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『ゴルゴ13』第153巻/さいとう・たかを

2009-07-09 | 青年漫画
 
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ゴルゴが「日本人」なのかどうか、最近はあまり触れられなくなりましたが、ゴルゴのルーツに関して、ファンの間では様々な考証が今もなされています。その答を知っているのはもちろん作者だけです。

「ラストグレートゲーム」、表題作です。
2003年2月、米国のイラク攻撃が始まる1か月前。フランスを中心に反戦デモが繰り広げられ、孤立しつつあった米国。CIAはベルリンのハウゼン銀行で「フレンチコネクション」を証明する書類を入手する。ここで言う「フレンチコネクション」とは麻薬組織のことではなく、当時のフランス大統領ビクトルからドイツのホフマン首相に裏金が渡り、ビクトル大統領の息子が1990年代にアンゴラ政府に便宜を図り、武器不正輸出に手を貸し、アンゴラに油田を持つ「エルク社」の権益を保護する見返りにアンゴラが武器を手に入れた構図のこと(実際のアンゴラ内戦時のフランス大統領はミッテラン、ドイツ首相はシュレーダー)。
時のアメリカ合衆国大統領は第150巻『宴の終焉』時と同じマクシミリアン・ジュニア。核開発に成功したドゴール時代に米国による「核による安全保障」を否定して以来、旧植民地だったアフリカ諸国に傀儡政権を次々に作ってきたフランス。帝国主義時代に「グレートゲーム」と呼ばれた列強の陣取り合戦。ホワイトハウスはこれは最後のグレートゲームになると焦る。
仏大統領の息子が収賄容疑で捕まり、石油メジャー「エルク」を潰しにかかる米国。しかしマスコミ対策でフランスに先を越されたCIAは、エルク社の元重役のザイダーンを捕らえて突き出すしかないと動き出す(ザイダーンは架空の人物。ジョナス・ザビンビがモデルかもしれない)。

負傷してフィリピン近海を漂流していたゴルゴは小島に暮らし漁をしていた老人に助けられる。その老人の話すフランス語にアルジェリア訛りがあると気付き、ゴルゴは彼がフランス政府が3年以上追いかけているザイダーンだと見抜く。ゴルゴを自分と同じく"闇"に生きる人間だと知ったザイダーンは、エヴィアン協定以後、FLN(アルジェリア民族解放戦線)は自分達「アルキ」に刃を向けてきたと体の無数の傷痕を見せる。
「誰にも知られたくない隠遁生活の中に俺を受け入れ……俺を助けてくれた……それはなぜなんだ……?」と問うゴルゴ。話しながらそれを考えていたと言うザイダーン。「おそらくわしは……お前さんなら、わしのこんな人生をわかってくれるような気がしたんだ、と思うよ……なんとなく……な……」。

陰でフランス政府とエルクの仲介をやっていたザイダーンを始末する決断をする仏大統領。台湾海軍にフリゲート艦を輸出した時にザイダーンから金を受け取っていたと追求されるフランス外相。ザイダーンの元には元外相から秘密裏に、雲行きが怪しくなったと伝える電話がかかってくる。
中華民国海軍学校創立五十周年祝賀晩會の席上で一堂に会した、フリゲート艦贈賄に関わった台湾海軍将校5人が、CIAに拘束される前にGIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)の狙撃で同時に射殺される。
GIGNに先を越されたCIA長官を問い詰める米副大統領。アメリカに楯突いてまで次々と中東の石油利権を獲得するフランス。その背景に、フランスがイラクに建設した原子炉を、米国が航空写真をイスラエルに渡して空爆させた事件(1981年のバビロン作戦)。

敵が来ると察知したゴルゴは負傷した体で、遮蔽物のない小島にトラクターで砂の防護壁を作り始める。GIGNが来るだろうと言うザイダーン。
砂壁を完成させ、敵を迎え撃つゴルゴ。GIGNの使用する特殊九ミリ弾は貫通力に欠け砂壁に阻止される。奥に行くほど狭くなる砂壁の通路で退路を断たれ(日本の城の通路と同じ原理)、船上の隊長を残し全滅する隊員。唯一FR-F1を使用しているGIGN隊長は砂壁を撃ち抜くが、陽炎で銃身が膨張し敗れる。
しかしGIGNが撤退するとCIA、米の駆逐艦が島に迫る。
ザイダーンはゴルゴを見てどんな時も逃げずに戦わなければいけない事を学ばされたと、CIAに投降する。島から去る駆逐艦を無言で見送るゴルゴ。

