アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『ホムンクルス』第14集/山本英夫

2011-01-05 | 青年漫画
  
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ


次の巻で完結する(らしい)ので、最後まで読んでから記事を書こうと思っていましたが、第14集が非常に読み応えがあったので現時点での感想を書き留めておきます。

まず、この漫画は読んで単純に「楽しい」気持ちになれる漫画ではないし、難解で作者の意図の全てをくむことも困難です。それでも名越が、作中で「ホムンクルス」と呼ばれながらも、実は「自分自身」である存在と交わす対話には引き込まれる。

名越は車に乗せた女を「心しか見ない女」である「ななこ」だと必死で思い込もうとし、女は頑(かたくな)にそれを否定する。
彼は「ブサイク」だった自分を捨て、嘘である新しい顔を手に入れ、そのことにより嘘の地位や金も一度は手に入れた。それは人の価値が「外見」で決まり、誰も「中身(こころ)」を見ようとしなかったことへの失望からだったが、自分自身であるホムンクルスは、ブサイクだった過去の自分もまた、人の「外見」しか見ていなかったと辛辣な指摘をする。
「外見(カタチ)ばかり見ていたブサイクが、内面(ココロ)を見てくれなんて… あつかましいじゃないですかぁ。」

公園に集い、今はそこからも追い出されようとしているホームレスは、かつて名越が破滅させた人々のように彼の目には映る。

名越は「存在するため」に「視線」を欲しがったが、人々の視線は顔を変えても車や金という嘘に注がれ、「外見が劣る」という劣等感は「人間として総合的に劣っている」という更なる劣等感に激化する。
その劣等感は、まず自分の外見を定めた遺伝子の持ち主である父親を否定し、次いで記号を操ることによって人々を破滅させてきた自分の生き様をも否定する。

ホムンクルスを幻覚だと断言することは名越にとって、頭蓋骨に穴を開けても人の心など見えず、何も見えず感じられない自分の全てを否定することになる。

しかし公園に居座っていた「イタさん」の、知らないはずの過去を名越は見ることが出来る。それは「ケンちゃんを歩けなくしてしまった」名越の過去(第2集)と、イタさんの過去の「後輩の右手を動かなくしてしまった」部分とが共通していたことによるもので、イタさんは「帰る場所もなく友達もいない」という名越の告白を信じてくれる。
イタさんは自分には「帰る場所」があると思い出すが、反対に名越は心を捨ててしまった自分には帰る場所がないのだと思い知る。


お薦め度:★★★☆☆

壮絶な自己嫌悪と自己否定を延々と読まされてきたような気がします。名越にとって自分とは価値がなく、他者より劣っているどころか他者を「潰して」きた忌わしい存在で、嘘を捨ててからの「自分探し」の過程でも嘘にしか出会えなかった。嘘を捨てた直後に自分に関わろうとした伊藤に対して咄嗟(とっさ)に吐いた「自分探し」という嘘を、図らずも実行することになった。
「何処へ行けばいいんだ」という叫びはおそらく「どう生きていけばいいんだ」という意味で、過去を捨てたり改竄することではなく、過去(鏡に映る自分)と向き合いそれを受け入れながら、(第二の人生ではなく)「人生の続き」を生きる方法を模索するために、大なり小なり人が抱く疑問や問いかけなのかもしれません。



にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ
にほんブログ村
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ
漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ 青年マンガへ
青年マンガ

【検索用】ホムンクルス 山本英夫 14
『マンガ』 ジャンルのランキング
コメント (4)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 手押し年賀印 | トップ | 『花とゆめ』2011年3号 »
最近の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (存在しないIDです)
2011-01-05 17:14:35
私も今日これ買いました。
すごい引き込まれました。

ウソで固めた、コンプレックスにまみれた人生。
それでも帰るところがある人とそうでない人。
重いですよね、テーマ。
最終巻が楽しみです!
この物語 (arisa)
2011-01-05 22:25:24
まだ続いてたのですね。そ
の昔ジャンプ買っていた時に
読んでました。そしてハガレンのホムンクルスと頭の中でごちゃまぜになったのもいい思い出…(えっ?)

昔のあたしは話の内容とか理解してなかった
まぁ今読んでもどうだろうなぁ
おっしゃる通り楽いーって本やないよね

またラスト迎えたら内容教えてくださいね
えっ?自分でよめって・・・ヴー
最終巻 (Wrlz)
2011-01-06 16:36:07
>存在しないIDです 様

年が明けて最初に購入した漫画の一冊がこれでした。
正月なんだからもう少し夢のある物を読めばいいのにと思い、今は他の物を読んでいます。
トレパネーション (Wrlz)
2011-01-06 16:39:04
>arisa様

連載が何度も中断していたようです。確か第7巻がなかなか出なかった。
第6巻が2005年10月で、第7巻が2007年1月で、間が一年以上空いてます。

「楽しく」はないけど「面白い」ですよね。そしてすごく上手い。
しかし私にはこの漫画をきちんと理解している自信があまりありません(笑)

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

あわせて読む

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。