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『星は歌う』第11巻(完結)/高屋奈月

2011-07-28 | 少女漫画
 
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願わくば
どうか君の心にも
その歌が響き続けますよう
たとえ困難な道にあおうとも
君を守り続ける
星の歌が響くよう



 最終巻です。出たのは4月、ようやく第1巻から通して読み返す。
私は描かれている内容に共感できたし、結末にも満足できて、かなりの佳作だと思う。単行本で通して読むことで新たに気付いたのは、サクヤが千広と星を見に行った晩から、翌朝に奏に諭されるまでの、第60話から62話までの運び方の上手さ。音楽(歌)を奏でるようなコマと台詞の畳み掛け方は見事だ。

作中では「人間(ひと)」を「星」に喩えているが、同時にそれ(星)は「世界」のことでもある。物語は、己の境遇を不幸だと嘆き、卑屈になったり世界を拒絶する様の是非を問う。第10巻で千広の叔父夫婦は、桜を支えると言った彼に、途中で放り投げてそれをまわりのせいにすることを「軽蔑」すると言う。「誇れる人間」とは財を成したり高い地位につくような特別なことではなく、「当たり前のように"人間"として」生きることだが、奏が「最後に笑ってられたなら勝ちだ」と言ったように、当たり前の生き方を今できていない人間を否定しているわけではない。
多種多様な人間で構成されるこの世界に於いて、そこには当然のように格差も差別も挫折も存在する。「倖せ」とは星の等級や地球からの距離ように、主観的な物でもあり、相対的な物でもある。「笑え」と教えられたサクヤが、時を経て桜と対面し、ここの星は歌うかと問うた桜に「(ここだけではなくどこででも)歌いますよ」と答える。そのことにより、桜は世界の「優しさ」を確かめられ、千広の手を離した決断(=魔法)の成功も確信する。「サクラにしか使えない魔法」という言い方は、自惚れではなく、千広の時間を奪ってしまった桜の、彼に対する精一杯の誠意でもあったのだと思う。



第60話カラー扉(花とゆめ平成22年22号)


平成22年23号表紙


第63話見開きカラー(平成23年2号)


最終話カラー扉(4号)



お薦め度:★★★★☆

好き嫌いが分かれそうな漫画だが、描かれている内容は正論である。「世界は自分に冷たい」という拒絶と否定を、「世界は優しい」という受容と肯定に変える困難に、皆が最終的に向き合う。「10代の子供の悩み」に終始してしまいそうなテーマを、世代に関係なく共感できる物語に仕上げた力量は流石だ。そこには「ありふれた普通の人間」であることが、どれほど「倖せ」なことなのかを認識せよという意味も込められていると思う。
「チヒロを倖せにできるのはサクラだけ」だと知っていると言った桜に、「世界で一番倖せにして下さい」と答えたサクヤ。この時サクヤは自分の恋は永遠に報われなくなったと捉えたが、桜の言葉は、千広の手を離すことにより彼を世界で一番倖せにするという意味だったと、最終話で明らかになる。この最後のどんでん返しは、救いになっただけでなく、作品のテーマを「きれいごと」で終わらせなかったという意味に於いても大きい。


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