CIAに捕らえられながら黙秘を続け一切を喋らないザイダーン。米国はイラクを攻める大義を持てないまま、9・11以来高まっている「テロ国家を許すまじ」という気運だけを利用して、2003年3月19日にイラク戦争に突入。そしてイラク戦争は米国のあっけない勝利に終わる。

フランス政府に引導を渡せたはずの人物がゴルゴと出会い、米国に渡った上で口を閉ざした理由は誰にも分からなかった。「国際間のパワーゲーム」というよりも「人間ドラマ」という面で魅力的な表題作でした。


「MASK」。
CIA女性捜査官のマリアンヌは「Gが狙撃に失敗した」との情報を得る。疑惑を抱いてメール主の東欧ジャーナリスト、ウィルキンソンを訪れると狙撃されたのは「影武者」だったと言われる。
整形はおろか、声紋分析にも耐え過去経験の学習まで施された完璧な影武者を用意する演出集団「MASK」。時の権力者からベストセラー作家まであらゆる影武者を送り込み社会を翻弄する「MASK」。彼等が次に用意したのは、新国家樹立国際援助資金のキーマンとなるロメド弁務官の影武者。
Gへの依頼同意書にサインするCIA長官。ゴルゴはインターネットカフェで依頼を受け、意図的に情報をリークする。
拉致される本物のロメド弁務官。影武者は左利きのロメドと同様、娘から投げられたラグビーボールを左手で受け止める。
壇上に上がる影武者。内戦による犠牲者の人権のために国連の名のもとこの資金を有効にと発言した瞬間、狙撃される影武者。そこにもう一人のロメド弁務官が現れ、今撃たれたのは自分の影武者だと説明する。そのもう一人のロメドも躊躇なく狙撃するゴルゴ。
二人目の影武者に全くミスはなかったが、ゴルゴは二人目のロメドが現れた時のウィルキンソンの表情からそれも影武者だと見抜いた。奇跡は起きるものではなく、彼にとっては起こすものなのだと驚嘆するCIA。
錯綜する情報の中から本物を見抜く、冷酷なまでのゴルゴの観察眼にやられました。


「舞い降りた運命(さだめ)」。
コカイン運びに利用されているパイロットのエリックを雇うゴルゴ。2年間在籍した軍の降下訓練で2回もメインパラシュートが開かなかったエリックは断固拒否するが、ゴルゴは彼に銃を向け、「……パラシュートを付けないで、俺に、この機から突き落とされるか、自分でパラシュートを付け、飛ぶか……どちらかを選べ!……」と迫る。
ゴルゴが必要としていたのは、脱出時に使用するB-17の操縦が今もできる数少ないパイロットとしてのエリックの腕。
「ご苦労だったな……」と機を降りるゴルゴ。初めてパラシュート降下に成功し、自信だけでなく野心も取り戻したエリックは積み荷は自分が頂くとゴルゴに銃を向ける。



「ラストグレートゲーム」(2003/12)
「MASK」(2003/8)
「舞い降りた運命(さだめ)」(2003/10)
の3編を採録。

お薦め度:★★★★☆
40年間衰えを知らないシリーズにただ圧倒。
この時期、さいとう・たかを先生は既に腱鞘炎の症状があったと思われますが(今は手術しても治せないほどの重症)、それでも今も尚、休むことなく続いている連載に「プロ」の姿を感じます。

余談ですが、さいとう・たかを先生を尊敬している知り合いの漫画家の先生に教えてもらいまして、『ビッグコミック』誌上のさいとう・たかをの絵はあくまで「漫画用の絵」で、本来の「絵」を描くと恐ろしいほどに上手いそうです。
この切り抜きのゴルゴは、下描きからペン入れまで全てをさいとう・たかを先生が描いた物です。



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