〈川俳会〉ブログ

俳句を愛する人、この指とまれ。
四季の変遷を俳句で楽しんでいます。「吟行」もしていますよ。

拾い読み備忘録(58)

2016年02月28日 18時44分01秒 | エッセイ
 蒲団着て寝たる姿や東山       嵐雪
嵐雪のこの句は、やわらかい線を描いて横たわる冬の東山をえがいた句として有名であるが、「蒲団を着る」という表現が、いかにも京都的で、この句の内容にマッチする。江戸ならば、蒲団はかけるもので、着るものではない。西日本方面では、一般に「着る」をよく使い、山陽・四国方面では「帽子をかぶる」ことでも「帽子を着る」という。
一体英語などでは、この「着る」に当たる単語はput on かwearで、身につけるものならば、これだけで間に合うが、日本語、特に東京語では、やれ帽子はかぶる、めがねはかける、手袋ははめる、靴ははくと、使い方がはなはだわずらわしい。これは、こういうものの付け方がちがうためではなくて、からだのどの部分に付けるかのちがいを表わすものである。からだを地理的に分けて、上の方は清浄だが、足の方は清浄でないとする日本人の古い考え方と密接な関係がある。
(「フトンを着る」より)
「ことばの歳時記」金田一春彦著 新潮文庫 昭和48年
                        富翁
コメント
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