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『シドニアの騎士』第八巻/弐瓶勉

2012-07-28 | 青年漫画

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きっとクワガタにしてみれば
私たちは対話不能な
恐ろしい捕食者でしかないのでしょうね…

(白羽衣つむぎから谷風長道へ)


 私たち「ガンダム世代」にとって、「戦争ごっこ」は少年時代の遊びの一番人気だった。時代や世代が違っても、やはり子供は「戦争ごっこ」に魅力を感じるはずだ。
そして、弐瓶勉がこの『シドニアの騎士』で描いている世界は、僕らの少年時代を、ある面では詳細に、ある面では叙情的に、そして見事に再現しているように、私は感じる。

 例えば『ドラえもん』は、知らない者はいないほどの名著で、私も大好きなまんがだ。けれど、そこに描かれている、「空き地があって、千年杉がまだ切られておらず、ガキ大将がいて…」という遊びの舞台は、私が少年時代を過ごした1980年代には、既に「自分が体験していない過去の光景」で、憧れの対象だった。少なくとも都内では、空き地などには滅多にお目にかかれず、代わりに、その奥は迷路のように入り組んでいる商店街と、近年に建てられた鉄筋コンクリートの建造物の谷間が、善かれ悪しかれ、僕らの遊び場だった。

 いわゆる「豊かな自然の中」という遊び場は、当時の僕らにとっては、たまにしか味わえない「贅沢」か(それこそ「リゾート地に別荘があるざます」みたいなセレブのw)、フィクションの中の「異世界」だったのだ。

 ずっと地下で暮らしていた谷風長道(ながて)は、旧い配管に囲まれた最下層から抜け出せても、やはり「シドニア」という、人工物でできた世界しか知らない。仲間はできても、海や大地を知らない。だから彼らは「入植可能な恒星系」に焦(こ)がれ、針路に立ちふさがる物と戦う。

 誰もがその命令に絶対服従、あるいは面従腹背(めんじゅうふくはい)せざるを得ないような、絶対的なリーダーも、私は昭和末期には見かけなかった。時として長道やイザナが艦長の命令に平気で背くように、「誰も背くことができない命令」を発せられるほどの影響力を持つガキ大将は、いなかった。
 私は少年時代に、「ジャイアン(剛田武)」が身近にいなかった。存在したのは、形だけの「ヒエラルキー」だったと思う。

 シドニアには、「小林艦長-緑川指令補-衛人操縦士-(シドニアの住人)」という、表面的なヒエラルキーは存在する。しかし、「部下は上官の命令に従う」という、正規の軍隊であれば当然の綱紀や秩序は、徹底されていない。言わば、長道らの戦いは、私たちの少年時代の「戦争ごっこ」の延長なのだ。

 「平和な時代に生まれたからだ」と言われてしまえば、私は返す言葉を持たない。それでも、やはり私(たち)は、子供の頃は「戦争ごっこ」が大好きだったのだ。そして当時の僕は、隙あらば自分だけが「アムロ・レイ」になってやろうと、皆を出し抜きたい衝動に常に駆られていたような気がする。


お薦め度:★★★★★


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