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『友だちの話』/山川あいじ・河原和音

2010-11-01 | 少女漫画
 
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原作: 河原和音、漫画: 山川あいじのコラボが生み出した、もう「別マって最高だよね!」と思わず叫んでしまいそうな傑作です。
私が雑誌で読んだのは『その彼、調べます』と『友だちの話』Finalの2編で、山川あいじさんのオリジナル作品は読んだことがありません。それでも「この原作に!この絵だから!傑作になったんだ!」と強く思う。

もえと英子の友情を、1話目は英子の視点から、2話目は鳴神(なるかみ)の視点から、最終話はもえの視点から描く。

1話目はよみきりとしてデラックスマーガレット平成21年5月号に掲載。
物事をハッキリと断れない家系に生まれ、あまり自分のことを好きではない英子を、もえはそういう所も含めて好きだと言う。
もえは男子から告白されると、「いいけどもえとつきあうってことは 英子とつきあうって事だから 英子をもえより大事にしてね」と必ず答え、周囲を驚かせ、引かせていた。ところがもえの条件を丸呑みすると言う、土田(つちだ)というカレシがもえにはでき、英子は自分がいても親友にカレシができたと驚く。土田はもえのことも英子のことも大事にしてくれ、英子はその居心地の良さに逆に心苦しくなり、二人の前から逃げてしまう。
今、一番淋しい思いをしているのが英子だと、土田に本心をぶつけてしまうもえ。そのやりとりの全てを聞いていた英子は、何故もえが自分を大事にしてくれるのかというその理由を知る。
そして家に遊びにきたもえに自分の弟がときめいたと英子は気付き、結婚したら英子が小姑なのだというもえの冗談に、それはアリだとお互いに楽しくうなずく。


2nd。デラックスマーガレット平成21年9月号に掲載。
自分が小さい男だったのでもえを幸せにできなかったのだという、土田の言葉を聞いた鳴神は、姉の醜い言動を日々目の当たりにして女を否定しかできずにいた。そんな鳴神に「大丈夫」と言ってくれたのが土田だった。
鳴神は、自分は土田と違って「嫌な奴」だと、親友をふった女の親友である英子へのイヤガラセを始める。しかし何度目かに突き飛ばしてやったその女から聞かされたのは怒りではなく誠実すぎる謝罪の言葉で、彼女はキレず、自分に返ってきた言葉もきちんとした日本語だった。
その子は自分がイヤガラセを通じて伝えたかったコトをちゃんと理解しており、鳴神は女性を否定しない土田の言葉の意味がようやく理解でき、自分が土田の幸せを願っているように、土田も自分の幸せを願ってくれているからいいよなと、親友の髪で遊んで友情を確かめる。


Final。別マsister創刊号(2010年10月号増刊)に掲載。
私は全3話の内、これを最初に読んだんだけど、単行本で1話目と2話目をきちんと読んでやはり良かった。
鳴神がなぜ英子を好きになったのか、英子がもえに言った「いいね」という言葉がどれほどもえを救ったのかが、この最終話でとても鮮明になった。
自分より英子を大事にしてという言葉の奥にあった物が、英子にカレシができたときに自分がやられたら淋しいことで、自分がやられて淋しいことを英子にしないようにしていただけだともえは気付く。
鳴神からの告白に、いつももえが言うのと同じ言葉で答える英子。自分のは勝手に使っていた呪文だから英子はいいんだと怒鳴り込んで、鳴神の告白はうやむやにされてしまう。
キツく、性格悪く、上からで、一緒にいると我慢させる嫌なヤツだと自分を思っていたもえに初めて「いいね」と言ってくれたのが英子だった。
「それにあの人バカじゃねーだろ バカみたいに人いいなとは思うけど だからそういう人の親友が本当に嫌な女だとは 思ってねーからオレも」と鳴神が、もえを理解し、もえからも理解される言葉を言うシーンがすごく印象的だ。
この鳴神の言葉が、この漫画に込められたテーマの全てを代弁しているのかもしれない。


『その彼、調べます』(別冊マーガレット2010年3月号)。

この読み切りも別マ本誌で読んだけど、読み返してみると味わい深かった。
友だちのカレシが浮気しているという話に巻き込まれ、実和子(みわこ)は証拠の写真を撮ってきてと懇願される。みどりのカレシであるコウキを尾行する実和子に、知らない男子が声をかけ、彼が誰なのか思い出せない実和子は、人の弱さや勝手さに心の中で冷めた独り言を言い続ける。
そしてようやくその男子の名前を聞いた実和子は、あの時何も考えずにのっけたおしぼりも、今こうして自分がやっていることも「おもいやり」なのだと言ってくれた彼の言葉で、自分でも驚くほど、うれしくなる。

カラー扉(『別冊 マーガレット』2010年3月号)



お薦め度:★★★★☆
この作品は河原和音先生の原作がありますが、私がまだオリジナルの作品を読んでいないだけで、山川あいじさんも素晴らしい漫画家に違いない。
12月号から始まる新連載『やじろべえ』が楽しみです。
巻頭に、連載時のカラー原稿がカラーのまま採録されています。水彩がとても綺麗です。


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2 コメント

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Unknown (yuyu)
2010-11-02 21:51:02
>Wrlzさん

そうそう!
そうなんです!
「その彼、調べます」大好きです!
面白かったですよネ!(^o^)
コラボ (Wrlz)
2010-11-03 11:07:48
>yuyu様

河原和音×山川あいじのコラボが素晴らしいですよね!
私はこの本に採録された4編全部が好きです。
土田と鳴神の友情も良い。
私が一番好きなのは、『友だちの話』2ndの、突き飛ばされた英子の言葉を聞いて鳴神が「キレてなかったし なんかちゃんとした日本語だった」と感じる所です。

山川あいじさんのオリジナル作品をまだ読んだことがないので、来月号(もう今月号か)からの『やじろべえ』が楽しみです。

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