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『シドニアの騎士』第2巻/弐瓶勉

2010-04-23 | 青年漫画
 
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「おたく」の定義の散漫さや拡大された解釈をメディアには正して欲しい。少なくとも、コスプレ喫茶で飲み食いして「萌え」と言う者がオタクとイコールではない。まず「萌え」はその対象を二次元に限定して遣う言葉だ。歴史や鉄道に造詣の深い者はオタクではなく学者や愛好家である。

オタクが何なのか定義しろと言われたら、私には不可能だし、他者の目に自分がオタクに映っているという確固たる自信もない。
その代わりに私は『シドニアの騎士』に描かれている「萌え」を正統な物として評価する。ネットなどの媒体に「萌え」という単語が氾濫する以前から、私達はその言葉の新しい意味を無意識に知っていた。私が経験してきた範囲では松本零士が初めて漫画の中で「無重力」を見せつけた。手塚治虫が『火の鳥』や『ザ・クレーター』等で先んじて用いた手法よりも、ハーロックがアルカディア号を百八十度回転させ写植ごとページの上下を逆さにした(サンデー・コミックス第2巻)ことに読者は動揺したはずだ。
『機動戦士ガンダム』は初めて無重力を体感として描くと同時に、重力を否定したアニメだ。続編の『機動戦士Zガンダム』の放映が始まるまでの空白期間を、ファーストガンダムの劇場版と『超時空要塞マクロス』が埋めた。『超時空世紀オーガス』はキスシーンから始まり、ヒロインが妊娠するという形で赤裸々に「性」を描いた。私達の世代が「オタク」と自称する場合にはこれらの作品群が原点になる。


奇居子(ガウナ)に向かった討伐隊が全滅し、艦内への侵入を防ぐためにシドニアは斜めに加速する。重力警報が発令され、多くの一般民が投げ出されて負傷する。多数の衛人(モリト)が守備隊として配備され、回収班が四騎掌位(しきしょうい)を組む。被弾した岐神(くなと)のカビザシを借りた谷風長道(たにかぜながて)が奇居子を撃破して、船規違反を犯して星白閑(ほしじろしずか)を捜す。
飲み水がなく、尿をろ過して十一日間漂流していた谷風機を囲む、二百五十六騎掌位の逆噴射の光。艦長は仮面を外し、「二百五十七も懲罰房があると思うか?」と優しく微笑む。

長道は英雄として帰艦し、正規の衛人操縦士に任命される。自分の鼻を折ったのは焔(えん)だと、同じ顔をした仄(ほのか)十一姉妹から祝福されながら聞かされる長道。今までの事は忘れようと言ってくれる岐神。この場で掌位を組もうと星白が言い、四人は固く腕を組み合う。
兄の仇をとってくれた礼を言うために侵入した緑川纈(ゆはた)にお飲み物をお持ちしましょうと訊かれ、屋台の天ぷら蕎麦を食べていた長道は「つゆ!」と答える。纈がメイド服を着ていることは、逆説的に「萌え」は二次元の中にしか存在しないと示している。

艦長を追いかけた長道が、エレベータの中で聞かされる、保護者になってくれた理由。

「お前が不憫でならなかったからだ」。

イザナが長道を海中浮遊槽に誘い、割り込んだ纈は長道と二人きりで乗ろうとイザナを出し抜こうとして、弾みで星白と長道が二人きりにされてしまう。
シドニアの四分の一を占める海水層を周回しながら手を握り合う長道と星白。奇居子出現の報が入り、討伐隊衛人三十六機が出撃する。岐神班は尾の切断を命じられ奇居子に爆破杭を打設する。しかし岐神が通信先を長道の704号機に限定して爆破の合図を出してしまう。

病室で目を覚ます長道。奇居子を撃退したと伝える報道でインタビューに答える岐神。星白閑が戦死したという字幕。

谷風長道の正規操縦士の資格を一時凍結したいという申し出を聞く艦長。星白の死から立ち直れず、何も食べようとしない長道を連れ出すイザナ。船内の居住区では不死の船員会を糾弾し、針路上の惑星を破壊しようとする指導者を野蛮だと罵倒する奇人が街行く人々に何かを訴えかける光景。イザナが飲み物を買いに行った隙に拉致され、「おい戦犯!! てめえなんて操縦士やめちまえ!!」と暴行される長道。
艦長の命令でシドニアの針路前方にある惑星が破壊されると、衛人と見紛うような人型奇居子が潜んでいた。704号機に搭乗しろと命じられ、また継衛に乗れると歓喜する長道。



お薦め度:★★★★★
『シドニアの騎士』の価値を伝えることは困難です。理屈ではなく体験に基づいた「感覚」に由来する処が大きいし、世代によるずれも生じる。
ただ一つ明確なのは、漫画とアニメの最大の強みは「二次元の媒体である」ということです。
「萌え」という言葉はうやむやの内に浸透し、いつの間にか時代遅れになった言い回しではなく、1970年代、もしくはそれ以前から連綿と受け継がれてきたある価値観を言い換えるための今日の語彙の一つで、漫画とアニメの蜜月は今もかろうじて続いている。しかし漫画のアニメ化で大衆娯楽の発展に寄与したのは松本零士、藤子不二雄と高橋留美子、1980年代のいくつかのジャンプ作品に留まり、一方ではそもそも原作としての漫画を持たない優れたジャパニメーションと、映像化を拒絶されるほどにあくまでも「漫画」として絶対的に愛される作品があります。
安易に「萌え」という言葉を用いる前に、オタクだと自称するなら、自分が何を愛し、何を読んで(観て)きた結果と蓄積として今の自分があるのか、顧みて欲しいと思います。

ところで「KCまつり」への応募方法ってどの賞に対してもチャンスがあるこの書き方でいいんだよね?




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2 コメント

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Unknown (存在しないIDです)
2010-04-23 19:36:13
ツンデレ・ヤンデレは二次元だから萌えと言える。
というか私は二次元でも萌えません(笑

『オタクはすでに死んでいる』という岡田トシオの本があるんですけど、いろいろうなづけました。
エヴァ、ハリウッド映画、そんなものの影響が私は強いです。
萌え (Wrlz)
2010-04-23 21:21:44
>存在しないIDです 様

岡田斗司夫の本を読んだことはないんですが、amazonにあるレビューを斜め読みしました。
私は弐瓶勉と同世代なので(3歳違い)、『シドニアの騎士』に描かれている物を正統な「萌え」として支持します。

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