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『コランタン号の航海 水底の子供』第1巻/山田睦月・大木えりか

2009-11-15 | 少女漫画
 
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英国には名だたる船が幾艘(いくそう)もあるが
H.M.S.コランタンほど有名な船はない
「南太平洋で忽然と姿を消し二日でバルト海に現れた」
「戦闘中に人魚にとり囲まれフランス艦が逃げ出した」
その名は南太平洋から北極海まで七つの海に轟いている


山田睦月さん、久々に買いました。『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』(1992)以来です。
実は『ロンドン・ヴィジョナリーズ』の第1巻を先日買ったんですが、これ(全2巻)の続編だと判明し、読むのを我慢しています。

良かった。「酔え」ます。『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』の頃の温かい、優しい空気は健在で、しっかりした原作が付いて読み応えのある海洋ロマンになっています。
舞台はフランス革命の20年後、ナポレオン戦争のさなかにルパート・ユースタス・マードック海尉が着任した、英国海軍のいわく付きの艦「コランタン号」。

1811年のポーツマス、正士官2人の小さな艦コランタン号に着任した24歳のマードックは二等海尉を勤めることになるが、着任早々この艦の「不思議」を目の当たりにする。艦に居着いている不思議な猿ホレイシア、姿が見えないのにガンルームに席がある「ミスタ・ジョーンズ」、奇妙な"かぶり物"をしている軍医。
しかし合理主義者のマードックは「不思議なことなんてありえない それは大抵の場合 僕たちの解釈の問題なんですから ……信じたがっている心が見せるものなんだ」と受け入れようとしない。
紡績の町マンチェスターで生まれ育ったマードックは、切れた糸を繋ぐだけで自動的に動くボビンが子供の頃は魔法のように思えた、しかし機械はあくまで機械なんだと知った時は幻滅したと一等海尉のアラン・ブラックウェルに思い出を語る。ブラックウェル海尉は自分は炭鉱の町シェフィールドの出身だと答える。彼等は二人とも、産業革命の申し子。

錨を揚げ、帆走を開始するコランタン号。封緘命令書を開封したメリーウェザー艦長から聞かされた任務と目的地は、王党派フランス人の救出。「フィニステール地方海岸部に潜伏するカンペール伯アンリの身柄を可及的速やかに保護しロンドン海軍省まで送り届けることを命じる」。カンペールはブレストの南ブルターニュの沿岸、そして革命から20年が経過した今まで消息が絶えていた、王党派伯爵の嫡男。

「ミスタ・ジョーンズ」があと一歩で士官に昇進できる時に命を落とした「残っちまった」者だと知るマードック、自分の存在を認めるようにとガンルームの食器やグラスを揺らすジョーンズ。マードックが何ヶ月で転属願いを出すか賭けを始める士官と海兵隊。
タウシグ主計長からコランタン号が「出る」船だと言われる所以を聞かされるマードック、幽霊船の女の正体は「魔女」で、コランタンは彼女に嫌われた船だと話すドクター・プランケット。5世紀頃のブルターニュ、王が溺愛する美貌の王女ダユー。聖人コランタンと出会って改宗した王と、妖精の母を持ちそれを受け入れず新たな都イスを建造したダユー。悪魔によって水門の鍵が奪われ、海に沈んだイスとダユー。ドクターは伝説の根底には信仰の問題があり、イスの王国が滅ぼされたのはキリスト教文明の立場から見れば正義だと言う。
魔女を追い払った聖人の名を抱く艦コランタン、魔女の眠る海には行きたがらない水兵たち。嵐の夜には水底に沈んだ鐘の音が今も聞こえてくる。

甲板で水兵達が船乗り歌を唄う当たり前の光景、マードックが自分の故郷で流行っている、イングランドの暴君を茶化す替え歌を披露すると、自分もランカシャーの出だと言うハンズワースが加わり大合唱になる。遠く故郷を離れて航海を続けている、どの船もどの船乗りも変わらないと思いをはせるマードックは、口のきけないアートスから呪(まじな)い紐を託される。



艦長とブラックウェル海尉が意見を交え、カンペール上陸作戦を任されることになるマードック。その航中、フランスのスループ艦(フリゲートより小型の軍艦)が2隻同時にブレストの封鎖を突破する処にコランタン号は居合わせる。しかしコランタンは海軍本部直令艦であり、任務を負って航海中のため海峡封鎖艦隊に協力できず素通りする。

フランス語で「地の果て」を意味するフィニステールで停船するコランタン。22年前の革命の夜に姿を消した人物、カンペール伯アンリ。何故今になって現れたのか、その事情は海軍省も掴んではいないらしい。そして今まで任務を果たして帰って来た艦はない。
上陸を前に、この任務にまつわる不思議を信じていないマードックは、ブラックウェルから「君は君が眼にしたものを信じればいい」と言葉をかけられる。

岬のグラドロン教会から聞こえてくるオルガンの音は聖歌ではなくブルターニュの古謡(こよう)。人影を追うマードックとウィタード中尉の前に現れた男は自分がカンペール伯と名乗るが実はフランス公安局の大佐…?



お薦め度:★★★★☆
久々に読んだ山田睦月さんの新作はやはり期待を裏切らなかった。
しっかりした原作と、山田さんの描く優しい世界が融合して、不思議で楽しい世界に酔えます。
特に船乗り歌の大合唱のシーン、胸が熱くなりました。
原作付きも、山田睦月さんオリジナルの作品も、結構新書館からコミックスが出ています。第2巻を買ったら他も買ってみよう。

デビュー作の『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』は現在文庫で再版されています。この本すごく好きです。



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4 コメント

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Unknown (Jing*3)
2009-11-15 16:52:52
あ、これなんか面白そう。
Wrlzさんの嗅覚はすごいなぁ。
山田睦月さん (とのすけ)
2009-11-15 16:56:45
山田睦月さんの作品好きです。
表紙でファンタジーかと思っていたんですが歴史物なんですね。面白そうです。
私が読んだのは、オリジナルのファンタジーと最近の原作付の作品なのですが、
オリジナルでも原作付でも雰囲気が変わらなくて素敵でした。
第2巻も「買い」 (Wrlz)
2009-11-15 20:05:18
>Jing*3様

第2巻はこれから取り寄せるのでまだラストは知らないんですが、面白いですよ! 期待できます。
時代的にもロマンがあって楽しい時期ですよね。最後に出てきた大佐はナポレオンの犬かもしれない、というのが第1巻までです。
好焼地帯 (Wrlz)
2009-11-15 20:17:57
>とのすけ様

山田睦月さん、やっぱりいいです。
『ミッドナイト・ロンリー・モンスター』が出た頃、私は『Wings』を買ってたんですが、その後しばらく新作を読んでませんでした。オリジナル・原作付き併せて新書館からこれまでに14冊のコミックスが出ているようです。
1993年当時購入した、山田睦月さんが所属していた同人サークル「好焼地帯」発行の同人誌とぺーバーが手元にあります。16年前ですね(笑) でも山田睦月さんは最初から上手い人でした。上手くなっても昔の温かい雰囲気が失われていなくて嬉しいです。

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