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『コランタン号の航海 水底の子供』第2巻(完結)/山田睦月・大木えりか

2009-11-24 | 少女漫画
 
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兄さん
僕は 海軍に入ろうと思うんです
僕は兄さんのように家の手伝いをすることはできそうにないから
海軍なら
父さんだって満足するくらいに現実的な場所でしょう?


『水底の子供』篇、完結です。胸が一杯になりました。
どこなのか分からない場所、見知らぬ街並みの底で、一人の少年と出会うマードック。小石で一人遊んでいた少年はアンリと名乗り、ここを案内してあげるとマードックの手を引っ張る。何か大切なことを忘れているような気がして、そろそろ帰らないとと言うと泣き出すアンリ。
父も母もいないアンリ、寂しくはないのかとマードックが訊くと、ダユーがいると孤独な少年は答える。地上には一人も人魚がいないし、人間は働いてお金を稼ぐことに忙しいから帰りたくない。「お兄ちゃんもそうなんでしょう? 本当は新しいものだけに囲まれているのは窮屈でしょう?」。

好きで資本家の家に生まれたんじゃない、昔の「悔しい」という感情を思い出すマードック。
ここはもう、泣けて泣けてしかたなかった。急速に変わり始める世の中、取り残される想い、労働者の暴動によって失われる繋がり。産業革命がもたらした不幸は、大衆だけのものではなかった。
ここはやさしくて、変わってしまうこともないからずっとここにいようと言うアンリ、アートスに託された呪(まじな)い紐を拾い上げたマードックは、自分はもっと現実的な場所へ行かなくちゃならないと思って海軍に入ったんだと思い出す。
「だけど だけど 現実的って何だろうね」と振り返るマードック。海は海で、嵐の海も凪の海もいつだって不思議じゃないか。きっと陸の上にも、鉱山の奥深くや、たぶん機械の並ぶ工場にだって不思議はすぐそこにあるんだ。「だから 一緒に帰ろう アンリ……」と少年の手を取る。


二人を水底に引き留めようとするダユー、アンリは風を封じた呪い紐の三つ目の結び目をほどいて嵐を呼ぶ。
コランタン号に助けられるマードック。しかしアンリの姿はなく、見たことのない海尉が、誰かを連れ帰るのはこれからだと告げる。
彼岸と此岸の境界を走る船「コランタン号」の本来の姿を見るマードック。ダユーから船を守るホレイシア。縮帆索(しゅくはんさく)を切れという命令に躊躇するマードックに、ドクター・プランケットはイスの伝説を思い出せと言う。「この船を沈めたいのか!」。
父親に突き落とされたダユーに同情した自分、それがキリスト教文明の正義だと言ったドクター、水底はダユーがいるやさしい場所だと言ったアンリ。マードックが振り上げた剣を下ろし、船を沈めようとするダユーに手を差し伸べると、彼女は悲しそうな、優しい目をしてアンリを返してくれた。

カンペール伯を「大変な経験をなさいましたのう」と迎える船長、ダユーに別れを告げるアンリ。子供の姿のまま時が止まっていたアンリは本来の年齢の青年の姿になり、追っ手のフランス艦は嵐にのまれていく。
コランタンが魔女の手を逃れるのを陸から見ていたナポレオンの手下、ベシャール大佐は「おとぎの王国に終焉をもたらすのは常に生身の人間だということかな 面白い」と不適な笑みを浮かべる。
カンペール伯アンリは、数百人の人間達が動かす艦を見て、「不思議はすぐそこにある」……と優しく微笑む。「海尉が海に出た時に捨てて下せえ」という言葉の本当の意味が今わかり、マードックは託された呪い紐を海へ返す。

巻末に『コランタン号の航海〜メリーウェザー艦長は猫である〜』を採録。カンペール伯を海軍省に送り届けるために上陸し、艦長不在の間にネズミに食い荒らされる備蓄の食糧。もしかしたら「艦長の尻尾にかけて!」という船員達の遣う言葉の示す通り、本当に艦長は鼠なのかもしれないという、ほのぼのとした後日談です。


お薦め度:★★★★☆
完結というより、一つの航海が終わり、続編『ロンドン・ヴィジョナリーズ』へ続きます。今月下旬に第2巻が出ますが、完結したのかどうかは分かりません。シリーズ物になりそうですね。
ナポレオン戦争が終わるまで続けて欲しいです。
あとがき漫画『はみだしコランタン制作部』からは、大木さんと山田さんが楽しんで作品を創っている姿が感じられてこれもまた良かった。

第1巻

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