アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『金魚屋古書店』第1巻/芳崎せいむ

2010-05-16 | 青年漫画
 
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気になっていたので第1巻を買いました。すごく良かった!

そこに行けばどんな漫画も見付かるという、伝説の漫画専門古書店「金魚屋古書店」を舞台にした一話完結に近い感じのシリーズ連載。
ある日、30代のサラリーマンが通りがかりに金魚屋を見付け、通勤途中にひまつぶしに買っていつの間にかたまってしまった漫画本を残らず引き取ってほしいと入店する。コレクションを手放すのかと聞き返す、店長代理の鏑木菜月(かぶらぎなつき)。彼女は、コレクションなんておおげさなもんじゃなく、もう漫画も「卒業」かなと言いかけた客の口を慌てて塞ぐ。金魚屋の妖怪のような漫画ばかの斯波尚顕(しばなおあき)に漫画の悪口を聞かせたらおおごとになるのだと。

後日自分で漫画を持って来ると言って店を去った田沢は、小学校の同窓会で20年振りにクラスメイト達と再会する。生き甲斐を見つけてアフリカに渡った同窓生が、あっちで暮らしていてイチバン辛いのは日本の漫画が読めないコトだという会話、小学生の時に借りたままだった『Dr.スランプ』の単行本を20年経ってようやく返せたとホッとする、今は主婦のクラスメイト。同窓会は、20年前に夢中で読んだ数々の漫画の話題で盛り上がり、田沢はこのわきあがる「エネルギー」のうねりは単純なノスタルジーでも、つまらない「今」からの現実逃避でもないと気付き、二次会の場所に金魚屋を提案する。
田沢が脇に抱えていた漫画雑誌が今週号だと気付き、優しく微笑む菜月。


店長である、菜月のおじいちゃんが退院して来る第3話。実力を出せない弓道部員の沢口は、土手で漫画を読みながら大笑いしている二人の男にむりやり『もーれつア太郎』を読まされ、練習がしたいならついて来いと金魚屋の地下に案内される。永遠に続くかとも思える書庫の列。お茶をいれるから好きな漫画を読んでいろと言われた沢口は『伝染るんです。』を読んでいるうちに泣き出してしまう。なんでもアリの漫画と比べて、自分は「こうあるべき」だとこだわり過ぎていたのだと。


斯波の文通相手、ピリーこと鏑木一郎が帰国する第4話。常連客のキンコちゃんと常連セドリのあゆさんもこの回からレギュラーに加わる。
少年探偵ビリーに憧れ、今年73歳になるはずの河島光広先生にお会いしてこの手製のセーターを渡すんだというビリーは、先生が昭和36年に亡くなっていたと初めて知る。帰国したら『ビリーパック』の新作を全部まとめて山程読む事ができると思ってたのにと大泣きする一郎。斯波とあゆは『ビリーパック』の登場人物の格好をして、ビリーは生きていると教えてくれる。『ビリーパック』を読んだことがないのにすごく泣けた。そしてキンコちゃんもまだ読んでいないので『ビリーパック』を今すぐ売ってくれと金魚屋から買っていく。


高級リムジンに乗った客が金魚屋にジャン・ジローの『BLUEBERRY』を忘れていく第5話。
漫画のない国に行きたいと漫画を毛嫌いしていながら『ブルーベリー』だけは買い続けていた男は、菜月の父親だった。お父さんに菜月さんを下さいと言うのではなく、『ブルーベリー』を全巻貸して下さいと食い下がる斯波。秘書がつまずいてぶちまけてしまったコーヒーから火傷もいとわずに身を挺して本を守った斯波の元に後日、匿名で『ブルーベリー』の全既刊が送られてくる。


店長の清太郎と斯波さんが諸国漫遊の旅に出る第6話。
平和で静かでおだやかな毎日を送っていた専業主婦の佐々木さんは、母から実家を改築するので荷物を引き取ってくれと電話をもらう。実家の段ボールから出てきたのはひかわきょうこの単行本。思い出の藤臣君。

