アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『スヌスムムリクの恋人』上下巻/タアモ・野島伸司

2010-03-12 | 少女漫画
 
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ


野島伸司の同名の小説を漫画化した、タアモさんの新刊。上下巻同時発売でした。
仲の良い4人の父親の家庭で同時期に生まれ、一緒に育った4人の男の子達の一人が性同一性障害だったという物語を、大人になった小村直紀(こむらなおき)が、数年ぶりに再会した女性に自分の過去を打ち明けるという形で綴られます。
「スヌスムムリク」というのはムーミン谷で独りだったスナフキンの本名。心が女性だったのは4人の中で最後に生まれた野坂望(のさかのぞみ)、通称「ノノ」。重苦しいお話だけど、読後感はそんなに悪くなかった。かといってそれほど面白くもなかった。性同一障害を抱えている人が日々どれほどの苦しみの中にいるのかという現実の部分は(伝えようとしているのは分かるんだけど)あまり伝わってこなくて、相手を救うことで自分が救われたい主人公というフィクションの部分はほとんど絵空事。

直紀の童貞を奪った、インディーズのダンスユニットのナナコは自分はバイセクシャルで、体と反比例している異性の部分は多かれ少なかれみんなにあると言う。自分の彼女を次々とノノに紹介する直紀、その彼女達を採点するノノは、真実の愛は難しいと笑う。そしてセックスだってやる気になればやれると、直紀の彼女を次々と誘惑していく。バカな女達とのセックスを媒介とした関係は薄汚い、直ちゃんにくだらない人間になってほしくない、気持ちいいことなら僕がしてあげるよと。誰よりも守りたいノノを、つきはなすことしかできなかった直紀。

年上の男性教師と付き合いはじめたノノは、自分と先生には子供はできず、動物とは違って心の奥で引かれ合っていると言い出す。それが「真実の愛」だと。直紀が覚えた違和感を説明してくれたナナコは、人は自分を救うために自殺をするのだと言う。HIVに感染したナナコが自分ではなく医者を選んだことで、直紀は自分は誰かに必要とされたことがあるのだろうかと疑い始める。そしてノノを救うことで自分が救われることになるかもしれないと、ノノに手術を勧める。

リアルライフテストを始めたノノが男子校でセーラー服を着られるように直紀が全校集会で発言するシーンは、安っぽいテレビドラマのようでなんだか気に入らなかった。この漫画(というか原作)の中で一番嘘くさくて嫌いな箇所かもしれない。

自殺未遂という実力行使で親を説得して手術を受けるノノ。しかし手術を受けたいというのは希望ではなく自分の「全て」だと言ったノノは、手術を終えたタイの病院で毎晩発作を起こし、駆け付けた直紀に自分を殺してくれと懇願する。その時の自分の行動の意味を探して、4年間の放浪生活をする直紀。

雑誌掲載時に収まりきらずに描き下しとなった後半部分はかなりバタバタするので、「ノノの女の親友」が実はかなみだったという処が唐突だった。虚しさに支配されていた直紀が信用すべき「時間」が彼女で、幸福になりたいと願う心を移植しあい、いつか幸福になるという終わり方なので後味は悪くないです。


お薦め度:★★☆☆☆
タアモさんの絵は好きだし、お話もそれなりに読み応えがあった。ただ、「この作品が漫画である必然性」が感じられない。「小説をそのまま漫画にしました」という印象。
好きな作家さんに「人気漫画家の描いた作品を通して性の問題を考えて下さい」というような物を描かれてしまったのもなんだか残念。
物語も結局「綺麗ごと」を延々と読まされたような気がして、作画がタアモさんじゃなければ買わなかったと思います。
内罰するS遺伝子の解釈は面白かったです。


にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ
にほんブログ村
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ
漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ 少女マンガへ
少女マンガ

【検索用】スヌスムムリクの恋人 タアモ 上 下
ジャンル:
ウェブログ
コメント (4)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 作麻正明先生 | トップ | 『別冊 マーガレット』2010年... »
最近の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Jing*3)
2010-03-13 00:36:52
小説をマンガに、マンガを小説にするとどうしても齟齬が出てきますわな。
元の小説をマンガの作者がどう解釈したかって言うのを楽しむのも手かもしれませぬ。
私も・・・ (さっとん)
2010-03-13 06:12:10
同じくタアモさんってコトで購入しましたが
どうもスッキリしませんでした。

タアモさんの連載ものが読みたいです。
ノベライズやコミカライズ (Wrlz)
2010-03-13 12:07:47
>Jing*3様

漫画の小説化はほとんど駄作になりますが、小説の漫画化も結局、私は嫌いなようです。
野島伸司さんって検索したら元はドラマとかの脚本家のようです。
テレビドラマが好きな人には面白いのかもしれません。
原作 (Wrlz)
2010-03-13 12:09:10
>さっとん様

原作が駄作なんです。←失礼(笑)
昔『金八先生』の再放送で性同一性障害のエピソードを見たことがありますが、所々あんなノリでした。

作画がタアモさんじゃなければ売り飛ばしてます。
『ライフル少女』がすごく良かったので残念です。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

あわせて読む

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。