独立運動は、中国共産党により「東トルキスタンテロ活動」と規定された。

北京で民心掌握術を教えられたウイグル人の「貧民の英雄」は、ひどい肩こりの治療のために中国鍼(はり)の権威の病院に通院する。劇的な効果を要求する患者に応え、医師は?門(あもん)に鍼を刺す。



ウイグル人の手で殺すことも変死させることもできない男を、ゴルゴは「完全な事故死」で葬る。

現場に駆け付けた共産党幹部は、どう疑ってみても事故死だと舌打ちし、時間をかけてウイグル人の独立の芽をつみとっていくしかないとため息をつく。回収された蜜蜂の巣箱に、未亡人は弾痕を発見する。

2002年8月作品。



お薦め度:★★★★☆
この短いエピソードの見所は、実は新疆ウイグル自治区の分離独立運動でも、神業的な狙撃でもありません。
派手さはないけど、『ゴルゴ13』という劇画の魅力の一つはこういう事だと私は思っています。まず、あくまでもフィクションとして淡々と事実を羅列する。現状を痛烈に皮肉ることはあっても、何が善で何が悪なのかという価値観は決して押し付けない。
作品の中では、他民族を弾圧する中国共産党にも、弾圧に対してテロで報復するウイグル人のどちらにも、「正義」も「大義」も無い。ゴルゴは標的を排除することを生業とするビジネスマンであり、「善悪」よりも「真実」を重んじるテロリストである。
紛争とも飢餓とも無縁な日本に住んでいながら、マスメディアの報道、あるいはメディアが報道しないことを以て、「弾圧されているウイグル人は可哀想だ。中国共産党の圧政は許せない」と盲目的に感情移入することが本当は一番愚かなことではないでしょうか。

まあ、マンガですから面白ければそれでいいんですけどね。
先日発売された最新刊第157巻は、アフリカの貧困と高性能化した携帯電話のエピソードである『コルタン狂想曲』他、全3編。



にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へにほんブログ村
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ ゴルゴ13へゴルゴ13

【検索用】ゴルゴ13 さいとう・たかを 149
ジャンル:
ウェブログ
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『花とゆめ』2010年15号 | トップ | 『別冊 花とゆめ』2010年8月号 »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (存在しないIDです)
2010-07-06 18:01:01
おお、149巻なんですねゴルゴは今。
読み手にいろいろ考えさせて、かつ娯楽作品っていうの、自分もモノカキの端くれとして非常に憧れます。
説教臭くないのがゴルゴの魅力でもあるのかな、なんて思います。
157巻 (Wrlz)
2010-07-06 21:20:22
>存在しないIDです 様

よく見ると校舎に五星紅旗っぽいのともう一つ、国旗が2種類掲げられています。


現時点での最新刊はおととい出た第157巻です。
ケータイってそうだったのか!と苦笑いしてしまいました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

あわせて読む

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。