静かだった毎日にさざなみが帰ってくる。


女だてらにセドリをやっている小篠あゆと、40年以上続いている貸本屋「ねこたま堂」の第7話。
歳だから店をたたむというおタマさん。雨から守られた漫画の山を前にして、あゆの相棒のオカドメはこの本を全部金魚屋に持って行くのではなく、この店から持ち出すのは会員名簿だけだと言う。



お薦め度:★★★☆☆
漫画からこんなにも沢山の物をもらってきたのだ。漫画に狂うことは素敵だ。胸が熱くなって涙がこぼれるエピソードもあった。
現在、第10巻まで出ているようですが、続きを買いたいとはそれほど思いません。「漫画の価値を描いた漫画」なんて物をそうダラダラと連載するべきではなく、本当に読むべきなのは「価値ある漫画」のほう。私は『金魚屋古書店』の続きを買うお金があったら、それで別の漫画を買いたい。
ただ、金魚屋がとても良い古本屋だということは言える。いわゆる「新古書店」にしか行ったことのない人には知っておいてほしい。古本屋(古書店)はただの「店」ではない。店頭に並んでいる本は「商品」である前に店主の「コレクション」である。客は入店したら「コレクションを見せて頂く」という真摯な態度と礼節を持ち、買うのではなく「譲って頂く」という気持ちでお金を払うべき。




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4 コメント

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Unknown (存在しないIDです)
2010-05-16 16:48:56
私はよく昔ながらの古本屋(母校の大学のそばにたくさんあります)に行くんですけれど、新古書店と違って店員さんがその本のことをよく知ってるんですよね。
そうやって店員さんとのコミュニケーションをとりながら一冊一冊買うものを決めていく楽しさ、いいもんですよね。
新古書店でその本の価値をわからず捨て値で売られているところをぱっと買ってしまうのも醍醐味ではありますが(笑
私も大好きです! (XTLITO)
2010-05-16 18:08:37
こんにちは。『金魚屋古書店』すごく良かったそうで、わたしもうれしいです!
最新の10巻は初の一冊一話という試みで、まわりではみんな「読みごたえがあった」と好評でした~。

でも、私がとくにおすすめしたいのは、この「金魚屋古書店」の前に出された前身の『金魚屋古書店出納帳(すいとうちょう)』です。

Wrlzさんの文章を読んで、うんうんそうそう、と強くうなずいてしまいました。
金魚屋古書店は、漫画そのものを描くと言うよりも、漫画を通して一人一人の人間の生き方を描く「ものがたり」なんですよね!
私もWrlzさんと同じく、読んでいて何度も涙がこぼれました。

これからも素敵なレビューをがんばってください。
それではまた。
古書店 (Wrlz)
2010-05-16 20:35:06
>存在しないIDです 様

金魚屋のような正統派の古書店のほうが私は好きですね。新古書店には新古書店なりの良さもありますが。
新刊を安く買える新古書店が実は「漫画離れ」の防波堤になっているという指摘もあるんですよ。
漫画を愛してる! (Wrlz)
2010-05-16 20:42:48
>XTLITO様

初めまして。コメント嬉しいです。
もう読んでいて涙が止まりませんでした。河島先生がもう亡くなっていると知ってビリーが大泣きするところ、本を護ってあげられなかったとあゆが泣き崩れるところ、特にお気に入りです。
漫画に対する「愛」に満ちて満ちて満ち満ちているんですよね!
実は記事に書かなかった第2話の、絵を描けずに悩んでいた実咲のエピソードが一番好きです。

『金魚屋古書店出納帳』は上下巻の2冊なので買おうかと思ってます。
『金魚屋古書店』のほうは、先に第1巻で紹介されていた『百日紅』や『サバイバル』等を手に入れて、余ったお金で買いたいです。

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