アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『プリンシパル』第2巻/いくえみ綾

2011-08-15 | 少女漫画
 
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ


お父さんにもお母さんにも友だちにも
和央にも弦なんかにも
わからない
鼓動が どんどん 早くなる
………
すみれにはちょっぴりわかるかもしれない

(糸真)


 第2巻は、第1巻とはやや違う切り口から、糸真の「孤独」に対する恐怖を軸に展開する。一方で、ここが札幌であるという設定には、大人気選手がやってきたという時事も絡めて、時期まで特定して現実味が持たされる。逃げてきた糸真は、今いるのが日本の都道府県の中で最北に位置する北海道なので、これ以上北には逃げられない。彼女のそばにいて彼女を無条件で愛してくれる存在は、今のところ実の父だけである。糸真は、自分を無視し始めた晴歌たちから逃げずに向き合おうとする。その反面、無視をエスカレートさせる行為と知りながら、和央とも仲よしでありつづけるという際どい選択をする。
むろん糸真の行動は「ここが北海道だから」という意味での物ではないが、現実世界で作者が暮らす「札幌」という舞台装置は最大限に活用されている。

 糸真の「ハブ」に対する恐れは、晴歌と「互いに互いの秘密を握られる」という予想外の形で反転する。糸真に秘密を知られた晴歌は、糸真にも洗いざらい話せと詰め寄る。糸真は、晴歌の今までとは違う、無神経なほど正直な言葉や本音を隠さない態度に、めまいがするほどの嬉しさを感じ、「和央と弦」の関係が晴歌の目には違って見えていたのだと知る。
 そして糸真の父が再婚に向けて動き出したことにより、糸真は今までとは違う「孤独」に怯え始める。出会えないものと思っていた「エゾシカ」とは、食材という意外な形でとうとう出会う。

 ここは地球の札幌という実在の町であるという「現実」を感じさせて、物語は再び「非現実」の比重がかすかに増す。糸真は和央が「王子さま」なのか「ふつーの男の子」なのか彼の見え方が二転三転し、弦は和央との「歴史」は本当に存在したのかと疑問を抱く。和央と「きょうだい」になることには、そこに糸真自身の意思があまり介在しないからか、まだ実感はわかない。それでも糸真は、自分たちが弦とにって「やな奴」になったかもしれないという晴歌からの指摘には、言葉を呑んで心の中でうなずく。
和央の母が「愛情の 見せ方なんて人それぞれですし」と答えたように、子供には理解できず理屈で説明できない現象や心情には、たとえ舞台が現実世界であっても、物語に広義の「ファンタジー」の一面を加える力があると思う。


お薦め度:★★★★☆

 やや変な文章になっているのは、あることを意識しながらこれを書いたからです。「面白い」「良い」「好き」。この三つの単語を一切使わずに、この漫画は面白くて、良くて、私はこの漫画が好きだという意味のブログを書くことは可能だろうか?という変な挑戦。
「面白い」という単語を使わずに、この漫画が面白かったと書くのは、そうとう難しいと気付いた。
 極めて主観的な感想を付け加えると、別マという雑誌の価値を大きく高めた、いくえみ綾や河原和音や椎名軽穂という存在が共に北海道出身であることに、「巡り合わせ」のような物を私は勝手に感じてしまう。それは九割がた偶然のはずだけど、この大家と呼ばれる漫画家が共に北海道から輩出されたことには、運命のような何かが働いたのかもしれないと思う時もある。


にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へ
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ
漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ 少女マンガへ
少女マンガ

【検索用】プリンシパル いくえみ綾 2
『マンガ』 ジャンルのランキング
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『河原和音 長編読みきり傑作... | トップ | 『手紙』/谷川史子 »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
北海道は・・・ (さっとん)
2011-08-16 00:38:27
北海道は漫画家大国ですよ。←変な言い方ですが^^;

お名前が挙がっている方以外で言うと
荒川弘さん、小沢真理さん、佐々木倫子さん、小畑友紀さん辺りはでしょうか?
特に少女漫画の方はおおらかで優しいお話を書く方が多い気がします。
言われてみれば (Wrlz)
2011-08-16 10:02:37
>さっとん様

確かに多いですね!
人口が多いので確率として名匠が多く輩出される、というだけでは片付けられない何かもあると思います。ゆうきまさみ先生も北海道の方だし。

緑川ゆきや草凪みずほが熊本出身であったり、中原アヤやが大阪出身であることからも、そういう物を感じる時があります。私に「地方の魅力」を漫画を通して最初に感じさせてくれたのは、たぶん原作者の西ゆうじ先生です。作品の舞台に関係なく、西ゆうじ先生が綴る物語は全て大好きですが。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

少女漫画」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。