アルバニトハルネ紀年図書館

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『草の上 星の下』/谷川史子

2011-09-10 | 少女漫画
 
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そう思ったらたまらなくなって
お父さんがさみしそうなのがいやで
悲しくて苦しくて仕方なくて
どうしていいかわかんないくらい辛くて
手を離せないのは
私の方なの…

(智)



 私の本棚の一角に、「谷川史子コーナー」ができつつあります。ここだけ、優しい空気と時間が流れている。

『草の上 星の下』(コーラス2007年10月号 別冊ふろく掲載)
朝子が久しぶりに姉の夢を見た日の夜、嫁いでスイスにいるはずの姉が突然、実家に帰ってくる。父も母も、姉に突然の帰省の理由を訊こうとはせず、家はかつてのように、体が弱かった姉を中心に回り始めてしまう。そして恋人の佳春(よしはる)と口論していて朝子の口をついて出てしまった、姉を傷つける言葉。それを通りがかった姉に聞かれてしまう。
小さな頃によく一人で泣いていた川沿いの草の上に朝子が座っていると、昔のように姉はたいやきを手に現れてくれ、怒るのでも叱るのでもなく、子供の頃から抱いていた本心を打ち明けてくれた。
夫や自分と向き合うために姉がスイスに帰った翌朝、朝子は祈るように姉の幸せを願って泣き、今度は自分が佳春とふたりで姉に会いにゆくと、心の中で静かに誓う。


『サルビア』(コーラス2005年8月号)
3ヶ月前に結婚した棗(なつめ)。12歳ちがいの夫と結婚して初めての夏を迎えようとしていた頃、彼の青春時代がつまっている辞書にはさまれていた、一枚の写真を見付けてしまう。
妻は自分なのだからと、その写真を「捨てちゃおっか!!」と棗が過去に嫉妬すると、夫からは「なんで?」と、心底驚いたような答えが返ってくる。そして棗は、昔の彼氏と再会し、楽しかった思い出に対する感謝の言葉を聞く。
過去があるから今の自分があるのだという当たり前のことを理解でき、棗は夫の「生きてきた全部」を全部まとめて愛するからと告げ、サルビアの思い出のことだけは「おひえてひゃんなーい」といたずらっぽく笑う。


『プリズム』(コーラス2006年12月号)
物理の先生を、最初の授業の時から好きだった木村柚寿子(ゆずこ)。自分を「そこ」としか呼んでもらえない柚寿子は、ひょんなことから先生が綺麗な女性と同棲していることを知り、二人が住むマンションに通うようになる。先生の彼女と打ち解けた頃、二人が結婚しない理由を聞き、泣き出してしまう。
そして卒業式の日、先生は「そこ」でも「きみ」でもなく、「木村柚寿子」と、生徒としてではなく一人の女性として柚寿子をフルネームで呼んでくれた。恋人に真剣に向き合うと言った先生に、柚寿子は笑顔で応える。


『春が来たなら』(コーラス2007年4月号)
この最後に採録されたよみきりが、一番じーんと来た。
雪が降り積もる季節。作家の父を持つ智(とも)は、編集の小宮山くんとの仲を、父に頑に反対されていた。智は父が、自分と同じ児童文学を読み返していたのだと知るが、父のケガがきっかけで、自分が結婚したくない理由に気付いてしまう。
それでも小宮山は、智を愛する気持ちは負けていないと告げ、原稿をもらうために家に上がる。口述筆記するためのノートパソコンを手に、愛する人の父に挑み、打ち解け合い、小宮山は「待ちますよ」と約束する。ふすまの向こうで二人の会話を立ち聞きしていた智は、父が「いちばん嬉しい日」に読むと言ったあの児童文学を読み返すのを聞いて、雪が溶けるようにあたたかな涙をこぼす。



お薦め度:★★★★☆

 谷川史子先生の漫画に対しては、「本当に良い」というありきたりな感動の言葉しか出てこない。
普通に生きているだけで、苛立ったり悲しんだり、人の心というのは忙しい。誰かと衝突すれば心が乱れるし、衝突しなくともわだかまりや不満が積もってしまう。劇的な変化があって全てが変わるのではなく、「今までの日常」の延長線上に「その先の日常」があって、人生は昨日、今日、明日と続いていく。その描かれ方が「本当に良い」のだ。


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